雑草

じゅう 赤さんと



屋上に行くと、赤さんだけがいた。

今日は赤さんの日、らしい。

これは初めてのパターン。
赤さんは結構、苦手だ。
声大きくてこわいから。
EXILE系だし。
パリピ系ヤンキーだし。
菊池君とすぐ肩パン対決してるし。

しかも、赤さんはいつも皆が座る定位置とは違う、校庭がすぐ見下ろせる見渡しのいい所に座っていたから余計に戸惑った。
素知らぬ素振りで定位置に行こうかなと扉の前で決めかけた時、赤さんがこっちこっちと手招きしてきた。
満面の笑みで。

なんだか凄く嫌だ。

重い足取りで赤さんの前に立つと「まぁまぁ遠慮すんな座れって」と言われた。
赤さん家の設定なのここ?
何故かお礼を言って座ってしまった俺に対し、すぐに携帯の画面を見せてきた。
画面はロック画面で、際どい水着を着た、胸の大きい恐らくグラビアアイドルの写真が。
写真を見た俺の反応を見てセクハラでもしたかったのか、と胡乱げな目を向けると、思っていた反応では無かったようだ。
不思議そうに自分で画面を見て慌てだした。

「あれ?!ちげーちげー!!お前、俺のユイちゃん勝手に見んなって!」
照れながら言わないで欲しい。

すぐに指を横にスライドして見えたのは茶色い毛玉。
いや、これは………ハムスター?
「俺の愛するハム子7号!!クソ可愛いだろ」
どうやら飼ってるハムスターを見てほしかったらしい。
「可愛いよな分かってくれるかうんうん」
肩を組んできて1人でに頷いている勢いに押され、カクカクと俺の首も上下に動いた。

アイツら話流してくるから、と口をへの字にする赤さん。
どうやら俺が大人しく聞いてることが嬉しいらしく、"〜【厳選】愛のハムメモリー〜"と名前のつけてあるフォルダ開くと、延々に同じような写真を何十枚も見せ続けた。
確かに可愛いと思った。
8割ほど同じ画像にしか見えなかったけど。

その後も動画や、昨日のハム子7号の様子を熱弁するのを聞いてその時間は終わった。
でも、なんというか。
以前まで抱いていたこわさ、は減った気がした。

「また聞いてくれな!」と満面の笑みで言われてゾッとしたけど。
あれだけ話してまだあるんだ。
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