中間テストですよ
冤罪の証明の欠片
沈黙。
「それらしき奴………いないな」
「…………いないね…」
「………………いない…ですね」
「…………………いませんねぇ…チッ」
笑顔を固めたまま舌打ちをした委員長に怯える2人をどーどーと宥める。
汗の滲んだ俺の手には気付かないでくれ給え。
4人で齧り付くようにモニターを見た結果。
それぞれの目的で教室から人が出ていった後、再び教室に向かった所が映った人物は3クラス合わせて2人。
1人は南部さんのクラスメイトで、忘れ物を慌てて取りに行った様子だった。
もう1人は戸締りをしに見回りに来た警備のおじさん。
「もう警備の方でいいのでは?」
「冤罪を別に増やすのはやめません?」
委員長惨い。
前後の扉にしか触ってないのにおじさん可哀想すぎる。
4人共それぞれの椅子に腰を下ろして溜息を吐いた。
んな上手くいかねぇよな〜〜〜……。
チカチカする目元を覆って目頭を揉む。
「恐らくカメラの死角もありますからね…。その場合風紀としても問題で、今後改善していかないと……。」
カメラの死角も含めたら、この解決案はどうやら穴だらけの様だった。
「これだと犯人見つけるのは難しそうだね…」
俺に話しかけてきた宗の言葉に全員が頷く。
犯人を見つけられるものは、手持ちの札には恐らく無い。
………じゃあ、机の中が空であったことの証明?
弾かれた様に顔をあげると、同じ様子の委員長と目が合った。
「「南部さん(君)のクラスメイト!!」」
「…えっ」
「南部さん、あの教室に戻ってきたクラスメイトの名前って分かります?!」
「…………すいません…」
そんな気はしてた〜!!
縮こまって頭を下に向ける南部さんに委員長が肩を優しく叩いた。
「いえ、大丈夫ですよ。そもそも、監視カメラが無駄だった以上、情報収集をする他にもう手段はありませんからね」
優しい!トゥンクしちゃう!さっきまでの悪役ムーブかましてたの忘れちゃう!
心の中で囃し立てる俺をよそに、委員長がノートパソコンを触り始めた。
椅子から立ち上がり、俺達も後ろからその様子を覗き見るとwebの画面が。
開いているのは……本校の掲示板……?
「こんなのあったのか…」
「おや?知りませんでしたか?」
俺の独り言に委員長が反応した。
「まあ。そうですね。最も、これを活用しているのは部活動をしている生徒か親衛隊くらいですから、知らなくても無理はありません。これ自体、入学時に渡されるプリントに数行で記載されているだけですし」
話しながらもタイピングを続ける委員長に宗が疑問を投げた。
「どうして親衛隊が使ってるんですか?」
「ここでは校内で有名な生徒の目撃情報や噂話が多く投稿されますので。まぁ言うなれば、本校生徒専用のツイッター。と言えば使われ方が分かりますかね」
何故かグールグルで何かの画像を探しつつ答える委員長。
こんなものでいいでしょう。と呟いた委員長。画面には"プロフィール"の文字と、さんりおキャラのアイコンと赤点回避!(キラキラ絵文字)の一言が。
ガチのSNSだ。
つか一言のチョイスわろた。
委員長は幾つか作られている内の1番人口が多そうな部屋を選んで、ざっと過去の投稿をスクロール。
『2年主席がゴン先と話してたらしい』
『副委員長様と会長様が中庭にいる!!』
『花浦様もいた!』
『アフロの糞退学説キター!!!』
『華道部の花浦?レアキャラじゃん』
『様を付けろデコ助』
『退学説ソースは?』
『アフロの糞と2年主席も一緒だったらしい』
『さっき職員室の前で白雪姫とすれ違った…!すげえ良い匂いした…』
あー…。
「…これは…」
「話の出回りが…」
「早いですねぇ。」
順に俺、南部さん、塩島委員長。
宗?あいつなら俺の隣で顔を青くしてるぜ……。
自身のことを好き勝手噂されているところを見てショックが大きかった様だ。
今のところ俺の話は出ていないらしく、宗と南部さんには悪いが……少しホッとした。
南部さんに関しては、あからさまに悪口…というか、アンチが湧いてるから心配になって顔をちらりと窺ったが、アフロの糞というワードを鼻で笑ってたからハートが強えなって思ったよ俺…。あの初対面の時のキノコはなんだったんだろうか。打たれ弱いのかと思ってたけど、案外違うのかもしれない。
それで。垢作って何するつもりなんだ。委員長が斜め上を見て少し考えた後、カタカタとキーボードを打つのを静観。
『僕もアフロの糞と宗くんが廊下歩いてたの見た!あと柴くんもいたけど…退学なの…??』
「……。ん?!委員長!?それ俺いります!?」
「いります。うるさいです。」
すいません。
すいません……?
『宗くんと柴くん、今回の試験で勉強見てもらったから何かできないかな……』
連投。をしてすぐにそれに対する反応が。
『俺も勉強会お世話になってるわ』
『その節は…』
あっ、そういう…?
驚いた顔の宗と顔を見合わせる。
「へぇ。あなた達、勉強会なんて開いてたんですね」
知ってて書き込んだ訳ではなかったのか。
「まあ…試験前に少し」
「これは好都合。馬鹿が情に釣られて増えてきましたよ」
言い方。
とはいえ、去年から幅広い人が参加してくれていたからか、同情の声が有名人目撃情報より確かに増えてきた。
「いい感じですね。…じゃあそろそろ…」と言って別窓からまた別の垢を作り、投稿する委員長。
『なんか2年主席くん、試験最終日の放課後にSクラスとAクラスとBクラスに出入りした人探してるらしい』
「これでよし、と。」
満足気な委員長。
成る程。そういう感じの情報収集。
あっ。と宗は感嘆の声をあげ、委員長が垢を作ったあたりから画面を注視していた南部さんも僅かに肩の力を抜いた。
『俺部活行ってたからな〜』
『僕はグループラインで聞いてみる』
『馬鹿達が湧いてて草』
『宗様にはお世話になっております』
『俺すぐカラオケ行ったからしらね』
『中庭中継してくれる人居ないの?』
『空気嫁』
『俺も部活』
続々と関連の投稿は増えてるが…いまいちではある。戻った人が1人だけっていうのもあって中々難しいな。
4人でモニターを見ていたが、進展のすることがなく静かに溜息を吐いた、が。
「……あの、委員長。いいですか?」
その後すぐに南部さんが委員長の隣にしゃがんで話しかけた。
意外にアクションを起こすのに驚くも、委員長はどうかされましたか?と不思議そうに聞いた。
「…少しパソコン借りてもいいですか」
「ええ…それは全然…。」
はい。と席を立って南部に譲った。
首を軽く下にさげて礼をしてから、その席に座った南部さんはすぐに操作を始めた。窓を他にも幾つもつくり、垢を作る。カチカチというマウスの音が静かな部屋に響いた。
手慣れてる様な動作に宗が、凄い…。と声を漏らしたのに俺も頷く。
もしかしてツイ廃です?
適当に、その場に合わせた発言、垢に合った発言、を次々と投稿した後。
『そういや、テニス部のやつが教室の方に走ってったの見たわ』
と、書き込んだ。
「「「……テニス部?」」」
「………カメラで見た時にラケット持ってたので、さっき思い出しました…」
すいません。と謝る南部さん。
いやいやいや。
「ナイスですよ南部さん!」
すげえいいキーワードに、テンションが上がったまま南部さんの肩をポンポンと手を弾ませた。それに対して目を見開いて驚いた顔を振り返って俺に向けたが、画面を後ろで見ていた俺らの表情を見て気まずそうだった口元を少し緩めた。
『テニス部?俺聞いてみるわ』
『テニスコート近いから聞いてくる』
『会長様達移動したよ〜』
『他情報クレ』
『写真部ならあちこちで見たけど』
『テニス部2年見てるやついないの?』
『新聞部もよく見かけるよな。なんか知らねえの?』
やさいせいかつ………。
こんなに良いやついっぱいいたんだな…。協力的な投稿にほっこりしてしまう。
浸ってる場合じゃねえけど。
数分経ち、そして。
『アッ!えっ!?それ俺かも!!』
「アッ?!」
「あ…!!」
「……」
「おっ」
沈黙。
「それらしき奴………いないな」
「…………いないね…」
「………………いない…ですね」
「…………………いませんねぇ…チッ」
笑顔を固めたまま舌打ちをした委員長に怯える2人をどーどーと宥める。
汗の滲んだ俺の手には気付かないでくれ給え。
4人で齧り付くようにモニターを見た結果。
それぞれの目的で教室から人が出ていった後、再び教室に向かった所が映った人物は3クラス合わせて2人。
1人は南部さんのクラスメイトで、忘れ物を慌てて取りに行った様子だった。
もう1人は戸締りをしに見回りに来た警備のおじさん。
「もう警備の方でいいのでは?」
「冤罪を別に増やすのはやめません?」
委員長惨い。
前後の扉にしか触ってないのにおじさん可哀想すぎる。
4人共それぞれの椅子に腰を下ろして溜息を吐いた。
んな上手くいかねぇよな〜〜〜……。
チカチカする目元を覆って目頭を揉む。
「恐らくカメラの死角もありますからね…。その場合風紀としても問題で、今後改善していかないと……。」
カメラの死角も含めたら、この解決案はどうやら穴だらけの様だった。
「これだと犯人見つけるのは難しそうだね…」
俺に話しかけてきた宗の言葉に全員が頷く。
犯人を見つけられるものは、手持ちの札には恐らく無い。
………じゃあ、机の中が空であったことの証明?
弾かれた様に顔をあげると、同じ様子の委員長と目が合った。
「「南部さん(君)のクラスメイト!!」」
「…えっ」
「南部さん、あの教室に戻ってきたクラスメイトの名前って分かります?!」
「…………すいません…」
そんな気はしてた〜!!
縮こまって頭を下に向ける南部さんに委員長が肩を優しく叩いた。
「いえ、大丈夫ですよ。そもそも、監視カメラが無駄だった以上、情報収集をする他にもう手段はありませんからね」
優しい!トゥンクしちゃう!さっきまでの悪役ムーブかましてたの忘れちゃう!
心の中で囃し立てる俺をよそに、委員長がノートパソコンを触り始めた。
椅子から立ち上がり、俺達も後ろからその様子を覗き見るとwebの画面が。
開いているのは……本校の掲示板……?
「こんなのあったのか…」
「おや?知りませんでしたか?」
俺の独り言に委員長が反応した。
「まあ。そうですね。最も、これを活用しているのは部活動をしている生徒か親衛隊くらいですから、知らなくても無理はありません。これ自体、入学時に渡されるプリントに数行で記載されているだけですし」
話しながらもタイピングを続ける委員長に宗が疑問を投げた。
「どうして親衛隊が使ってるんですか?」
「ここでは校内で有名な生徒の目撃情報や噂話が多く投稿されますので。まぁ言うなれば、本校生徒専用のツイッター。と言えば使われ方が分かりますかね」
何故かグールグルで何かの画像を探しつつ答える委員長。
こんなものでいいでしょう。と呟いた委員長。画面には"プロフィール"の文字と、さんりおキャラのアイコンと赤点回避!(キラキラ絵文字)の一言が。
ガチのSNSだ。
つか一言のチョイスわろた。
委員長は幾つか作られている内の1番人口が多そうな部屋を選んで、ざっと過去の投稿をスクロール。
『2年主席がゴン先と話してたらしい』
『副委員長様と会長様が中庭にいる!!』
『花浦様もいた!』
『アフロの糞退学説キター!!!』
『華道部の花浦?レアキャラじゃん』
『様を付けろデコ助』
『退学説ソースは?』
『アフロの糞と2年主席も一緒だったらしい』
『さっき職員室の前で白雪姫とすれ違った…!すげえ良い匂いした…』
あー…。
「…これは…」
「話の出回りが…」
「早いですねぇ。」
順に俺、南部さん、塩島委員長。
宗?あいつなら俺の隣で顔を青くしてるぜ……。
自身のことを好き勝手噂されているところを見てショックが大きかった様だ。
今のところ俺の話は出ていないらしく、宗と南部さんには悪いが……少しホッとした。
南部さんに関しては、あからさまに悪口…というか、アンチが湧いてるから心配になって顔をちらりと窺ったが、アフロの糞というワードを鼻で笑ってたからハートが強えなって思ったよ俺…。あの初対面の時のキノコはなんだったんだろうか。打たれ弱いのかと思ってたけど、案外違うのかもしれない。
それで。垢作って何するつもりなんだ。委員長が斜め上を見て少し考えた後、カタカタとキーボードを打つのを静観。
『僕もアフロの糞と宗くんが廊下歩いてたの見た!あと柴くんもいたけど…退学なの…??』
「……。ん?!委員長!?それ俺いります!?」
「いります。うるさいです。」
すいません。
すいません……?
『宗くんと柴くん、今回の試験で勉強見てもらったから何かできないかな……』
連投。をしてすぐにそれに対する反応が。
『俺も勉強会お世話になってるわ』
『その節は…』
あっ、そういう…?
驚いた顔の宗と顔を見合わせる。
「へぇ。あなた達、勉強会なんて開いてたんですね」
知ってて書き込んだ訳ではなかったのか。
「まあ…試験前に少し」
「これは好都合。馬鹿が情に釣られて増えてきましたよ」
言い方。
とはいえ、去年から幅広い人が参加してくれていたからか、同情の声が有名人目撃情報より確かに増えてきた。
「いい感じですね。…じゃあそろそろ…」と言って別窓からまた別の垢を作り、投稿する委員長。
『なんか2年主席くん、試験最終日の放課後にSクラスとAクラスとBクラスに出入りした人探してるらしい』
「これでよし、と。」
満足気な委員長。
成る程。そういう感じの情報収集。
あっ。と宗は感嘆の声をあげ、委員長が垢を作ったあたりから画面を注視していた南部さんも僅かに肩の力を抜いた。
『俺部活行ってたからな〜』
『僕はグループラインで聞いてみる』
『馬鹿達が湧いてて草』
『宗様にはお世話になっております』
『俺すぐカラオケ行ったからしらね』
『中庭中継してくれる人居ないの?』
『空気嫁』
『俺も部活』
続々と関連の投稿は増えてるが…いまいちではある。戻った人が1人だけっていうのもあって中々難しいな。
4人でモニターを見ていたが、進展のすることがなく静かに溜息を吐いた、が。
「……あの、委員長。いいですか?」
その後すぐに南部さんが委員長の隣にしゃがんで話しかけた。
意外にアクションを起こすのに驚くも、委員長はどうかされましたか?と不思議そうに聞いた。
「…少しパソコン借りてもいいですか」
「ええ…それは全然…。」
はい。と席を立って南部に譲った。
首を軽く下にさげて礼をしてから、その席に座った南部さんはすぐに操作を始めた。窓を他にも幾つもつくり、垢を作る。カチカチというマウスの音が静かな部屋に響いた。
手慣れてる様な動作に宗が、凄い…。と声を漏らしたのに俺も頷く。
もしかしてツイ廃です?
適当に、その場に合わせた発言、垢に合った発言、を次々と投稿した後。
『そういや、テニス部のやつが教室の方に走ってったの見たわ』
と、書き込んだ。
「「「……テニス部?」」」
「………カメラで見た時にラケット持ってたので、さっき思い出しました…」
すいません。と謝る南部さん。
いやいやいや。
「ナイスですよ南部さん!」
すげえいいキーワードに、テンションが上がったまま南部さんの肩をポンポンと手を弾ませた。それに対して目を見開いて驚いた顔を振り返って俺に向けたが、画面を後ろで見ていた俺らの表情を見て気まずそうだった口元を少し緩めた。
『テニス部?俺聞いてみるわ』
『テニスコート近いから聞いてくる』
『会長様達移動したよ〜』
『他情報クレ』
『写真部ならあちこちで見たけど』
『テニス部2年見てるやついないの?』
『新聞部もよく見かけるよな。なんか知らねえの?』
やさいせいかつ………。
こんなに良いやついっぱいいたんだな…。協力的な投稿にほっこりしてしまう。
浸ってる場合じゃねえけど。
数分経ち、そして。
『アッ!えっ!?それ俺かも!!』
「アッ?!」
「あ…!!」
「……」
「おっ」