短編
聞いてくれ。
いや聞いてください。
お前も知っての通り、俺はそれほど成績も良くなければくっそイケメンでもない、ただの普通の大学生のゲイだ。
そんな俺には付き合って3ヶ月になる、イケメンな恋人がいる。
…いやありがとうありがとう。
可能であればもう少し心を込めて言って欲しかったけども。てかなんで相手知ってんの怖い。
実は俺、1年近くあいつに片思いしてたんだけど、向こうも好きだったらしく晴れて付き合えた〜…って脱線したな。
ええと、そう!
聞いて欲しかったのは!あいつと未だにキスとかセック
…スイマセン小声で話します…。
3ヶ月も経つのにキスもセックスもしてないとか有り得なくね……?!
小学生じゃねーんだぞ…?!
…え?まぁ、うん。多分俺もそれかなって思ってるけどさ……。
やっぱ潔癖症の人と付き合うとそういうのしねーのかなぁ…。
…うん。確かに、そりゃあ多少他の人より許されてる感はある。
今日は講義前の時間、可愛い女子に「ペン忘れたから貸して?」って話かけられてて「潔癖症だから、悪いけど他の人に借りて」って素気無く一蹴。
その後、一緒にトイレ行った時にトイレの手洗い場の紙タオルが切れてて、ハンカチとか俺持ってないから、
……いや分かってるってアイツにもそれ言われた…。
で、手をぷらぷらさせて自然乾燥させようとしてたら、あいつがごく普通にハンカチ取り出して「使いなよ、みっともないから」ってさ〜〜!教室で女子にはペン貸すのも断ったのにさ〜!!キュンってなったわ。
おい。おいこら、何笑ってんだ……ってゆーちゅーぶ見てんじゃねーー!!聞けーーー!!!
…エッッ俺から誘えって?!
いや………いやいやいや、そんな、断られたら責任取れんのかよ!泣いちゃうぞ!
アッ無理、想像すると泣けてきた。
「泣くってなに。なんで。」
「わっわっっえっ!?!?」
うるさい奴の後ろから眼鏡のよく似合う眉目秀麗がご来航。
噂をすれば彼氏様。
馬鹿が1人で妄想に突っ走って半泣きになっているのを、彼氏様が顎を強引に引き上げて目を合わせた。
「なんで泣いてんの。」
目線だけ冷たくこちらに向けてくるのを手でひらひらと払う。こっち見んな。私じゃねえし。
「…ほら。言うなら今じゃないの?」
違うからっ!とか意味わかんない事もごもご言ってる馬鹿に助け舟を出す。
私、ほんと優しくね?
すぐ私が言ったことを理解したらしく、視線を無駄にうろうろさせた後、口を開いた。
「だって…おまえ、付き合ってから3ヶ月も経ったのに、キスとか………色々……できないじゃん…。潔癖症なのは分かってるけどさ…!だから、」
「だから?」
「だ、だから…相談…してた…」
「ふーん……。それで泣いてたわけ?」
「ちょっとちがうけど…概ね……はい……」
彼氏様はじーっと馬鹿の顔を見て
覆う様に上から被さって、キスを、した。
リップ音を軽くたて、顔が離れた。
馬鹿の顔は真っ赤で口を何度も閉口させている。
満足した?行くよ。と言ってイスから立ち上がらせてそのまま引っ張って2人は私の前から消えた。
公開面前キスのサービスありがとうございましたはいはい。
人も殆ど居らず、誰もこっちに注目してないから良かったものの、随分と見せつけてくれる。
まぁ居ないの分かっててやったんだろうけど。
はぁーーあ馬鹿らし。
こんな優しい私に、そのままの私を無条件に好きになってくれる恋人でもよこせっての。
ーーー→
この後スタバのドリンクチケットをらいんで貰う彼女であった。
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