中間テストですよ

惶と



寮に戻り、ドッと疲れが出たらしくソファにヌベンッと倒れ込んだ。
晩飯は昨日の残りで、温めるだけだったけどそれすらも億劫だった。
そんな俺を見兼ねて惶が晩飯の用意を買って出てくれた。その好意に甘えることに。

次第に香る良い匂いに腹が鳴った。
HPが若干回復したので、起き上がって惶の手伝いを。無言でやって来た俺を一瞥するだけで、特に何も言われなかった。


「…今日はよく食べるな」
晩飯中。惶が唐突に話しかけてきた。もりもり食ってた手を止める。

そうか?そうかもしれない。
いつもよりひとすくい分盛った白米。入っていた茶碗の中身はもう既に3分の1程度になっている。実は結構腹にきてる。後悔。

「あー…やけ食い?多分」

とっくの前に食べ終わっていた惶は、(俺よりよっぽどさらった飯の量は多かったのにな。)水の入ったコップを片手に視線をウロ…とさせた。
「何があった……は、…言いたくねェならいい」

意外な惶の発言に面食らって瞬きを数回繰り返してしまった。
てっきり、あんま人に興味持たないタイプかと。寮までの帰る道中も聞かれなかったし。
でも、少しは心配してくれてたらしい。
あ、だから晩飯の用意もしてくれたのか。今更ながら気付く。
お惶さん優しい。


コップの残り少ない水を飲む惶に、「まあ実は……」とざっくりと今日の出来事を話した。



話を聞き終えた惶は眉を寄せて、
「ンだそれ」と一言。

そんなに眉寄せてたら先生みたいにシワになっちゃうぜ。
机に肘をついて顔を覆う惶が、だから塩島と居たのか。と呟くのに内心親指を立てておいた。その通りです。


「……とんでもねェな、権現寺」
「やばいだろ、権現寺先生」
飯も食べ終え、お箸をお茶碗にかちゃんと置いて、しみじみと言う惶に相槌を打つ。

今回のことだけじゃなく、もっと以前からも色々とやってそうだ。途中までグレーだと思ってたが、今や真っ黒。漁れば色々出て来そう。こわ。

「他の2人は大丈夫なんだよな」
「おん。初日に大収穫」
初日ながらスムーズにいってまじで良かった。

が。
「お前は?」
「あー……。」
痛いところを突かれた。
姿勢を崩して苦笑いを漏らしてしまう。

キツいことに、俺に関しては本当に何もなかった。教室に入った生徒も居なければ、試験中に机の中を見られたこともない。

こんなことなら俺もトイレ行ってりゃ良かったな〜〜!!後悔先に立たず…。

「…あと2日あるんだろ」
俺の様子を見ながら惶が励ますような言葉を掛けてくれた。
2日。
「あと2日……今日みたいに順調にいくなら…いけなくもなく…なく…ない…?」
「どっちだ」
「いけてほしい」

冗談混じりにスッと真顔になって言う俺に、惶は寄せていた眉を和らげ口角を少し上げた。
「…同意見。出来ることあったら言えよ」

「っあ、りがとう」
イケメンの優しい表情と声に、涙腺が暴走し出すのをグッと堪えた。



2人はすぐに証明できたのに。
という暗いモヤが徐々に大きくなって。
そんなもの、と、ご飯と共にかき込んで飲み込んだはずだった。けど、話すとやっぱり顔を見せ出す鬱陶しいモヤ。
早く消えてほしい。苦々しく思う。

けど、そんな俺を後押ししてくれた惶に、モヤは薄らいだ気がした。


そう。
まだ初日。
まだ2日もある。
ネガティヴに浸ってるなんてクソだ。現状何一つ進むわけがない。





まずは明日、出来ることを確実に。
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