土器土器体育祭
競技決め
風紀室から数日。
最近やっと戻ってきた日常である、食堂で4人で食べている時のこと。
遠坂が俺に向かって「そういえば柴君、生徒会での活動が無くなったって前に聞いたけど、どういうことなの?」と。
あぁ、そういや詳しい話はしてなかったな。
小森なら知ってるだろ、と話を振ると食べていた手を止めて当然のように頷いた。
「忌々しいあの転入生に何か失礼な事を言われたらしく、それを機に会長様と、副会長様、会計様が休んでいた生徒会活動を再開したんだ」また仕事をしている御姿を見られることは嬉しいけど、アレに言われてなのは複雑。と小森は不満げだ。
俺はある日、生徒会室に手伝いに行った時に会長が机に座っていて、驚く俺に「貴様の出番はここまでだ。補佐ながらそこそこよくやった。俺はもっと出来る男だからな」とオコトバヲチョウダイしてお役目御免となった為、そこまで詳しいことは知らなかった。
それとなく、「そういうこと」と小森の後に付け加えた。
「でも、これで柴も体育祭いっしょに楽しめそうだね!」
嬉しそうに言ってくる上野に、「ウン、ソウダネ」と固く声を返した。
だってサボりたい。
今日のHRでどの競技を出るか決めることになるはずだ。なるべく楽ができる競技が良い。玉入れとか棒引きとか。
上野の待ち焦がれたHR。
ついに競技決めが始まった。
競技は以下。
玉入れ
二人三脚
棒引き
借り物競走
障害物競走
スウェーデンリレー
クラブ対抗リレー
委員会対抗リレー
学年別リレー
紅白対決リレー
騎馬戦
この中から1人上限3つまでを決めることになる。俺や俺と同類と思わしき地味ーズは恐らく"玉入れ"と"棒引き"を狙うであろう。定員をオーバーすると仁義なきじゃんけんが始まる。同類達と共に俺はじゃんけんのアップを始めた。
注目が集まるリレー系だけは絶対に嫌だ…!!!
そうして挑んだ2競技のじゃんけん。
玉入れには勝利したが、棒引きには負けた。
しょうがなくリレー以外でマシであろう借り物競走に入ることになった。
上野はスウェーデンリレーに指名されてにべもなく肯定していた。流石。
遠坂は面白そうに教室の雰囲気を眺めていた。小森も特に希望は無いらしく、それぞれの定員が埋まっていくのを眺めていて、然程やる気が無いように見えた。
と、いうか、クラス全体的にやる気がない。
それもそうか。
体育祭は全日2日行われる。1日目は保護者の見学ありで、競技は全部の内の半分程で、応援合戦が入る。この時点で照れが入った男子高校生は1日目のやる気は減る。2日目は全部の競技と、今年はチアボーイズの応援時間が入ることになった。
それと、体育祭の勝負は紅白で別れて決まる。毎年のことだが、「紅組は生徒会」「白組は風紀委員会」。
そして今年の割り振りは、
紅組(生徒会組)
3年 Aクラス、Bクラス、Cクラス
2年 Sクラス、Zクラス、Cクラス
1年 Aクラス、Bクラス
白組(風紀委員会組)
3年 Sクラス、Zクラス
2年 Aクラス、Bクラス
1年 Sクラス、Zクラス、Cクラス
となっていた。
と、いうことで、今年の俺のクラスは風紀委員会組である白組だ。この時点で、当然ながら生徒会の親衛隊のやる気は下がっていた。小森は競技が決まると、他の親衛隊と撮影機材の話をしに行った。
体育会系の男子が盛り上がっている反面、大半がやる気が無い教室。
それにピンときていなかったらしい人物が1人。
競技決めを始めた教室内を見て回る担任がいつの間にか近くに来ていて、席を空けている俺の隣の椅子に、よいしょっ、と腰を下ろした。
「ワンちゃんサボってるか?それにしてもイマイチ盛り上がってねーのな」
サボってないです。
体育祭ではサボる予定ですが。
内心宣言する。
「ワンちゃん言わないでください。…しょうがないんじゃないですかね。別に体育祭は何か報酬が出るわけじゃないですし」
そうなんだ。と遠坂が俺に顔を向ける。
そう。新入生歓迎会とは違い、ここもやる気の出ないポイントだろうな。
「まぁ〜そうか…」
クラスを見渡して暫く考えるように、握り込んだ手を頬に当てた美月先生。
そうだ。と呟く。
なんだ?
「俺のクラスが点数貢献して白組が勝ったら、2年Aクラスを焼肉連れてって…やろ……う…か…」
語尾が小さくなったのには理由があった。
教室中の視線が発言者である担任に向けられていたからである。
「…あ?」
静かになった教室で委員長がスッと教壇にあがる。
「待て待て待て待て」
音を鳴らして立ち上がる美月先生。ふ、遅いぜ。男子高校生のハイエナっぷり舐めたな。
「聞いたな?皆」
一同を見回す委員長。
「「「「おう!!!」」」」
「待って、おい、見谷クン?」
珍しく焦りを見せる担任。クラスの雰囲気に熱気が漂う。
これはもう止められんねぇわ。これから委員長が発言するであろう言葉を予想して笑う。
意気揚々と口を開く委員長は拳を握った。
「俺らが点数を稼いで白組が勝ったら、美月先生が焼肉奢ってくれるぞ!!!」
「「「「「おっしゃーーー!!!!」」」」」
「絶対勝つぞ!!!!」
「「「「「おう!!!!!!」」」」」
「うっそだろ……。」
その場で呆然と呟く先生の体に手をポンっと弾ませた。
「諦めてくださーい」
盛り上がりそうで良かったすね。
他人事である俺はひたすらに愉快だった。
「…安い焼肉屋知らない?」
「安くてもクラス全員となると安くないでしょ」
「ふふ、思い切りましたね〜美月先生」
風紀室から数日。
最近やっと戻ってきた日常である、食堂で4人で食べている時のこと。
遠坂が俺に向かって「そういえば柴君、生徒会での活動が無くなったって前に聞いたけど、どういうことなの?」と。
あぁ、そういや詳しい話はしてなかったな。
小森なら知ってるだろ、と話を振ると食べていた手を止めて当然のように頷いた。
「忌々しいあの転入生に何か失礼な事を言われたらしく、それを機に会長様と、副会長様、会計様が休んでいた生徒会活動を再開したんだ」また仕事をしている御姿を見られることは嬉しいけど、アレに言われてなのは複雑。と小森は不満げだ。
俺はある日、生徒会室に手伝いに行った時に会長が机に座っていて、驚く俺に「貴様の出番はここまでだ。補佐ながらそこそこよくやった。俺はもっと出来る男だからな」とオコトバヲチョウダイしてお役目御免となった為、そこまで詳しいことは知らなかった。
それとなく、「そういうこと」と小森の後に付け加えた。
「でも、これで柴も体育祭いっしょに楽しめそうだね!」
嬉しそうに言ってくる上野に、「ウン、ソウダネ」と固く声を返した。
だってサボりたい。
今日のHRでどの競技を出るか決めることになるはずだ。なるべく楽ができる競技が良い。玉入れとか棒引きとか。
上野の待ち焦がれたHR。
ついに競技決めが始まった。
競技は以下。
玉入れ
二人三脚
棒引き
借り物競走
障害物競走
スウェーデンリレー
クラブ対抗リレー
委員会対抗リレー
学年別リレー
紅白対決リレー
騎馬戦
この中から1人上限3つまでを決めることになる。俺や俺と同類と思わしき地味ーズは恐らく"玉入れ"と"棒引き"を狙うであろう。定員をオーバーすると仁義なきじゃんけんが始まる。同類達と共に俺はじゃんけんのアップを始めた。
注目が集まるリレー系だけは絶対に嫌だ…!!!
そうして挑んだ2競技のじゃんけん。
玉入れには勝利したが、棒引きには負けた。
しょうがなくリレー以外でマシであろう借り物競走に入ることになった。
上野はスウェーデンリレーに指名されてにべもなく肯定していた。流石。
遠坂は面白そうに教室の雰囲気を眺めていた。小森も特に希望は無いらしく、それぞれの定員が埋まっていくのを眺めていて、然程やる気が無いように見えた。
と、いうか、クラス全体的にやる気がない。
それもそうか。
体育祭は全日2日行われる。1日目は保護者の見学ありで、競技は全部の内の半分程で、応援合戦が入る。この時点で照れが入った男子高校生は1日目のやる気は減る。2日目は全部の競技と、今年はチアボーイズの応援時間が入ることになった。
それと、体育祭の勝負は紅白で別れて決まる。毎年のことだが、「紅組は生徒会」「白組は風紀委員会」。
そして今年の割り振りは、
紅組(生徒会組)
3年 Aクラス、Bクラス、Cクラス
2年 Sクラス、Zクラス、Cクラス
1年 Aクラス、Bクラス
白組(風紀委員会組)
3年 Sクラス、Zクラス
2年 Aクラス、Bクラス
1年 Sクラス、Zクラス、Cクラス
となっていた。
と、いうことで、今年の俺のクラスは風紀委員会組である白組だ。この時点で、当然ながら生徒会の親衛隊のやる気は下がっていた。小森は競技が決まると、他の親衛隊と撮影機材の話をしに行った。
体育会系の男子が盛り上がっている反面、大半がやる気が無い教室。
それにピンときていなかったらしい人物が1人。
競技決めを始めた教室内を見て回る担任がいつの間にか近くに来ていて、席を空けている俺の隣の椅子に、よいしょっ、と腰を下ろした。
「ワンちゃんサボってるか?それにしてもイマイチ盛り上がってねーのな」
サボってないです。
体育祭ではサボる予定ですが。
内心宣言する。
「ワンちゃん言わないでください。…しょうがないんじゃないですかね。別に体育祭は何か報酬が出るわけじゃないですし」
そうなんだ。と遠坂が俺に顔を向ける。
そう。新入生歓迎会とは違い、ここもやる気の出ないポイントだろうな。
「まぁ〜そうか…」
クラスを見渡して暫く考えるように、握り込んだ手を頬に当てた美月先生。
そうだ。と呟く。
なんだ?
「俺のクラスが点数貢献して白組が勝ったら、2年Aクラスを焼肉連れてって…やろ……う…か…」
語尾が小さくなったのには理由があった。
教室中の視線が発言者である担任に向けられていたからである。
「…あ?」
静かになった教室で委員長がスッと教壇にあがる。
「待て待て待て待て」
音を鳴らして立ち上がる美月先生。ふ、遅いぜ。男子高校生のハイエナっぷり舐めたな。
「聞いたな?皆」
一同を見回す委員長。
「「「「おう!!!」」」」
「待って、おい、見谷クン?」
珍しく焦りを見せる担任。クラスの雰囲気に熱気が漂う。
これはもう止められんねぇわ。これから委員長が発言するであろう言葉を予想して笑う。
意気揚々と口を開く委員長は拳を握った。
「俺らが点数を稼いで白組が勝ったら、美月先生が焼肉奢ってくれるぞ!!!」
「「「「「おっしゃーーー!!!!」」」」」
「絶対勝つぞ!!!!」
「「「「「おう!!!!!!」」」」」
「うっそだろ……。」
その場で呆然と呟く先生の体に手をポンっと弾ませた。
「諦めてくださーい」
盛り上がりそうで良かったすね。
他人事である俺はひたすらに愉快だった。
「…安い焼肉屋知らない?」
「安くてもクラス全員となると安くないでしょ」
「ふふ、思い切りましたね〜美月先生」