中間テストですよ

in風紀室再び



角を曲がって暫く歩き、ようやく目的地である風紀室に着いた。


着いた。

けど。

ど、どうやって話を切り出そうかな!!?


藁にもすがる思いで取り敢えずと来たものの、門前払いされるかもしれないし、まず中に塩島委員長が居るとも限らないし。
と、ノックをする手のままドアの前で固まる俺。
の、隣に来てノックをした人が。

「2年の南部です。…委員長はいますか」
な、南部さん……!!!

権現寺先生に口火を切った事といい、結構度胸がある南部さんに感動した。頼りになるぅ!

南部君?と、ドア越しにくぐもった声が聞こえてすぐに扉が開く。
居て良かった。

「どうかされましたか?…って柴君と…君は確か2年主席の……」
「えっと、宗です…。初めまして」
「ええ、そうでした。宗君。はじめまして。ところで…」
と、そこまで言って俺達の顔を見回す。
「随分と変わった面子ですね」
俺もそう思う。
「……まぁいいでしょう、取り敢えず中へお入り下さい」
目立ちますから。と言われて中に入る。

中には、他にも風紀委員が2人。
塩島委員長は以前と同じように、俺達3人をソファーに座らせた。左から南部、宗、俺だ。そして用事をしていた人にお茶を頼むと、向かいのソファーに座って長い足を組んだ。

「それで、どのようなご用で?」
任せていいのかな!と南部さんの言葉を待った。

「……………。」
無言。
横を向くと、2人とも俺をガン見。
それに倣って塩島委員長も俺を見る。
口元は笑っているが、目から、早く言え。と圧を感じた。
すいません。

そりゃそうだったわ。
風紀に行くっつったの俺だもんな。
話す内容俺しか分かってねぇわ。

恥ずかしくなって咳払いをひとつ。

「実は、」

そう事情を話そうとして、塩島委員長が手を挙げて俺を止めた。

「…あの?」
と声を掛けてすぐ。

「委員長、お茶です!」
と、さっきお茶を頼まれてた人が来た。

お盆の上にお茶が入ったコップを4つ。そのお盆を机の上に置いた途端に塩島委員長が、

「ありがとう。

では暫く帰ってこないでください」と笑顔で彼に言い放った。

「えっ」
「そこの君も」
「えっ?」

そう言い、何故か壁に立てかけてあった、とても使い込まれた見た目の竹刀を手にした塩島委員長は、元々中にいた2人の風紀委員をその竹刀で突くようにして追い出していった。
「待ってくださいよ!!ケイドロ以来っすよ!!俺ら名前すら出てない!!」
「せめてもう少し出番を!!!」
「3話くらい!!!」
「見た目の特徴とか!!!」

「早く出ろ。」

素気無く扉から叩き出して、そのまま元の位置に。

「お待たせしました。それではどうぞ」
そんな歌番組みたいなマイクパスされても。
戸惑って何を言おうか飛んだ俺に塩島委員長が眉を上げる。
「どうされましたか?人払いはしましたが」
「ど、どうして?」
「どうしてって…。南部君からの用なら制裁関係かと思いましたが、柴君から風紀に用、ということであればよっぽどと思いまして」
私達に頼る、ということをすることが無さそうですからね。と、にっこり。

わぁ。名探偵。
二重の意味で。
"よっぽど"と、"風紀に行かない"の。

変な方向に行く前にさっさと用を済ますが吉。
そう考えて、ついさっきの話を改めて話し始めることに。



「……そうですか。そんなことが」
ふーっと息を吐いて足を組み直す塩島委員長。
「それにしても、よくあの権現寺先生が3日、まぁ今日を抜いても2日くれましたね…。いや、主席の宗君がいるなら有り得ない話でも…。」
独りごちる塩島委員長に本題を切り出す。
「それでですね、」
おや。と俺に意識を向けられ少し緊張。
背筋を伸ばした。

「風紀委員で管理しているという、校内に設置されている監視カメラの映像を見せて頂きたくてこちらに伺いました」
「……あれは行事でのみ使用しているもので、今は…」
口元に浮かべた笑みをそのままに、眉を顰めて困ったような顔をする塩島委員長。

無理か…?

いや、でも
「…毎日カメラのチェックをしている。と俺は聞いています。……校則として良くないことだとしても、ここだけと言うことにして貰えないでしょうか…?」
「……………。」

無言で目を逸らし、手を口元に持っていった委員長が、人差し指を薄い唇に滑らせ考え込むも、すぐ口を開いた。
「……誰からそれを?」
「クラスメイトの伊藤です」

秒で売った。
悪いな伊藤!!

「………はぁぁぁぁぁぁ……アイツか……。」

大きく溜息を吐いて盛大に顔を歪ませる塩島委員長。

とてもこわい。

「それ、大きく話が出回っていたりしませんよね?」
小刻みに顔を上下に動かして返事をする俺。
宗も「ぼ、僕は聞いたことありませんでした…!」とフォローをしてくれた甲斐あってか、委員長は幾分か安堵したようだった。

「…はぁ。分かりました。伊藤君に対してはまた別途こちらで話を伺うとして、」
ほんとごめん伊藤。うまい棒お供えするから許してくれ。
「いいでしょう。映像に関しても、"カメラのチェックをしているときに偶々映った"…という体で押し通します。」

えっ。

ということは………????

宗と南部さんと顔を見合わせる。

いうことは、つまり、見せてもらえるってことで…!?!

と、歓声をあげるよりもはやく、鋭く声が空間に刺さった。


「それで?私達にはどんなメリットが?」
にこり。可哀想に固まった俺達を余所に、愉しげに首を傾けて塩島委員長は笑っていたのであった。



「(ダヨネ)」
「(どどどうしよう)」
「(………どうするんだ)」
26/47ページ