中間テストですよ

ちなみに…。



「ちなみにネガですが、」
「っっっ!!?!!」
声無き悲鳴が出た。

心臓飛び出るかと思った!?!!?
いつの間にか真横に立っていた塩島委員長を見上げ、バクバクする胸を空いている片手で押さえた。



先生が風紀室を出て行った後、仲良さそうに話す(というより遊ばれてる)宗と夏目副委員長の所に行くのも気が引けて、俺は端っこに椅子を持ってきてゲームをしていた。やはり端は安心する。ずっと端っこに居たい。

そして、後で塩島委員長に改めてお礼だな〜とふと思っていた時にアレだ。タイミング良すぎだろ。


あれ…………でもさっきなんつった?

ネガ?

……嘘だろ?

「………先生と話してたの、聞こえるわけないですよね…?」
「ふふふ」
嘘だろ?!?!!?

地獄耳どころ話じゃ無い。こわすぎて目を見開いて塩島委員長を見つつ、足で椅子をコロコロ動かして離れようとしていたのを止められた。長い足を進行方向にガッと差し込んで。こわい。訪問販売の人じゃんそれ。

「冗談ですよ」
塩島委員長なら冗談に聞こえねぇんだよ。
反応に困って取り敢えず笑っておいた。引き攣ってた?気のせい気のせい。

「じゃあ…その、どうして分かったんですか?」
「簡単ですよ。読唇術です。ご存知ですか?」
頷く。
理由は簡単でも方法は簡単じゃないぞ。

「何度もお二人がその単語を口にしていたのと……何より、美月先生と柴君が話していたので察した。と言った方が良いでしょうかね」
あ〜ね。理解。

「……ネガについて聞いてもいいんですか?」
「ええ、勿論。

生徒会副会長の、1年生の頃からの写真のネガです」
「………………。」
「学園祭、体育祭、体育の水泳の授業、修学旅行、着替え、生徒会の仕事中、あとは」
「ちょっ、あの、腹いっぱいです。もういいです充分です」
指折り数えていた委員長を止めた。
もう良いんですか?ではないが?胃もたれ起こすって。


そっかー………テニス部の彼は副会長の秘蔵写真が決め手だったのかー……。
まさか加賀屋先輩印のって話じゃねえよな〜〜……?


遠い目をしていると、塩島委員長が「それで」と言った。顔を見ると、にっこりしていた。いつも通り。

「風紀委員会に、ですよね?柴君」
「あー………」

ソウデシタ。

……ここまで尽くしくれた塩島委員長に返せることなんて、これくらいしか出来ないしな。
わかりました。そう伝えようとした直前、塩島委員長は意外な事を言った。

「しかしまあ、今回はその話、無かったことにして頂いて結構ですよ」
「え?」
無かったことって一体…?
「今回、他の方の協力が無ければこの結果にはならなかったでしょう。あなたの今までの行いによって釣れたストーカー。宗君としていた勉強会。私の力だけでは恐らく不可能でしたから」
あっさりとそう言って、出していた足を元に位置に戻した。
「塩島委員長………。」

ヤクザと思ってたことに反省の意。
最近では、こわい=塩島委員長、ってなってたが、考えを改めた方が良い。
なんて人徳者なんだ…!

「それと、そろそろ体育祭の計画も大詰めで生徒会が最高の盛り上がりらしいので可哀想かな。と思いまして」
冷水を浴びせられた様に一気に現実。

安易に感激したのにも反省した俺だった。





「今はまだ、ですから。勿論取り敢えずの形ではありますが、アドバイザーということで!」
「ことで!じゃないんですけど」
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