はじめまして
増えてきた【終】
「ただいま〜!柴!」
「柴君ただいま〜」
「おー、おかえり」
少し話し込んでいたのか、2人はチャイムの鳴る少し前程に、教室の後ろのドアから帰ってきた。丁度教え終わったところだった為タイミングが良い。
遠坂は教科書を一気に渡されたのか、両手に抱えている。
上野も2冊ほど持ってあげて…るの…………………うわ、違う、あれはあいつの課題っぽい。どんまい。
遠坂の何かに気付いた様な反応に、そういえばチワワはさっきから静かだなと振り返ると、
「………………っ!…………っ!!!!!」
なにその反応。チワワはさっきまでの殺伐とした雰囲気を消し去り、手を口元に持っていき少女漫画の恋する乙女の様な表情に。見える…見えるぞ……俺にはシャボン玉が見える………。
「ただいま〜って……!ただいま〜って上野君が僕に……っ!!」
「柴って聞こえてないのかお前は」
「まるで新婚夫婦のような……!」
「意外と浮気性か。会長サマはどうした」
「さっきからうるさい!犬!僕は美しい人は等しく愛でるがモットーなんだ!!浮気とかじゃない!!」
犬。最早柴さえなくしやがったこいつ。
しかも何その一夫多妻みたいな考え。
いや…?………箱推しのようなもんか?なら分からんでも無い。
「え、なになに、いつの間に友達増やしたの柴」
先に荷物を教室の後ろの個人ロッカーに入れた上野が後ろから物珍しそうに話しかけて来た。ちょっと声が硬い気もするけど、気のせいか?
「いや、なんか授業で」
!!!!♩〜危険を察知〜♩
「っじゅ、授業での、話で、盛り上がってな……!」
「へぇ〜」
不思議そうな顔をした上野を見てすぐ背後をチラ見する。片手が鞄からソロっと出て来たのが見えた。
目が合うと口だけで笑ってこっちを刺すように見ている。
……プライドを守る事に全力だなチワワお前……!!!!美しい人を愛でる為のうちわをこんな脅しに使っていいのかよ……!!
今日使わない教科書を直した遠坂も上野を通り過ぎ、自分の椅子に座る。口を挟むつもりは無いようで、温和な表情でこっちを見る。
「?どしたの柴。それで、どんな話したの?聞かせてよ、あー…………えっと……ごめん、」
「あぁいやこっちこそごめんね!話した事無かったもんね、僕は小森 雫(コモリ シズク)。仲良くしてくれると嬉しいな、上野君っ」
「俺はー?」
「じゃあ僕も〜。」
少し楽しくなってきてふざけて手を挙げる。それを見た遠坂も便乗してきた。
楽しい。
「…………よろしく、遠坂と犬。」
態度が顕著。
俺マゾじゃないんだけど小森の全力の嫌な顔、見るの楽しくなってきた。俺1人笑っていて、キョトンとした遠坂と上野。小森は全力の嫌な顔で停止。
チャイムが鳴る。ここの空間だけカオス。
じゃ、次昼休みだしその時また話そ、と上野が笑顔で俺の髪の毛を容赦なくグチャグチャにかき混ぜ席に着いた。
何しやがる俺のキューティクルが……………いや無いけど。セットも手櫛5秒で完了だけども。
古文のおじいちゃん先生の睡眠の呪文を乗り切り、昼休み。
遠坂の案内も兼ねて食堂に行く事にした。小森もさっきの話をと言ってついて来る事に。絶対俺の見張りだろお前。目が怖ぇんだよ。
2人からアイアンクローされるのを遠坂を盾にしたりして食堂の前に着いた。
なんか…忘れて、
「あ、案内忘れてた。」
「あら〜。」
上野と顔を見合わせる。遠坂は、
「そんな気にしないで。また帰りに教えてよ。」と、前髪お化け。口元女神の微笑み。
遠坂女神じゃんと上野と言い合い、少し早めに食べて遠回りして教室に帰ることで決定。
「とは言っても、学校の生徒用HPに校内地図あるけど?」上野を見つめながら小森が口を開いた。
それなら俺も使っている。ここの敷地の広さは覚えるのがあまりにも大変だ。俺が覚える気も無いのもあるけど。
万が一もあるし、後で画像送ると遠坂に言い、食堂に入ることに。
食堂に入っておお〜と幾分かテンションが上がったような遠坂に思わず含み笑い。俺も、いくら姉ちゃんのBLの本を強制的に読まされ分かってはいたとはいえ実際目にした時は感嘆の声が漏れた。めっちゃハリーポッターって。実際にあるのも異常だけどな。
しかも食堂にはわざわざ一流のシェフを起用。ただ、一般の食堂ルール【食券を買って受付に渡す。】が謎に適用されている。
人件費の殆どをシェフに使ったんだろうな…きっと…。
先に食堂の入り口の食券機の前に並ぶ。
上野は小森と少し離れて話してるので俺が遠坂に使い方を説明する。
とはいえ他の一般的な食券機と使い方は変わらない。液晶に映った食べたい料理をタッチしてお会計。
ただ普通と少し違う点は、お会計は現金か、寮のルームキーで選べること。ルームキーは登録した口座に繋がっており、クレジットカードの役割にもなる。
名前と部屋番が記入されている為、学内では身分証の代わりにもなる。
王道だあな。
去年仲良かった奴が無くして哀れんだ事件を思い出す……。
遠坂に絶対無くさないように念押し。先生にも言われただろうし、無くすような奴には見えないけど一応。
さて、スキップしていい説明を話し終えた俺は、目の前にあるメニューを真剣に見つめる。結構値が張るから週の半分の割合で来るけど毎度悩む。
なにせお義兄さんの懐から出るんだ……なるべく安めで、尚且つボリュームがそこそこあるのを探さないと……!!一流シェフは気まぐれなのか結構な頻度でメニューが違う。前なんて昨日と同じ物を食べようと値段見たら3倍になってたことがある。やめてくれマジで。
隣を見ると上野が真剣な表情。お前も……特待で入学してるもんな……。
暫く悩み、俺は今日少し安くなっていたカレーに。
俺の次の遠坂は迷わないタイプのようですぐ決めて食券機から退いた。
小森はいつの間にか1番早く買い終わり、食券を俺に押し付けて座席確保に向かった。
今日は始業式だからかいつもより人が多く、あいつはさながら戦場に赴く戦士のような顔で人を掻き分けて行った。絶対に上野君の席は確保する……!って顔が言ってた。
その間食券機から少し離れた所で上野を待つ。まとめて受付に出す為、遠坂から食券を回収。
そういや…………小森あいつ……まさか上野との2人席じゃないよな………………?まさかな……。そんな事を考えていると最後に決め終わった上野が待たせてごめんと駆け寄って来た。そんな上野に手を出す。
「あれ?小森くんは?」
「席確保しに行ってくれた。」
「そっか〜、ありがたい。」
そう言いながら、上野は食券の端っこを持って俺の手に置いた。
……受付に向かって歩きながら、気になっていた事を聞く。
「あの、上野……小森は……、大丈夫?我慢とかしてない?俺、勝手に一緒に連れて来ちゃってほんと、ごめん。なんだったら俺小森と2人で、」
食べて来るからさ
次第に俺だけ足取りが重くなる。
話しながら顔を見るのが怖くなって下を向く。
実は食堂に来た時くらいから考えてた。
人の心は糸で吊り合わせた天秤の様なもんだと俺は思ってる。綺麗にずっと釣り合ってることは滅多になくて、常にぐらぐらしている。少しずつ色んなカケラを左右に乗せて、バランスをとってるけど、ある時大きいカケラが乗る。それが良い方か悪い方か分からないけど、それによって天秤が壊れてしまうと、終わり。人の心は酷く不安定だ。いつ心変わりするのか分からない。
いつもより少し距離を感じた。理由はそれだけ。
気にし過ぎかも知れないけど、実は上野が不快に思ってて、そんな小森を連れてきた俺といるのが嫌になるくらいなら、嫌われるくらいなら、全然小森と2人で食べる方がマシだって。それで小森に嫌われても、前からの友達を失うより、さっき出来た友達を失う方が
全然。
手が視界にニュッと現れて目を見開く。首に腕を回し強引に引き寄せられた。
「大丈夫、我慢なんてしてないってば〜小森くんあんま化粧してないっぽいし、香水も嫌いじゃない匂いだったから!それに、折角仲良くなったんだから皆で食べたいしね。ありがと!」
パッと顔を伺う。いつもより優しい顔をしてる気がした。
ホッとして冷えた指先をぎゅっと握る。チワワの言葉で少しナーバス気味になってたみたいで、良かった。教室のあの時の硬い声はやっぱ気のせいだったのか。
……あ、やべ、食券握りつぶした。
受付に着き、しわしわになった全員の食券をおばちゃんに渡す。
重いのでずっとくっ付いてる上野を剥がそうと肘で押し返す。
嫌われるのとこれは別問題です。
俺達の会話を聞いていた遠坂の視線に気付き、上野を見上げた。俺と遠坂を交互に見ると気付いてくれた。
「あぁおれ、キツイ匂いとケバいの無理なんだよね。咳出ちゃうから。だから小森くんとかあーいう親衛隊に近付くの苦手でさ。それ柴も知ってるから〜みたいな。」と締めくくる。へえ〜〜大変だねと遠坂が頷きながら周りを見渡した。
そういや親衛隊といえば、今日人多いのにいつもより視線を感じない気が……?
受け取り口に向かいながら辺りを見渡す。
「どした柴。」
「いや……、なんか、今日皆浮き足立ってない?上野もいつもより視線少ない気がするだろ?」
「そーうだねぇ……いつもこんなくっ付いてたら怖い顔してる子も全然見当たんないね。」
だからどけって。
「多分ーーーアレじゃないかなぁ?」
そう遠坂が指差したのは食堂のど真ん中でスパゲティを吸い込む黒い毛玉。
「「うわぁ…………。」」
「見えるか…………俺にしか見えない妖精とかじゃないよな…………?」
「すげぇ吸引力……………新しい形の掃除機とか?」
「あはは。……………………やっぱりアレ不快だなぁ……」
「「!!」」
「ただいま〜!柴!」
「柴君ただいま〜」
「おー、おかえり」
少し話し込んでいたのか、2人はチャイムの鳴る少し前程に、教室の後ろのドアから帰ってきた。丁度教え終わったところだった為タイミングが良い。
遠坂は教科書を一気に渡されたのか、両手に抱えている。
上野も2冊ほど持ってあげて…るの…………………うわ、違う、あれはあいつの課題っぽい。どんまい。
遠坂の何かに気付いた様な反応に、そういえばチワワはさっきから静かだなと振り返ると、
「………………っ!…………っ!!!!!」
なにその反応。チワワはさっきまでの殺伐とした雰囲気を消し去り、手を口元に持っていき少女漫画の恋する乙女の様な表情に。見える…見えるぞ……俺にはシャボン玉が見える………。
「ただいま〜って……!ただいま〜って上野君が僕に……っ!!」
「柴って聞こえてないのかお前は」
「まるで新婚夫婦のような……!」
「意外と浮気性か。会長サマはどうした」
「さっきからうるさい!犬!僕は美しい人は等しく愛でるがモットーなんだ!!浮気とかじゃない!!」
犬。最早柴さえなくしやがったこいつ。
しかも何その一夫多妻みたいな考え。
いや…?………箱推しのようなもんか?なら分からんでも無い。
「え、なになに、いつの間に友達増やしたの柴」
先に荷物を教室の後ろの個人ロッカーに入れた上野が後ろから物珍しそうに話しかけて来た。ちょっと声が硬い気もするけど、気のせいか?
「いや、なんか授業で」
!!!!♩〜危険を察知〜♩
「っじゅ、授業での、話で、盛り上がってな……!」
「へぇ〜」
不思議そうな顔をした上野を見てすぐ背後をチラ見する。片手が鞄からソロっと出て来たのが見えた。
目が合うと口だけで笑ってこっちを刺すように見ている。
……プライドを守る事に全力だなチワワお前……!!!!美しい人を愛でる為のうちわをこんな脅しに使っていいのかよ……!!
今日使わない教科書を直した遠坂も上野を通り過ぎ、自分の椅子に座る。口を挟むつもりは無いようで、温和な表情でこっちを見る。
「?どしたの柴。それで、どんな話したの?聞かせてよ、あー…………えっと……ごめん、」
「あぁいやこっちこそごめんね!話した事無かったもんね、僕は小森 雫(コモリ シズク)。仲良くしてくれると嬉しいな、上野君っ」
「俺はー?」
「じゃあ僕も〜。」
少し楽しくなってきてふざけて手を挙げる。それを見た遠坂も便乗してきた。
楽しい。
「…………よろしく、遠坂と犬。」
態度が顕著。
俺マゾじゃないんだけど小森の全力の嫌な顔、見るの楽しくなってきた。俺1人笑っていて、キョトンとした遠坂と上野。小森は全力の嫌な顔で停止。
チャイムが鳴る。ここの空間だけカオス。
じゃ、次昼休みだしその時また話そ、と上野が笑顔で俺の髪の毛を容赦なくグチャグチャにかき混ぜ席に着いた。
何しやがる俺のキューティクルが……………いや無いけど。セットも手櫛5秒で完了だけども。
古文のおじいちゃん先生の睡眠の呪文を乗り切り、昼休み。
遠坂の案内も兼ねて食堂に行く事にした。小森もさっきの話をと言ってついて来る事に。絶対俺の見張りだろお前。目が怖ぇんだよ。
2人からアイアンクローされるのを遠坂を盾にしたりして食堂の前に着いた。
なんか…忘れて、
「あ、案内忘れてた。」
「あら〜。」
上野と顔を見合わせる。遠坂は、
「そんな気にしないで。また帰りに教えてよ。」と、前髪お化け。口元女神の微笑み。
遠坂女神じゃんと上野と言い合い、少し早めに食べて遠回りして教室に帰ることで決定。
「とは言っても、学校の生徒用HPに校内地図あるけど?」上野を見つめながら小森が口を開いた。
それなら俺も使っている。ここの敷地の広さは覚えるのがあまりにも大変だ。俺が覚える気も無いのもあるけど。
万が一もあるし、後で画像送ると遠坂に言い、食堂に入ることに。
食堂に入っておお〜と幾分かテンションが上がったような遠坂に思わず含み笑い。俺も、いくら姉ちゃんのBLの本を強制的に読まされ分かってはいたとはいえ実際目にした時は感嘆の声が漏れた。めっちゃハリーポッターって。実際にあるのも異常だけどな。
しかも食堂にはわざわざ一流のシェフを起用。ただ、一般の食堂ルール【食券を買って受付に渡す。】が謎に適用されている。
人件費の殆どをシェフに使ったんだろうな…きっと…。
先に食堂の入り口の食券機の前に並ぶ。
上野は小森と少し離れて話してるので俺が遠坂に使い方を説明する。
とはいえ他の一般的な食券機と使い方は変わらない。液晶に映った食べたい料理をタッチしてお会計。
ただ普通と少し違う点は、お会計は現金か、寮のルームキーで選べること。ルームキーは登録した口座に繋がっており、クレジットカードの役割にもなる。
名前と部屋番が記入されている為、学内では身分証の代わりにもなる。
王道だあな。
去年仲良かった奴が無くして哀れんだ事件を思い出す……。
遠坂に絶対無くさないように念押し。先生にも言われただろうし、無くすような奴には見えないけど一応。
さて、スキップしていい説明を話し終えた俺は、目の前にあるメニューを真剣に見つめる。結構値が張るから週の半分の割合で来るけど毎度悩む。
なにせお義兄さんの懐から出るんだ……なるべく安めで、尚且つボリュームがそこそこあるのを探さないと……!!一流シェフは気まぐれなのか結構な頻度でメニューが違う。前なんて昨日と同じ物を食べようと値段見たら3倍になってたことがある。やめてくれマジで。
隣を見ると上野が真剣な表情。お前も……特待で入学してるもんな……。
暫く悩み、俺は今日少し安くなっていたカレーに。
俺の次の遠坂は迷わないタイプのようですぐ決めて食券機から退いた。
小森はいつの間にか1番早く買い終わり、食券を俺に押し付けて座席確保に向かった。
今日は始業式だからかいつもより人が多く、あいつはさながら戦場に赴く戦士のような顔で人を掻き分けて行った。絶対に上野君の席は確保する……!って顔が言ってた。
その間食券機から少し離れた所で上野を待つ。まとめて受付に出す為、遠坂から食券を回収。
そういや…………小森あいつ……まさか上野との2人席じゃないよな………………?まさかな……。そんな事を考えていると最後に決め終わった上野が待たせてごめんと駆け寄って来た。そんな上野に手を出す。
「あれ?小森くんは?」
「席確保しに行ってくれた。」
「そっか〜、ありがたい。」
そう言いながら、上野は食券の端っこを持って俺の手に置いた。
……受付に向かって歩きながら、気になっていた事を聞く。
「あの、上野……小森は……、大丈夫?我慢とかしてない?俺、勝手に一緒に連れて来ちゃってほんと、ごめん。なんだったら俺小森と2人で、」
食べて来るからさ
次第に俺だけ足取りが重くなる。
話しながら顔を見るのが怖くなって下を向く。
実は食堂に来た時くらいから考えてた。
人の心は糸で吊り合わせた天秤の様なもんだと俺は思ってる。綺麗にずっと釣り合ってることは滅多になくて、常にぐらぐらしている。少しずつ色んなカケラを左右に乗せて、バランスをとってるけど、ある時大きいカケラが乗る。それが良い方か悪い方か分からないけど、それによって天秤が壊れてしまうと、終わり。人の心は酷く不安定だ。いつ心変わりするのか分からない。
いつもより少し距離を感じた。理由はそれだけ。
気にし過ぎかも知れないけど、実は上野が不快に思ってて、そんな小森を連れてきた俺といるのが嫌になるくらいなら、嫌われるくらいなら、全然小森と2人で食べる方がマシだって。それで小森に嫌われても、前からの友達を失うより、さっき出来た友達を失う方が
全然。
手が視界にニュッと現れて目を見開く。首に腕を回し強引に引き寄せられた。
「大丈夫、我慢なんてしてないってば〜小森くんあんま化粧してないっぽいし、香水も嫌いじゃない匂いだったから!それに、折角仲良くなったんだから皆で食べたいしね。ありがと!」
パッと顔を伺う。いつもより優しい顔をしてる気がした。
ホッとして冷えた指先をぎゅっと握る。チワワの言葉で少しナーバス気味になってたみたいで、良かった。教室のあの時の硬い声はやっぱ気のせいだったのか。
……あ、やべ、食券握りつぶした。
受付に着き、しわしわになった全員の食券をおばちゃんに渡す。
重いのでずっとくっ付いてる上野を剥がそうと肘で押し返す。
嫌われるのとこれは別問題です。
俺達の会話を聞いていた遠坂の視線に気付き、上野を見上げた。俺と遠坂を交互に見ると気付いてくれた。
「あぁおれ、キツイ匂いとケバいの無理なんだよね。咳出ちゃうから。だから小森くんとかあーいう親衛隊に近付くの苦手でさ。それ柴も知ってるから〜みたいな。」と締めくくる。へえ〜〜大変だねと遠坂が頷きながら周りを見渡した。
そういや親衛隊といえば、今日人多いのにいつもより視線を感じない気が……?
受け取り口に向かいながら辺りを見渡す。
「どした柴。」
「いや……、なんか、今日皆浮き足立ってない?上野もいつもより視線少ない気がするだろ?」
「そーうだねぇ……いつもこんなくっ付いてたら怖い顔してる子も全然見当たんないね。」
だからどけって。
「多分ーーーアレじゃないかなぁ?」
そう遠坂が指差したのは食堂のど真ん中でスパゲティを吸い込む黒い毛玉。
「「うわぁ…………。」」
「見えるか…………俺にしか見えない妖精とかじゃないよな…………?」
「すげぇ吸引力……………新しい形の掃除機とか?」
「あはは。……………………やっぱりアレ不快だなぁ……」
「「!!」」
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