エイプリルフール2022


「おはよ、惶」
「…はよ」
ところで…。と申し訳なさそうに重く唇を動かす柴。
「朝飯のパン…真っ黒にしちゃったんだけどな…もうあれでラス1だったみたいで…」
それぐらい…と思ったが、柴が隠していたお皿を机にスライドさせ、お披露目させてきたのを目にして狼谷が固まる。
真っ黒。それはもう満遍なく綺麗な黒、がお皿の上にあった。狼谷が、普段ではあり得ない驚きの表情で2度見をした。
返事をしようと口を半開きのそのまま、数秒固まる狼谷を見て、思わずといったように柴が「ブハッ」と吹き出して笑った。
暫く口と腹に手を当てて心底可笑そうにして、笑い終わった涙目のまま話す柴。
「実はな、それ、黒い生食パンってやつらしくてな」
黒い生食パン?と、そのまま狼谷が復唱した。
「そう。この間姉貴から送られたのに入ってて、美味しいからって。」
言い終わり、はぁ。と満足げな溜息を吐いた。
狼谷がいまいち釈然としない顔で相槌を打つ。
それを見て、また笑いが込み上げてくる柴は、それを誤魔化そうと、ンン"っと咳払いをした。
「いや。さ。…今日エイプリルフールなわけじゃないですか。だからというかなんというか、少し驚かせれたらって…思ったんだけど………っはははっ!!」

どうやら咳払いをした意味は無くなったようだ。

その後も度々思い出し笑いをされ、柴が登校するまでその日の朝は不貞腐れた表情で過ごす事になった狼谷であった。




「……美味い…」
「ふふっ……うん、良かった」


柴win!
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