秘密の先輩

試験



「やべぇ〜〜〜〜〜〜しぬ〜〜〜〜〜」

来て早々地面に溶けている先輩を見て面倒臭そうだなと思った。


「へい後輩」
「なんだよ」
Siriみたいに呼ぶな。

「英語、赤点、回避、方法、カチッ」
「勉強しろ」
「そんな答え求めてねぇよ!真面目か!」

ベタなツッコミ方をされた。
もっとこう、うまくカンニング出来る方法とか範囲とか教えろよ〜どらえも〜ん。と、のび太でも言わないだろう、どうしようもない事を宣う先輩に呆れる。

まず学年の違う俺に言ってどうするんだ。


「提出物は出してんのか?」

目を見開いて息を呑まれた。驚愕の表情。
お前…。

「やっっっっべ………完全に忘れてた」
「馬鹿じゃねぇの」

いつもなら食い掛かってくる言い方をついしてしまったが、そんなことも気にならないくらいに焦っているようだ。珍しく持ってきている鞄の中を慌てて探っている。手元から見える鞄の中は予想通り汚かった。


「あった〜!俺ってば神」
こんな神がいてたまるか。


探りあてたものは試験の範囲や提出物が書かれたプリントだった。それも、随分と雑に放り込まれたのか、ぐちゃぐちゃになって見るも無惨な有様だ。

先輩は皺を必死にのばしながら目的の表記を読み上げ、ブツブツとこれからする事を呟く。

「えーと、ノートはあいつの丸写しして……プリントはコピーして………めんどくさ」
どうしようもねぇな。


「てかお前も俺とサボってんじゃん!なに俺はお前とは違う的な顔してんだよおい」

俺の冷ややかな視線に気が付いたようで、八つ当たりをしてきた。

「一緒にすんな」
「冷てぇ!エアコン要らず!!フリーザ!!」
うるせぇな。
「俺は塾行ってるし提出物も終わってる。お前とは違う」
「うわ〜〜ん、この後輩可愛くね〜〜!ってなんなん塾行ってんの!??!マージで?!?皆に避けられてない?ボク大丈夫?」
「個人塾だ馬鹿。殴るぞ」
「ッハ〜〜〜あーね。なるほどね〜〜。謎の余裕はそこからかーー」

俺の握り込んだ拳を見向きもせず、1人で納得したように頷いている。


そして、名案、というように片手を皿に握った手をポンッと乗せた。


「俺も通おうかな!」


もう無理だろ。

というか、学校の提出物もまともにできないやつが塾に通ったところで課題やらないだろ。とは言わなかった。どうせ明日には忘れてる。


(こいつが同学年なら助かったのにな〜!)
(先輩が同学年ならより面倒だったんだろうな)
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