雑草
に 出会い
変な3人との初コンタクトは、ここ屋上。
その日は夏休みが明けての始業式を抜け出し、屋上のフェンスの上で初めて買った煙草を吸っていた時だった。フェンスに登ったのは、その日が9月なのにまだまだ太陽が張り切ってて、今なら空に近づける、なんて気がしたんだと思う。多分。1本目は何度も咽せて、2本目は"初心者の煙草の吸い方"のサイトを読んでから吸った。まるで1本目が馬鹿みたいにスムーズに吸えて嬉しかった。
でも暫くぼけっとしていた静かな場所は唐突に煩くなった。ヤンキー3人が来たから。急に屋上の赤い扉が騒がしくなったと思ったら勢いよく開き、赤とピンクと、同じクラスの金髪菊池君が出てきた。
音に釣られてフェンスの上からずっと扉を見ていた俺。赤と目が合った。驚いたような大声。それに釣られて金とピンクとも目が合った。何?そう思った呑気な俺に驚く程の速さで近寄り、ギャンギャン喚いてフェンスから引き摺り下ろされた。というより落とされた。
あまりの痛さに腰イったかと思った。その後、手に持ってた煙草を見て、えぇ……、なんてドン引きされた。
なんなんなのほんと。
おっさんのような溜息と共に、ピンクさんが隣に倒れ込んできた。
「あ〜〜今日セイシの花ちゃんに見つかってタバコぼっしゅうされちったんだった〜〜〜……。ね、一本ちょーだい?」
花ちゃんは生徒指導の田村花菜(タムラカナ)先生。ヒゲモジャのおじさん。見た目の厳つさと裏腹に可愛い名前だから"花ちゃん"なんて呼ばれてる。
ピンクさんはあざとく小首を傾げ、両手を胸元まで揃えて持ってきた。
成る程。
これがモテテク。
「良いですよ」
そう言って煙草の箱を開けて、取れるよう振って1本差し出す。
「わあい」
にこにこと顔を寄せて、飛び出た1本を齧って抜いた。そのままジッポをズボンのポケットから取り出して火を着ける。ジッポは没収を逃れたのか。
相変わらず赤さんは蛾を追いかけてる。菊池君は気付いてるみたいだけど、言うのが面倒くさいみたい。ぬるい目でその光景を眺めている。
あの時ドン引きしたのは3人とも吸わないからか、なんてあの時は思ったけど、違うかった。といっても基本的に吸うのはピンクさんだけ。赤さんは付き合いで吸えるけど、あまり吸おうとは思わなくて、菊池君は煙草が嫌いみたい。
フレンドリーな3人は俺が何も言わずとも話してくれた。
興味ないから知ってもしょうがない情報なんだけどね。
うま〜、なんて言って吸ってるピンクさん。ピンクさんが吸ったら煙までピンクになりそう。なんて考えながら眺める。
「なぁに?」
何も無いから何を言おう。困った。
「おいしいですか」適当すぎる質問。
「?うん、おいしー」
うんうん頭を上下に揺らして頷く。そのまま手元の煙草を見ながら言葉を続けた。
「おれぇ、銘柄とか気にしないからなんでもおいしいよ、基本的に」でもマルボロだけはマズくてヤ、と言って顔をしかめて舌をべっと出した。
内容は子供じゃないのに、やけに子供っぽい仕草が似合う。それが可笑しくてちょっと笑う。
「俺は全部マズい、っす」
語尾を強めにそれだけ言って菊池君は赤さんの所に歩いて行った。ピンクさんと顔を見合わせる。
「なぁにあれ?」
「さぁ……?」
「スネチャマ?」
「……さぁ?」…スネチャマ?拗ねチャマ?なにそれ?首を傾げながら手元の煙草を口元に持っていった。
あれ、フィルターだけ。
下を見ると、微かに灯る火が地面に落ちていた。
変な3人との初コンタクトは、ここ屋上。
その日は夏休みが明けての始業式を抜け出し、屋上のフェンスの上で初めて買った煙草を吸っていた時だった。フェンスに登ったのは、その日が9月なのにまだまだ太陽が張り切ってて、今なら空に近づける、なんて気がしたんだと思う。多分。1本目は何度も咽せて、2本目は"初心者の煙草の吸い方"のサイトを読んでから吸った。まるで1本目が馬鹿みたいにスムーズに吸えて嬉しかった。
でも暫くぼけっとしていた静かな場所は唐突に煩くなった。ヤンキー3人が来たから。急に屋上の赤い扉が騒がしくなったと思ったら勢いよく開き、赤とピンクと、同じクラスの金髪菊池君が出てきた。
音に釣られてフェンスの上からずっと扉を見ていた俺。赤と目が合った。驚いたような大声。それに釣られて金とピンクとも目が合った。何?そう思った呑気な俺に驚く程の速さで近寄り、ギャンギャン喚いてフェンスから引き摺り下ろされた。というより落とされた。
あまりの痛さに腰イったかと思った。その後、手に持ってた煙草を見て、えぇ……、なんてドン引きされた。
なんなんなのほんと。
おっさんのような溜息と共に、ピンクさんが隣に倒れ込んできた。
「あ〜〜今日セイシの花ちゃんに見つかってタバコぼっしゅうされちったんだった〜〜〜……。ね、一本ちょーだい?」
花ちゃんは生徒指導の田村花菜(タムラカナ)先生。ヒゲモジャのおじさん。見た目の厳つさと裏腹に可愛い名前だから"花ちゃん"なんて呼ばれてる。
ピンクさんはあざとく小首を傾げ、両手を胸元まで揃えて持ってきた。
成る程。
これがモテテク。
「良いですよ」
そう言って煙草の箱を開けて、取れるよう振って1本差し出す。
「わあい」
にこにこと顔を寄せて、飛び出た1本を齧って抜いた。そのままジッポをズボンのポケットから取り出して火を着ける。ジッポは没収を逃れたのか。
相変わらず赤さんは蛾を追いかけてる。菊池君は気付いてるみたいだけど、言うのが面倒くさいみたい。ぬるい目でその光景を眺めている。
あの時ドン引きしたのは3人とも吸わないからか、なんてあの時は思ったけど、違うかった。といっても基本的に吸うのはピンクさんだけ。赤さんは付き合いで吸えるけど、あまり吸おうとは思わなくて、菊池君は煙草が嫌いみたい。
フレンドリーな3人は俺が何も言わずとも話してくれた。
興味ないから知ってもしょうがない情報なんだけどね。
うま〜、なんて言って吸ってるピンクさん。ピンクさんが吸ったら煙までピンクになりそう。なんて考えながら眺める。
「なぁに?」
何も無いから何を言おう。困った。
「おいしいですか」適当すぎる質問。
「?うん、おいしー」
うんうん頭を上下に揺らして頷く。そのまま手元の煙草を見ながら言葉を続けた。
「おれぇ、銘柄とか気にしないからなんでもおいしいよ、基本的に」でもマルボロだけはマズくてヤ、と言って顔をしかめて舌をべっと出した。
内容は子供じゃないのに、やけに子供っぽい仕草が似合う。それが可笑しくてちょっと笑う。
「俺は全部マズい、っす」
語尾を強めにそれだけ言って菊池君は赤さんの所に歩いて行った。ピンクさんと顔を見合わせる。
「なぁにあれ?」
「さぁ……?」
「スネチャマ?」
「……さぁ?」…スネチャマ?拗ねチャマ?なにそれ?首を傾げながら手元の煙草を口元に持っていった。
あれ、フィルターだけ。
下を見ると、微かに灯る火が地面に落ちていた。