中間テストですよ
2
権現寺の発言に、耳を疑う。
生徒会での活動ができなくなる?
どういう意味だ?
宗も驚いた声をあげて権現寺先生の顔を注視した。隣の南部からは俺への視線を感じたが、それどころではない。
「君達、私が呼んだことに心当たりがないのかね?」
「ありません」
「ありません…。」
「……ないです…。」
「本当に?」
口の端を歪めてこちらを見下すのに腹が立つ。回りくどいなこいつ。
態度の変えない俺たちを鼻で笑い、権現寺先生は話を続けた。
「…君達3人の机からそれぞれ教科書、プリント、ノート。が出てきました。……ここまで言われてもしらばっくれるつもりですか?」
権現寺が教科書、プリント、ノートをどこからか取り出し、机に荒く投げ置いた。
「…しらばっくれるも何も、別に普通では?」
眉を寄せて怪訝な表情で俺は言葉を返した。
直後、
「それは、試験の最中の最終日でも、ということですかな」
という言葉を聞くまでは。
試験最終日に、俺らの机の中に教科書とかが入ってた……?
「そんなわけ……。」
「権現寺先生、そういう言い方は違うでしょう…」
今までずっと腕を組んだまま、部屋の隅で立って話を静観していた担任が、俺達を庇うように声をあげた。
「おやおや。美月先生。生徒会顧問、という立場なのでここにいる筈ですが……。そういえば去年から、そこの受け持ったクラスの柴さんには肩入れなさっていましたねぇ。本来あまりしないクラス替えの提案をなさったのもあなたでしたっけ」
「権現寺先生!今はそんな話、」
担任は組んでいた腕を外し、拳を強く握り込んだ。
「そうでしたそうでした。」
あっさりと身を引いた権現寺先生。
珍しく声を荒げる担任と、発言のその内容に俺は驚きを隠せなかった。
クラス替えのきっかけは先生が?
いや、それにしても、だ。
上野が言っていたことがさっきの今のでよく分かった。
物凄く嫌味で
回りくどく
面倒な人物。
嫌なやつ。
上野が嫌うのも無理はない。
というか俺も嫌だ。
ここまで人の神経を逆撫でするのが上手い人なんて今まで出会ったことがなかった。
残念ながら、今知ってしまったが。
「しかしまぁ、美月先生が庇ったところで、君達のやったことが覆るわけではないですから」
そう言って、鼻で笑った。
その主張の激しい呼吸の荒い低い鼻、へし折ってやりてぇ〜〜〜!!!
握り込んだ自身の人差し指に親指の爪を立て、内心歯軋りをした。
「…あの。」
唐突にそう澄んだ声が聞こえたのは、俺の右側から。今まで全く発言をしていなかった南部さんだった。視線は着席時と同じように下を向いている。
意外そうに眉をあげ、変わらず虫唾の走る顔のままの権現寺先生が発言を許可した。
「どうされましたか?滑稽な言い訳なら聞く気はありませんが。」
「………。なんで今なんですか?」
「……はい?」
南部の発言に、余裕綽々だった顔が僅かに歪む。
「試験の時に、俺と2人の机にそのプリントやらノートやらが見つかったのなら、次の日にでも呼び出せば良かったじゃないですか……。」
「………………。」
その通りだった。
もうすぐで1週間経つ今になって、何故。
呟くように疑問を飛ばした南部だが、いかんせん静かな部屋にはよく響いた。
急に黙り始めた権現寺先生。
反撃されるとは思ってもいなかったんだろう。それも、無口な南部さんに。
「…これについての話し合いがありましたし、直後では試験の採点があって忙しかったんです。分かりましたか。」
最もらしい。
が、それでも苦しいんじゃね。それ。
じゃあ。と、俺も手を挙げた。
「何ですか、あなたまで。」
露骨に嫌な顔をする権現寺先生。
「俺からの質問は簡単かと。
その教科書等を見つけたのはどなたなんですか?」
「言えるわけないでしょう」
一蹴される。
確かに。
ただし、
「そうですよね……"個人名"は。
ですが、試験官をした先生、もしくはクラスメイト、といったことも言えませんか?
俺は、どうして、それぞれクラスの違う3人の机から同時期に"それ"が見つかる状況になったのか……を知りたいだけなんです。今まで試験後に各机の中を見てまわる、なんてありませんでしたよね?」
…カツッ…カツッ…。
「………それは、要するに君が言いたいのは、」
権現寺先生は、人差し指で机をカツカツと音を鳴らし始めた。
「はい」
カツッ…カツッ…カツッ…カツッ。
「"クラスがバラバラな3人の机から同時に不正が見つかるのは不自然だ"
"誰かが入れたのではないか"
……と。こういうことですか?」
カツッカツッ…カツッ……。
満点ですよ先生。
誰かが入れたのでは?
なんて、誰も言ってもないのにその答えを導き出せるなんてな。
下を向いていた南部さんも、いつの間にか視線を上げていて、3人で睨むように権現寺先生を見ていた。
音を立てる指先も止まり、机に視線を落とし、目線が合わさることのなくなった権現寺先生は完全に沈黙した。
「……権現寺先生。再度この話は他の先生方に意見を伺ってからでいいのでは」
備え付けの時計のみ音の鳴っていた空間は、美月先生がそう発言したことによって破られた。
ホッと安堵のため息を吐いたのは誰だったか。
話が始まって約20分。
懐疑点の多いこの話は、再度見つめ直しで解散になるかと思った。
だが。
「…そうですね、美月先生。
ただし、
逆に"君達が不正を行っていないという証明"
が出来れば、ですが。」
「は?」
「はい?」
「…え?」
順に担任、俺、宗が声を溢す。
南部さんは、声を出さないにしても口をあんぐりと開けていた。
苦し紛れにまだ足掻くつもりか、こいつ。
権現寺の発言に、耳を疑う。
生徒会での活動ができなくなる?
どういう意味だ?
宗も驚いた声をあげて権現寺先生の顔を注視した。隣の南部からは俺への視線を感じたが、それどころではない。
「君達、私が呼んだことに心当たりがないのかね?」
「ありません」
「ありません…。」
「……ないです…。」
「本当に?」
口の端を歪めてこちらを見下すのに腹が立つ。回りくどいなこいつ。
態度の変えない俺たちを鼻で笑い、権現寺先生は話を続けた。
「…君達3人の机からそれぞれ教科書、プリント、ノート。が出てきました。……ここまで言われてもしらばっくれるつもりですか?」
権現寺が教科書、プリント、ノートをどこからか取り出し、机に荒く投げ置いた。
「…しらばっくれるも何も、別に普通では?」
眉を寄せて怪訝な表情で俺は言葉を返した。
直後、
「それは、試験の最中の最終日でも、ということですかな」
という言葉を聞くまでは。
試験最終日に、俺らの机の中に教科書とかが入ってた……?
「そんなわけ……。」
「権現寺先生、そういう言い方は違うでしょう…」
今までずっと腕を組んだまま、部屋の隅で立って話を静観していた担任が、俺達を庇うように声をあげた。
「おやおや。美月先生。生徒会顧問、という立場なのでここにいる筈ですが……。そういえば去年から、そこの受け持ったクラスの柴さんには肩入れなさっていましたねぇ。本来あまりしないクラス替えの提案をなさったのもあなたでしたっけ」
「権現寺先生!今はそんな話、」
担任は組んでいた腕を外し、拳を強く握り込んだ。
「そうでしたそうでした。」
あっさりと身を引いた権現寺先生。
珍しく声を荒げる担任と、発言のその内容に俺は驚きを隠せなかった。
クラス替えのきっかけは先生が?
いや、それにしても、だ。
上野が言っていたことがさっきの今のでよく分かった。
物凄く嫌味で
回りくどく
面倒な人物。
嫌なやつ。
上野が嫌うのも無理はない。
というか俺も嫌だ。
ここまで人の神経を逆撫でするのが上手い人なんて今まで出会ったことがなかった。
残念ながら、今知ってしまったが。
「しかしまぁ、美月先生が庇ったところで、君達のやったことが覆るわけではないですから」
そう言って、鼻で笑った。
その主張の激しい呼吸の荒い低い鼻、へし折ってやりてぇ〜〜〜!!!
握り込んだ自身の人差し指に親指の爪を立て、内心歯軋りをした。
「…あの。」
唐突にそう澄んだ声が聞こえたのは、俺の右側から。今まで全く発言をしていなかった南部さんだった。視線は着席時と同じように下を向いている。
意外そうに眉をあげ、変わらず虫唾の走る顔のままの権現寺先生が発言を許可した。
「どうされましたか?滑稽な言い訳なら聞く気はありませんが。」
「………。なんで今なんですか?」
「……はい?」
南部の発言に、余裕綽々だった顔が僅かに歪む。
「試験の時に、俺と2人の机にそのプリントやらノートやらが見つかったのなら、次の日にでも呼び出せば良かったじゃないですか……。」
「………………。」
その通りだった。
もうすぐで1週間経つ今になって、何故。
呟くように疑問を飛ばした南部だが、いかんせん静かな部屋にはよく響いた。
急に黙り始めた権現寺先生。
反撃されるとは思ってもいなかったんだろう。それも、無口な南部さんに。
「…これについての話し合いがありましたし、直後では試験の採点があって忙しかったんです。分かりましたか。」
最もらしい。
が、それでも苦しいんじゃね。それ。
じゃあ。と、俺も手を挙げた。
「何ですか、あなたまで。」
露骨に嫌な顔をする権現寺先生。
「俺からの質問は簡単かと。
その教科書等を見つけたのはどなたなんですか?」
「言えるわけないでしょう」
一蹴される。
確かに。
ただし、
「そうですよね……"個人名"は。
ですが、試験官をした先生、もしくはクラスメイト、といったことも言えませんか?
俺は、どうして、それぞれクラスの違う3人の机から同時期に"それ"が見つかる状況になったのか……を知りたいだけなんです。今まで試験後に各机の中を見てまわる、なんてありませんでしたよね?」
…カツッ…カツッ…。
「………それは、要するに君が言いたいのは、」
権現寺先生は、人差し指で机をカツカツと音を鳴らし始めた。
「はい」
カツッ…カツッ…カツッ…カツッ。
「"クラスがバラバラな3人の机から同時に不正が見つかるのは不自然だ"
"誰かが入れたのではないか"
……と。こういうことですか?」
カツッカツッ…カツッ……。
満点ですよ先生。
誰かが入れたのでは?
なんて、誰も言ってもないのにその答えを導き出せるなんてな。
下を向いていた南部さんも、いつの間にか視線を上げていて、3人で睨むように権現寺先生を見ていた。
音を立てる指先も止まり、机に視線を落とし、目線が合わさることのなくなった権現寺先生は完全に沈黙した。
「……権現寺先生。再度この話は他の先生方に意見を伺ってからでいいのでは」
備え付けの時計のみ音の鳴っていた空間は、美月先生がそう発言したことによって破られた。
ホッと安堵のため息を吐いたのは誰だったか。
話が始まって約20分。
懐疑点の多いこの話は、再度見つめ直しで解散になるかと思った。
だが。
「…そうですね、美月先生。
ただし、
逆に"君達が不正を行っていないという証明"
が出来れば、ですが。」
「は?」
「はい?」
「…え?」
順に担任、俺、宗が声を溢す。
南部さんは、声を出さないにしても口をあんぐりと開けていた。
苦し紛れにまだ足掻くつもりか、こいつ。