中間テストですよ
3
「不正を行っていない証明、って……」
言われても……。と、宗が俺の方を困りきった顔で見てくる。
見られても俺も困ってる。なう。
嫌なところを突いてくるな…マジで…。
そんなことを言われても、ずっと教室に誰かいたわけじゃないだろうし。教室に監視カメラがあるわけでもない。
第一、あの日俺は風紀に……。
風紀?
ある考えが浮かんで俺は口を開いた。
「……試験最終日、俺達の机の中には何もなかった。そう証明できればいいんですよね?」
形成逆転とばかりに口元をニヤつかせる権現寺先生を見据える。
「柴君……?」
不安そうに見てくる宗と、心許なげな担任。
「ええ、できるならね。私も教師だ。君達が無罪だと信じたいからねぇ。」
どの口が。
「最も、もし証明ができなかった場合……。
停学処分くらいにはなりますかな?しかし、主席の宗さんと…特待生としてここに入学している柴さんは……今後どうなるものやら…。」
「そんなっ!」
やれやれと頭を振って肩をすくめて芝居じみた仕草をする権現寺先生に、宗が悲痛な声をあげた。
脅しやがってクソ教師。
「…1週間の期間をください」
「何を言ってるんですか?教員は忙しいんです。明日までですよ。」
「では4日」
「…………3日です。今日を含んで。」
「……今日と明日、明後日、の3日間。ということで大丈夫ですか?」
「いいでしょう。勿論、授業はきちんと受けるように」
「わかりました。…お忙しいところ期限を延ばしていただきありがとうございます」
頭を下げた。
形式だけでもこういう人には礼儀を尽くす態度はしておくべきだ。
ま、今更かもしれねぇけど。
さて。そうと決まればここでウジウジしてる暇はない。
頭を下げてすぐに立ち上がる。
「それでは俺達は失礼します」
困惑したままの2人に声を掛け立ち上がらせて、嫌な雰囲気が残る会議室から出る。
俺達が出てすぐ担任も出てきた。
「柴…、お前らも、悪い」
歯痒くて堪らない。そんな表情をした先生に笑い掛ける。
「大丈夫ですよ。だって俺らはやってないんですから。なあ」
そう2人にも声をかけた。
「……はい。」
「うん…でも…。」
宗の、でも、に続く言葉の想像は容易い。
やったことより、やってない証明はなにより難しい。当然だ。
けど。
「きっと大丈夫だって。…当てがあるし」
ただし、協力してくれるかはな〜…。
そこまで話してないけど利益優先感あるからな〜…。
「当て?」
担任が怪訝そうに見てくるのに手を振る。
「まぁ。その、だからこっちは大丈夫なので、暫く先生は生徒会のことよろしくお願いします」
「分かった、お前がそこまで言うなら大丈夫なんだろ。…教師の俺にできることあったら言えよ〜」
大丈夫。は自己暗示でもある。
そのことに先生は気づいているのかも知れない。いつもの緩い口調に戻った先生は、安心させるように俺達の頭に順にポンっと手を乗せ、滅多に見せない笑顔を見せた。
赤くなる宗と南部さん。
俺?なってない。
なってない。
頭に感じた優しい重みを誤魔化すように、自身で髪を掻き混ぜた。
「じゃあ、俺達は行くところがあるので」
そう言って先生と別れて、直後。
会議室から出てすぐ近くの廊下の角に、数人の生徒が俺達を見ていたのに気付いた。
背の低い、髪がカラフルな生徒。
チワワ共だ。
こちらを見てクスクスと嫌な笑みを浮かべていた。
「…………宗、南部さん。風紀室に急ごう」
「不正を行っていない証明、って……」
言われても……。と、宗が俺の方を困りきった顔で見てくる。
見られても俺も困ってる。なう。
嫌なところを突いてくるな…マジで…。
そんなことを言われても、ずっと教室に誰かいたわけじゃないだろうし。教室に監視カメラがあるわけでもない。
第一、あの日俺は風紀に……。
風紀?
ある考えが浮かんで俺は口を開いた。
「……試験最終日、俺達の机の中には何もなかった。そう証明できればいいんですよね?」
形成逆転とばかりに口元をニヤつかせる権現寺先生を見据える。
「柴君……?」
不安そうに見てくる宗と、心許なげな担任。
「ええ、できるならね。私も教師だ。君達が無罪だと信じたいからねぇ。」
どの口が。
「最も、もし証明ができなかった場合……。
停学処分くらいにはなりますかな?しかし、主席の宗さんと…特待生としてここに入学している柴さんは……今後どうなるものやら…。」
「そんなっ!」
やれやれと頭を振って肩をすくめて芝居じみた仕草をする権現寺先生に、宗が悲痛な声をあげた。
脅しやがってクソ教師。
「…1週間の期間をください」
「何を言ってるんですか?教員は忙しいんです。明日までですよ。」
「では4日」
「…………3日です。今日を含んで。」
「……今日と明日、明後日、の3日間。ということで大丈夫ですか?」
「いいでしょう。勿論、授業はきちんと受けるように」
「わかりました。…お忙しいところ期限を延ばしていただきありがとうございます」
頭を下げた。
形式だけでもこういう人には礼儀を尽くす態度はしておくべきだ。
ま、今更かもしれねぇけど。
さて。そうと決まればここでウジウジしてる暇はない。
頭を下げてすぐに立ち上がる。
「それでは俺達は失礼します」
困惑したままの2人に声を掛け立ち上がらせて、嫌な雰囲気が残る会議室から出る。
俺達が出てすぐ担任も出てきた。
「柴…、お前らも、悪い」
歯痒くて堪らない。そんな表情をした先生に笑い掛ける。
「大丈夫ですよ。だって俺らはやってないんですから。なあ」
そう2人にも声をかけた。
「……はい。」
「うん…でも…。」
宗の、でも、に続く言葉の想像は容易い。
やったことより、やってない証明はなにより難しい。当然だ。
けど。
「きっと大丈夫だって。…当てがあるし」
ただし、協力してくれるかはな〜…。
そこまで話してないけど利益優先感あるからな〜…。
「当て?」
担任が怪訝そうに見てくるのに手を振る。
「まぁ。その、だからこっちは大丈夫なので、暫く先生は生徒会のことよろしくお願いします」
「分かった、お前がそこまで言うなら大丈夫なんだろ。…教師の俺にできることあったら言えよ〜」
大丈夫。は自己暗示でもある。
そのことに先生は気づいているのかも知れない。いつもの緩い口調に戻った先生は、安心させるように俺達の頭に順にポンっと手を乗せ、滅多に見せない笑顔を見せた。
赤くなる宗と南部さん。
俺?なってない。
なってない。
頭に感じた優しい重みを誤魔化すように、自身で髪を掻き混ぜた。
「じゃあ、俺達は行くところがあるので」
そう言って先生と別れて、直後。
会議室から出てすぐ近くの廊下の角に、数人の生徒が俺達を見ていたのに気付いた。
背の低い、髪がカラフルな生徒。
チワワ共だ。
こちらを見てクスクスと嫌な笑みを浮かべていた。
「…………宗、南部さん。風紀室に急ごう」