中間テストですよ

会長退室後



「って言うてもなぁ〜……」
聞いとけって言われてもなぁ…。

木雨と被った。口に出さなくてよかった。
困惑の表情で首の後ろに手を回した木雨と目が合う。

「俺らがめっちゃ忙しいからって、ついさっきまで一般生徒やったバズに手伝わせんのもな……」

あー。
……確かに。
会長に補佐を強制任命される先程まで3人でやっていた順番とか、やり方とかあるだろうに。突然新人ぶっ込んで、はい人員増加です。って言われても困るよな。

とは言え、不名誉にもあだ名を付けられて認知されてしまったからには出来ることはやりたい。
目の下にクマを飼い出した木雨とげっそりしつつある宗も心配なのもあるし。

「木雨、俺にできることがあるなら全然」
「けどほんま、悪いって……」
「あー、効率悪くなりそうなら今日は帰るけど…」
「いや全然。ほな任せるわ!」
おい。
なんだよさっきまでのは。
フリか?フリだったのか?

困った表情から一変。パッとにこやかな表情に変わったかと思えば、机の上の書類を選別し始めた。

「このアンケートまとめるやつと〜…終わったらこの書類のホチキス留め頼むわ」
「…はいよ」
アナログだな。

ガサガサと紙の束を渡された。
2人は続きの作業をし始め、木雨から「空いてる席どこでもつこてええから」と言われた。

空いてるっつっても。
書類が散らばる机を見て一時固まるも、比較的マシな席を陣取ることに。
垣根を越えてはみ出ている書類をある程度の種類にまとめてから、渡された仕事に取り掛かる。


そこからは各自の仕事を無言でこなし、俺が与えられた仕事が終わる頃には、外はもう陽が落ちていた。

真剣な顔をしてパソコンで作業をしている木雨に申し訳なさをおぼえつつ話しかける。
「悪い木雨、もらったやつ終わったんだけどどうすればいい?」
「ほんま?あー、と、ちょい待ち」
そう言ってパソコンを暫く触り、区切りがついたらしい木雨が俺に向き直った。

「お〜量も多かったのに綺麗にやってくれてありがと〜……ってもうこんな時間なん?!」
書類を手渡した時に何気なく周りを見回した木雨は、窓の外と時計が目に入ったらしく驚いた声をあげた。集中するあまりパソコンの時計は目に入らなかったらしい。

「あ、ほんとだ…」
宗も木雨の声を聞いて作業の手をとめ、同じく時計を見て声を漏らした。

「俺がまだやれるのある?」
「いや、ええよ。急ぎのやつとかもう無いし!」
「2人残るなら手伝えることやるけど」
「ええってええって!遅い時間やからとかちゃうくて、ほんま俺らも今やってんの終わったら帰れるし」
そう言って手をパタパタと上下に振った。

本当かよ。
疑いの目を向けたのに対し、木雨が宗に声を掛けた。

「なー宗ちゃんも今日は終われそうやんな?」
「うん。柴君のお陰でだいぶ楽できたよ。ありがとう。でも、巻き込んで本当にごめんね…」
「それはもう大丈夫だって」
まだ申し訳なさげに眉を下げるのに苦笑いした。


バッグを肩に掛け、扉に手を付いて振り返る。

「じゃあ…先に失礼するな」
「うん!ありがとうね、気を付けて帰ってね」
「ありがとうな〜。またラインするけど、明日からもよろしゅう〜」
手を振ってくる2人。

ははは。
なんてこったい。
そうだった。
明日から生徒会室に通うことなったのを忘れかけてたわ。
乾いた笑いを浮かべて俺も、また明日ー。と手を振りかえして部屋を出た。


そういや、白崎さんは帰ってこなかったな。
挨拶することになるかと思ってたけど。
そう頭を捻りつつ、その日は寮に戻った。




「あっ、やべっ!惶にラインしてなかった!」
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