中間テストですよ
次は?
円状に並んだ机の正面にホワイトボードが置いてある、ある部屋。
丁度並んだ机の頂点に位置する所に2人の生徒が居た。派手な黄緑色の髪をした生徒は立っており、その目の前に椅子に座っている生徒は温和な表情を浮かべていた。
「先程連絡が来たんですが、無事友人の疑いが晴れたみたいです!鯨岡隊長も色々協力頂いたのでご報告しておこうかと。ありがとうございました!」
「…そっか、それは良かったね。結局僕は何も手助けにならなかったけれど…彼に僕からの祝いの言葉を伝えてもらえるかな?」
「勿論です!じゃあ僕はこれで失礼します!他の皆にも伝えてきますので!」
立っていた生徒は頭を下げるとすぐに部屋を飛び出して行った。扉が閉まった後、弾む様な軽快な音が廊下から遠ざかっていく。どうやら軽くランニングしていったらしい。
残された1人の生徒は、音が聞こえなくなるのを目を閉じ耳をすませて確認した。
そして、確認を終え、目を開いた彼は表情を全て削ぎ落とした様な無表情になった。チッ。と鳴らした舌打ちが、彼以外誰もいない部屋中に響く。つい先程までとは180度違う、歪んだ表情。
「あの忌々しい転校生から会長様を守るサポートをしつつ、邪魔な餓鬼3人も消せると思ったのに……!!適当な噂も流した手間も、折角考えた筋書きが台無しじゃないか…!!
チッ…使えない先生だなアイツ…ッ」
苛々が治らないようで、頭を掻きむしりながらブツブツと呪うように文句を連ねていった。
「あの方の為にアドバイスも頂いて完璧だった筈なのに…!クソックソッッ!!!風紀がこんなに干渉してくるなんて…!!
………いや、そうだ」
平坦になった声と共に、ガシガシと頭を掻きむしっていた手がぴたりととまる。
そうだ。
風紀、そう、委員長の塩島さえ邪魔が入らなければ良いのだ。どうせあの組織は塩島で成り立っている。だが彼を直接狙うのはリスクが高すぎる。ならば、新入生歓迎会の時のように彼を撹乱させ、身動きを止める。指揮を取れなくさせれば………。
下を向いてほくそ笑んだ。
そう。次の計画を練り始めなければならない。彼は親衛隊の話し合いで使っていたノートやペンをまとめながら、次にすることを考え始めた。
「あの餓鬼は…まぁ今は良いか…。親衛隊が事を起こしたって察しているだろうし、今回で生徒会に近付くのに懲りただろう。
だから……次こそあの転校生を……。
ふ、ふふふッアハハハハハハハハハ!」
はぁ………。
体育祭が楽しみだなあ」
首をグリンと傾け、ホワイトボードを薄暗い笑みを浮かべて見つめた。
画鋲の差し跡が無数に残る写真には、転校生である神庭の姿が。近寄ってそれを引っ張ると、鞄に無造作に差し込んだ。
荷物を纏め終えた彼は肩に鞄をかけ、電気を消して戸締りのチェックをしようと周りを見渡した。
「ん……?」
目に留まったのは、床に落ちていた白い物だ。あんなものあったか…?そう思いつつ近づく。落ちていたのは、どうやら丸めたティッシュのゴミのようだった。
「そういえば話し合いの最中、何人か鼻を擤んでいたか……」
花粉症が。と言い、辛そうに鼻を鳴らしていた何人かの生徒の顔を思い出して納得した。直接触れるのは嫌なようで、鞄からポケットティッシュを出すと、ゴミを覆う様に包んで手に持った。他には無いかどうかを再度部屋を見回し、確認を終えた彼が部屋を出て鍵を閉めた。そして、手に持っていたゴミをすぐ近くのゴミ箱に捨て、下駄箱に向かった。
「ウンウン。やっぱり言葉遣いアレになっても、腐っても坊ちゃんは坊ちゃんなんだねえ〜!ゴミはゴミ箱へ!」
ヒョイ、と彼が去った廊下の窓から身を乗り出したのは柴専属ストーキング、または写真部部長の加賀屋だった。
誰もこの廊下に居ないことが幸いだった……というより、分かった上で窓から入ってきたのだが。もし人が居れば間違えなく大声を上げていただろう。
何故ならここは3階なのだから。
ずっと潜んでいたのか、登ったのかは分からないが、加賀屋は耳からワイヤレスイヤホンを外し、軽い足取りで廊下を進む。
向かった先はゴミ箱だ。
分別されているゴミ箱の蓋を開け、燃えるゴミの袋を引っ張り出す。ガサゴソと素手で中身を探る。すぐに目当てが見つかったらしい。手をゴミ箱から出し、手元を見て口を緩める。掴んでいたものは、ティッシュ。
部屋を出て行った彼が捨てたものだった。
行儀悪く足でゴミ箱を閉めつつ、ティッシュを開いていく。包んでいたのは、白色の錠剤の様な見た目のものだった。それを親指と人差し指で摘んでにんまりと笑う。要は済んだとばかりにガワであるティッシュをゴミ箱に投げ捨て、"彼"とは反対方向の廊下に加賀屋はゆったりと歩き出した。
「"体育祭が楽しみ"…ねぇ」
円状に並んだ机の正面にホワイトボードが置いてある、ある部屋。
丁度並んだ机の頂点に位置する所に2人の生徒が居た。派手な黄緑色の髪をした生徒は立っており、その目の前に椅子に座っている生徒は温和な表情を浮かべていた。
「先程連絡が来たんですが、無事友人の疑いが晴れたみたいです!鯨岡隊長も色々協力頂いたのでご報告しておこうかと。ありがとうございました!」
「…そっか、それは良かったね。結局僕は何も手助けにならなかったけれど…彼に僕からの祝いの言葉を伝えてもらえるかな?」
「勿論です!じゃあ僕はこれで失礼します!他の皆にも伝えてきますので!」
立っていた生徒は頭を下げるとすぐに部屋を飛び出して行った。扉が閉まった後、弾む様な軽快な音が廊下から遠ざかっていく。どうやら軽くランニングしていったらしい。
残された1人の生徒は、音が聞こえなくなるのを目を閉じ耳をすませて確認した。
そして、確認を終え、目を開いた彼は表情を全て削ぎ落とした様な無表情になった。チッ。と鳴らした舌打ちが、彼以外誰もいない部屋中に響く。つい先程までとは180度違う、歪んだ表情。
「あの忌々しい転校生から会長様を守るサポートをしつつ、邪魔な餓鬼3人も消せると思ったのに……!!適当な噂も流した手間も、折角考えた筋書きが台無しじゃないか…!!
チッ…使えない先生だなアイツ…ッ」
苛々が治らないようで、頭を掻きむしりながらブツブツと呪うように文句を連ねていった。
「あの方の為にアドバイスも頂いて完璧だった筈なのに…!クソックソッッ!!!風紀がこんなに干渉してくるなんて…!!
………いや、そうだ」
平坦になった声と共に、ガシガシと頭を掻きむしっていた手がぴたりととまる。
そうだ。
風紀、そう、委員長の塩島さえ邪魔が入らなければ良いのだ。どうせあの組織は塩島で成り立っている。だが彼を直接狙うのはリスクが高すぎる。ならば、新入生歓迎会の時のように彼を撹乱させ、身動きを止める。指揮を取れなくさせれば………。
下を向いてほくそ笑んだ。
そう。次の計画を練り始めなければならない。彼は親衛隊の話し合いで使っていたノートやペンをまとめながら、次にすることを考え始めた。
「あの餓鬼は…まぁ今は良いか…。親衛隊が事を起こしたって察しているだろうし、今回で生徒会に近付くのに懲りただろう。
だから……次こそあの転校生を……。
ふ、ふふふッアハハハハハハハハハ!」
はぁ………。
体育祭が楽しみだなあ」
首をグリンと傾け、ホワイトボードを薄暗い笑みを浮かべて見つめた。
画鋲の差し跡が無数に残る写真には、転校生である神庭の姿が。近寄ってそれを引っ張ると、鞄に無造作に差し込んだ。
荷物を纏め終えた彼は肩に鞄をかけ、電気を消して戸締りのチェックをしようと周りを見渡した。
「ん……?」
目に留まったのは、床に落ちていた白い物だ。あんなものあったか…?そう思いつつ近づく。落ちていたのは、どうやら丸めたティッシュのゴミのようだった。
「そういえば話し合いの最中、何人か鼻を擤んでいたか……」
花粉症が。と言い、辛そうに鼻を鳴らしていた何人かの生徒の顔を思い出して納得した。直接触れるのは嫌なようで、鞄からポケットティッシュを出すと、ゴミを覆う様に包んで手に持った。他には無いかどうかを再度部屋を見回し、確認を終えた彼が部屋を出て鍵を閉めた。そして、手に持っていたゴミをすぐ近くのゴミ箱に捨て、下駄箱に向かった。
「ウンウン。やっぱり言葉遣いアレになっても、腐っても坊ちゃんは坊ちゃんなんだねえ〜!ゴミはゴミ箱へ!」
ヒョイ、と彼が去った廊下の窓から身を乗り出したのは柴専属ストーキング、または写真部部長の加賀屋だった。
誰もこの廊下に居ないことが幸いだった……というより、分かった上で窓から入ってきたのだが。もし人が居れば間違えなく大声を上げていただろう。
何故ならここは3階なのだから。
ずっと潜んでいたのか、登ったのかは分からないが、加賀屋は耳からワイヤレスイヤホンを外し、軽い足取りで廊下を進む。
向かった先はゴミ箱だ。
分別されているゴミ箱の蓋を開け、燃えるゴミの袋を引っ張り出す。ガサゴソと素手で中身を探る。すぐに目当てが見つかったらしい。手をゴミ箱から出し、手元を見て口を緩める。掴んでいたものは、ティッシュ。
部屋を出て行った彼が捨てたものだった。
行儀悪く足でゴミ箱を閉めつつ、ティッシュを開いていく。包んでいたのは、白色の錠剤の様な見た目のものだった。それを親指と人差し指で摘んでにんまりと笑う。要は済んだとばかりにガワであるティッシュをゴミ箱に投げ捨て、"彼"とは反対方向の廊下に加賀屋はゆったりと歩き出した。
「"体育祭が楽しみ"…ねぇ」