土器土器体育祭

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手を掴んで立ち上がった後、静かになったと思えば目を瞑ったままの加賀屋先輩を不審に見ていると、鼻息が荒いことに気付いた。

………はっ!

慌てて握っていた手を離した。
そのままズボンで拭いている俺とは反対に、加賀屋先輩が握っていた手を顔に持っていくのにドン引きした。

聞きたくない。
全く聞きたくないけど、どんな意図で行なっている行動なのか知っておいた方が良い気がした。
「……何してんすか」
「スゥ…スゥ…残り香を…吸っておかないと…。」
やっぱ聞かなきゃ良かった。
鞄があれば除菌スプレーあったのに…っ!
どうするのか?先輩ごと除菌。

「それで?計画って?」
「スゥ…ん?あぁ、それなんだけど、相手も秘密裏に動いてるからまだはっきりとは」
手から意識にそらすことに成功した俺はそのまま続けることにした。

「明日次第って言ってたしな…。風紀にも既に言った?」
「まだだヨ。風紀に知らせるにはちょっと気掛かりな点があってネ〜。だから少数精鋭隊にしたんだけど」
風紀、気掛かり、か。
借り物競走の後のことを思い出す。
確信は無い。
が、この人なら何か知ってるかもしれない。

「…夏目副委員長とか、何かあったり…?」
壁にもたれかかっていた加賀屋先輩が俺を見て目を瞬かせた。
次第ににんまりと笑みを作りだした。
「やっぱり、うーたんはたまんないネ」

ゾワッとした。

腕をさすっていると、加賀屋先輩が「そのことは誰にも言っちゃ駄目だヨ!それから、そろそろアイスが教室に着く頃だからお帰り〜」と言ってきた。
はいはい犯罪千里眼。

帰りにトイレ寄るか。
そう、本来の目的地のことを考えながら廊下に戻ろうとした俺の背に声がかかる。

「詳しくは明日また、ネ。それから、…大丈夫?」
すぐに思い至らず、ちょっと考えてから振り返った。

「もうそれどころじゃないんで」
お前が巻き込んだんだからな。

不貞腐れた態度を見せた俺の何が良かったのか、嬉しそうに表情を破綻させて指ハートを作ってきた加賀屋先輩。
それに反応せず今度こそ振り返ることなく廊下を進んだ。


どうでも良くなったのは別に加賀屋先輩のせいじゃないからな。
明日への不安とこれからの戦に向けての闘志だから。



「にしても、…なんだ?カメラ?盗聴器??」
「フッフフ〜ン、な、い、しょ」
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