土器土器体育祭
2
下敷きで顔を隠す俺を心配そうに覗き込んでくる遠坂に余裕が無く、廊下側から反対の手でこっち見んなと手を振る。
俺の様子に異変を感じて騒ぎの方に顔を向ける遠坂に少しホッとする。
それにしても、緑のインナーカラーってお義兄さんが言ってたから気付かなかった。電話してから日数が経っていたし、何よりお義兄さんと彼が会ったであろう日から逆算するともっと時間が空いていただろう。そりゃ色落ちもする。
横目で俺も見ると、天海鮎は人に囲われて頭の端がチラチラと見えるくらいだった。それに安心して聞き耳を立てていると、聞き覚えのある声と空間によく通る声の応答が聞こえた。
「…天海君ね。そう…。見覚えないし1年生だよね?それで、どうして2年の教室に?」
「はい、今年から入学したんですけど、実はいとこが2年でこの学校にいるって叔父に聞いたので探していたんです!」
冷や冷やと心拍数がとまらない。
いや、止まったらあかんやろ。
木雨がカットイン。
脳内会議は滅茶苦茶だ。
もう一度チラ、と見ると人の間から黄緑色の小さい奴が目に映った。小森だ。
やっぱりお前か。頼むから何も勘付かないでくれ。お前ならやれば出来る!!
「へぇ…。ちなみに名前は?」
「苗字は俺と違うと思うのでフルネームは分からないんですけど、ゆずきって名前です!このクラスにいませんか?」
お、お前ならやれば出来る!!!!ってか流石に覚えてるか俺の名前?!?
この騒ぎの中俺に注目が来るのは嫌だ。半泣きでジャルタを見つめる。
「……ゆずき、ね」
「はい!あ、それと、ソシャゲのキャラクターが好きみたいで、もしかしたら女の子のグッズ持ってるかもしれないです!」
顔を隠していた下敷きを光の速さで引き出しに直した。
なんで知ってんだよ!!?姉ちゃんか?!?姉ちゃんだな?!?クソッッッ!!
普段使いしてるから流石にバレたか…?!
青ざめてきた自分の顔を自覚する。
顔を隠すのを教科書に持ち替え、目元だけ出して視線を伺う。逆さだったらしく、遠坂が無言で正しい向きに直してくれた。ありがとう。と、騒ぎの中心から教室を見回すクラスメイトのうちの1人、小森と目が合った。片眉をあげたその表情からは何を言うつもりか予想がつかず、すぐに逸らされた為アイコンタクトを送る時間もなかった。
アッアッ。俺の中のちいかわが泣く。
おわた。
「……………どうだろう?」
……。
ん?
「いたかも?」
おい。それもそれでちょっと悔しい。
思案したらしい小森。
「…うーん、ちょっと全員の下の名前まで覚えてないから、思い出した時に連絡できるように連絡先、交換できるかな?」
こいつ慣れてんな。
恐らく顔の系統的にドストライクだったんだろう。流れるように自然とラインを交換したらしい2人。ホイホイ知らない人と連絡先を交換なんかしたら駄目だぞ、いとこ君。
交換したのを確認したらしい小森がその後すぐに、「もうすぐ予鈴が鳴るから教室も遠いだろうしそろそろ帰った方がいいよ」と教室から送り出し、集まった野次馬に手を叩いて解散を促した。
他のクラスメイト達がバラけ、そのタイミングで上野が教室に帰ってきた。
「やっと帰ってこれた〜」
どうしたの?あれって。そう言って席に着く上野。
それに答えようとした時、先程まで落ち着いていた態度を崩した小森が上機嫌な雰囲気を隠さず席に帰ってきた。
お前な……。
「小森くんなんか機嫌いいね?」
「ただいまっ上野君。うん、ちょっとね!」
「おかえり〜小森君」
「……上機嫌っすね」
上野だけに返事を返した小森。そのまま俺の前に座るかと思えば、俺の前で足を止めて口を開いた。
「で?」
「……で?ってなんだよ」
「そんな態度でいいわけ?
柚木」
「 」
「言うことがあるんじゃない?」
「 」
えっっっ。
って、知ってたのかよ!!!!
手に持っていた教科書を落とした。
「おま、お前、えっ」
まさか、とよぎった考えを口にする。
「まさか、知ってたうえで……?」
「当然だろう。それに、僕は嘘はついてない」
確かに、知らないとは言ってないし、あやふやにしただけだ。
はぁ〜〜〜〜助かった〜〜〜!!!
首の皮一枚繋がった俺はドッと疲れて背もたれにもたれかかって大きく息を吐いた。
「ありがとうございます神様仏様小森様……!!!」
口を歪めてフンっと鼻で笑い、ドヤ顔を見せる小森。助けて貰っといてこう言うのはなんだが、所作が悪役じみてるよな、お前。
「それで。献上物くらい用意できるよね」
「勿論っす。最近ですと、チワワ達に呑み込まれて連れ去られる私服の上野の写真(新入生歓迎会参照)で何卒お願いいたします」
スッと携帯を出して画像欄から該当の写真を見せる。
満足そうに重々しく頷くと、良いだろう。ラインで送って。と小森。
「柴?!!」
即レスで上野を売った俺に、うわーん!とポカポカ音が付いてそうな両手殴りをしてくる上野をいなしてすぐにラインで画像を送った。
あと普通に痛いぞ。お前の筋力だと。
ってか。
俺の名前、クラスメイト全然覚えてねぇじゃねぇか。若干凹んだ。
「ふふっ小森君も素直じゃないねぇ」
「…別にそういうんじゃない」
「それにしても、ガチで探してるとは…。」
「そういえば何があったの?」
下敷きで顔を隠す俺を心配そうに覗き込んでくる遠坂に余裕が無く、廊下側から反対の手でこっち見んなと手を振る。
俺の様子に異変を感じて騒ぎの方に顔を向ける遠坂に少しホッとする。
それにしても、緑のインナーカラーってお義兄さんが言ってたから気付かなかった。電話してから日数が経っていたし、何よりお義兄さんと彼が会ったであろう日から逆算するともっと時間が空いていただろう。そりゃ色落ちもする。
横目で俺も見ると、天海鮎は人に囲われて頭の端がチラチラと見えるくらいだった。それに安心して聞き耳を立てていると、聞き覚えのある声と空間によく通る声の応答が聞こえた。
「…天海君ね。そう…。見覚えないし1年生だよね?それで、どうして2年の教室に?」
「はい、今年から入学したんですけど、実はいとこが2年でこの学校にいるって叔父に聞いたので探していたんです!」
冷や冷やと心拍数がとまらない。
いや、止まったらあかんやろ。
木雨がカットイン。
脳内会議は滅茶苦茶だ。
もう一度チラ、と見ると人の間から黄緑色の小さい奴が目に映った。小森だ。
やっぱりお前か。頼むから何も勘付かないでくれ。お前ならやれば出来る!!
「へぇ…。ちなみに名前は?」
「苗字は俺と違うと思うのでフルネームは分からないんですけど、ゆずきって名前です!このクラスにいませんか?」
お、お前ならやれば出来る!!!!ってか流石に覚えてるか俺の名前?!?
この騒ぎの中俺に注目が来るのは嫌だ。半泣きでジャルタを見つめる。
「……ゆずき、ね」
「はい!あ、それと、ソシャゲのキャラクターが好きみたいで、もしかしたら女の子のグッズ持ってるかもしれないです!」
顔を隠していた下敷きを光の速さで引き出しに直した。
なんで知ってんだよ!!?姉ちゃんか?!?姉ちゃんだな?!?クソッッッ!!
普段使いしてるから流石にバレたか…?!
青ざめてきた自分の顔を自覚する。
顔を隠すのを教科書に持ち替え、目元だけ出して視線を伺う。逆さだったらしく、遠坂が無言で正しい向きに直してくれた。ありがとう。と、騒ぎの中心から教室を見回すクラスメイトのうちの1人、小森と目が合った。片眉をあげたその表情からは何を言うつもりか予想がつかず、すぐに逸らされた為アイコンタクトを送る時間もなかった。
アッアッ。俺の中のちいかわが泣く。
おわた。
「……………どうだろう?」
……。
ん?
「いたかも?」
おい。それもそれでちょっと悔しい。
思案したらしい小森。
「…うーん、ちょっと全員の下の名前まで覚えてないから、思い出した時に連絡できるように連絡先、交換できるかな?」
こいつ慣れてんな。
恐らく顔の系統的にドストライクだったんだろう。流れるように自然とラインを交換したらしい2人。ホイホイ知らない人と連絡先を交換なんかしたら駄目だぞ、いとこ君。
交換したのを確認したらしい小森がその後すぐに、「もうすぐ予鈴が鳴るから教室も遠いだろうしそろそろ帰った方がいいよ」と教室から送り出し、集まった野次馬に手を叩いて解散を促した。
他のクラスメイト達がバラけ、そのタイミングで上野が教室に帰ってきた。
「やっと帰ってこれた〜」
どうしたの?あれって。そう言って席に着く上野。
それに答えようとした時、先程まで落ち着いていた態度を崩した小森が上機嫌な雰囲気を隠さず席に帰ってきた。
お前な……。
「小森くんなんか機嫌いいね?」
「ただいまっ上野君。うん、ちょっとね!」
「おかえり〜小森君」
「……上機嫌っすね」
上野だけに返事を返した小森。そのまま俺の前に座るかと思えば、俺の前で足を止めて口を開いた。
「で?」
「……で?ってなんだよ」
「そんな態度でいいわけ?
柚木」
「 」
「言うことがあるんじゃない?」
「 」
えっっっ。
って、知ってたのかよ!!!!
手に持っていた教科書を落とした。
「おま、お前、えっ」
まさか、とよぎった考えを口にする。
「まさか、知ってたうえで……?」
「当然だろう。それに、僕は嘘はついてない」
確かに、知らないとは言ってないし、あやふやにしただけだ。
はぁ〜〜〜〜助かった〜〜〜!!!
首の皮一枚繋がった俺はドッと疲れて背もたれにもたれかかって大きく息を吐いた。
「ありがとうございます神様仏様小森様……!!!」
口を歪めてフンっと鼻で笑い、ドヤ顔を見せる小森。助けて貰っといてこう言うのはなんだが、所作が悪役じみてるよな、お前。
「それで。献上物くらい用意できるよね」
「勿論っす。最近ですと、チワワ達に呑み込まれて連れ去られる私服の上野の写真(新入生歓迎会参照)で何卒お願いいたします」
スッと携帯を出して画像欄から該当の写真を見せる。
満足そうに重々しく頷くと、良いだろう。ラインで送って。と小森。
「柴?!!」
即レスで上野を売った俺に、うわーん!とポカポカ音が付いてそうな両手殴りをしてくる上野をいなしてすぐにラインで画像を送った。
あと普通に痛いぞ。お前の筋力だと。
ってか。
俺の名前、クラスメイト全然覚えてねぇじゃねぇか。若干凹んだ。
「ふふっ小森君も素直じゃないねぇ」
「…別にそういうんじゃない」
「それにしても、ガチで探してるとは…。」
「そういえば何があったの?」