中間テストですよ
生徒会室
まだ残っていたクラスメイトの視線から逃れるように、直ぐに準備を終えて教室を飛び出した。
駆け足で生徒会室に向かい、周りに注意しつつ宗から送られてきたラインを確認する。
『ごめんなさい』
『本当にごめんなさい』
『もしかしたら、いや絶対放送があるから』
『僕のせいで会長様が柴君を知っちゃって』
『本当にごめんなさい』
『ごめんなさいごめんなさい本当に…』
で、極め付けに土下座のスタ連。
一体何が……。
放送の原因は宗みたいだが、謝罪もここまでくると俺より哀れに思える。
生徒会室は5階。
許可のない一般生徒はエレベーターが使えないから、息を切らしてやっとのことで生徒会室前に辿り着いた。初めて来たから少し迷ってしまって、放送から結構時間が経っていた。
やべぇ〜〜〜。会長サマに土下座で詫びろとか言われたらどうしよ。別にそういうプライドねぇからするけど全然。穏便に済むなら。
明後日に飛ぶ思考と呼吸を落ち着かせるために深呼吸。吸って。吐く。
よし。
「放送で呼ばれました、2年Aクラスの柴です」
重厚な焦茶色の扉をノックして、声をいつもより張り上げる。
「……………。」
も、返事がない。
無機物だから屍でもないが。
そうだな…。取り敢えず中を少し覗いて、それからどうするか考えるか。重い扉を上半身ごと力を掛けて押し開いた。
静かな中は、想像通りの豪華絢爛な部屋だった。
壁には歴代生徒会の先輩方がそれぞれ飾っていったのだろう、高そうな額に収められた趣向の違う絵画が大小様々に掛けられている。
奥の窓辺には、外からの自然光で色鮮やかにに光る花瓶。その花瓶には、こまめに手入れされているのだろうとひと目で分かる、生けられた綺麗な花が。
天井からは、金持ちの自宅紹介で玄関によく目にするなんかキラキラしてる照明。
奥の紺色で金の刺繍が織りなされたカーテンが開いた窓辺の前には、一際高そうなアンティーク系の机が。上には書類と筆記具など様々な物が置いてあるが、目を惹いたのは、光を浴びて煌めく、"生徒会長 氷室俊也"と書かれている黒の机上名刺。
その前に向かい合った机が3組あるが、机上名刺は会長しか見当たらなかった。
そして資材室とプレートが付いた部屋が1つ。扉の閉まった小さなガラスからは明かりは見えず、誰も居ないようだった。
豪華さは違えど、部屋の作りは風紀室と大体同じようだ。
つい先日風紀室にお邪魔したように、生徒会室にも、すぐ入口の手前側に談話用であろう向かい合ったソファー。部屋一面に敷かれたフカフカの絨毯から伸びたソファーの脚には傷一つ見えない。
そして、扉から顔を覗かせたそんな俺の目の前には
フカフカの絨毯の上で正座をして涙目で俺を見上げる、宗。
戸惑う俺。
「……………。」
「……ぅ…………。」
目があったまま、ゆっくりと頭が下にさがっていった。
「すみませんでした…!!!」
お手本のような綺麗な土下座だった。
扉をノックする直前に浮かんだ土下座の執行者は何故か宗になった。
いやいやいや待て、どうしてそうなった。
一連の動作を見ているだけだったが、すぐに慌てて中に入り、宗の体を起こさせる。
「すみません…ほんと…僕のせいで…」
「な?落ち着こ?そもそも俺まだ何にも知らねえし」
そうなんだよ。何も知らねえのに謝られても困る。
ってその俺を呼んだ当事者で、この部屋の主は何故か居ない。
「謝るのは置いといて、生徒会長は?」
体を起こしたものの、依然と綺麗な正座のままの宗に聞く。
「あ…柴君を呼んだ後に携帯見て、すぐ出ていっちゃったみたい」
「何故。」
「ごっごめん!僕が引き止めればよかったのに…!また僕のせいで柴君に迷惑を…!」
何処ぞのサラリーマンみたくなってしまった宗。
お前のせいじゃないんだ宗。
しゃがんで頭を抱えているのを宗が心配そうに見守っていた時。
資材室から物音が聞こえた。
それからすぐに扉が開く。
「なんや、やんや騒いでどないしたん宗ちゃん…………
って、バズ……?」
「…おひさー……」
寝起きの顔で暗い部屋から出てきたのは、ケイドロ以来に会う木雨だった。たまにラインはしてるけど。
眠そうな目が見開き、あだ名を呼んだと同時に唖然とした顔で手をぷらぷらと振ってきたので、それに倣って返しながら挨拶をした。
「やーん、おひさ〜10年振りちゃう!?
……やなくて、えっ?ほんまなんでバズおんの」
適当なボケを挟んでこっちに寄ってきた木雨。途中地面に置いてあった段ボールに蹴躓いて声を漏らしつつ、俺の隣に。
「なになに?夢?きれ〜に正座しとる宗ちゃんも夢の宗ちゃん?俺の本体寝てんの?」
「本体ってなんだよ。スタンドかよ」
「そのツッコミはバズや〜〜!!」
どういう判断だよ。あとスタンド知ってんのかよ。
「木雨はなんで?サボり?」
「ちゃうっっっわ!!!!!」
うるせ。
力一杯ツッコまれ、声のボリュームに顔を顰めた。
「ほら、見て?目の下のこのクマぁ!」
指を差して見せてくるのに頷いた。
「かわいい青色してんな」
「うふふ、せやろ〜。ちゃうねん!!!!」
はい。
「ちゃうねん!!て!!!!!」
はい。
間を空けて2度言わなくても。
大事なことなので?
ふざけたのはさておき。まぁ、忙しいんだろうなということは部屋を覗いた時に気付いていた。会長の机の上はさほど散らかっていないものの、向かい合っている6つの机の上は散らかった書類でいっぱいだったから。
ちらりと書類に目を向けたのを見て木雨が話す。
「ここ1ヶ月くらい、アイツら皆どっか遊びに行きよってな…。今までこんな書類溜まるの見たことないねんけど…」
皆?ガチで?
引いた顔をした俺を見て、慌てて宗が口を開いた。
「あっ、皆って言ってもね、書記の白崎君はちゃんと仕事してるんだよ。今は職員室の方に出てるんだけど」
つまり…。
「つまり…実質3人で生徒会を運用してんの…?」
「い、今はね…」
ヤベー……。
「ほんまありえへんやろ?!??もう俺2年しか信じられへん!!!!」
うわーんと泣きまねをする木雨。
を無視する俺。
へぇ。同学年なのか。白崎サン。
って白崎…。
白崎っていえば。
担任に会いに来ていた美人か!
なんだかんだ、これで生徒会役付きに会うのはあと残すところ3人らしい。
あとは会長、副会長、会計。
サボりトライアングル。
会いたくねぇな〜〜〜。
「ってちゃうちゃう。愚痴ってる場合ちゃうかった」
木雨が思い出したように握り拳を作り、ポンっと手を叩いた。
「なんでここ(奴隷の城)にバズがおんの?」
「なんで俺もここ(奴隷の城)に呼ばれたのか知らねぇの。会長からの呼び出しだったんだけど、宗がなんか知ってるっぽい」
「ムロ会長が呼び出しぃ?」
ムロ会長?
「……はい…。実は……」
と、宗が話そうとしたタイミングで効果音の付いた派手な音を立てて入り口が開いた。
「そこからは俺自らが話そう」
「主役は後から来るものだ。それから俺はムロでは無い。氷室だ。」
「げぇ…」
「あわわわ…」
「(顔がうるさいな)」
まだ残っていたクラスメイトの視線から逃れるように、直ぐに準備を終えて教室を飛び出した。
駆け足で生徒会室に向かい、周りに注意しつつ宗から送られてきたラインを確認する。
『ごめんなさい』
『本当にごめんなさい』
『もしかしたら、いや絶対放送があるから』
『僕のせいで会長様が柴君を知っちゃって』
『本当にごめんなさい』
『ごめんなさいごめんなさい本当に…』
で、極め付けに土下座のスタ連。
一体何が……。
放送の原因は宗みたいだが、謝罪もここまでくると俺より哀れに思える。
生徒会室は5階。
許可のない一般生徒はエレベーターが使えないから、息を切らしてやっとのことで生徒会室前に辿り着いた。初めて来たから少し迷ってしまって、放送から結構時間が経っていた。
やべぇ〜〜〜。会長サマに土下座で詫びろとか言われたらどうしよ。別にそういうプライドねぇからするけど全然。穏便に済むなら。
明後日に飛ぶ思考と呼吸を落ち着かせるために深呼吸。吸って。吐く。
よし。
「放送で呼ばれました、2年Aクラスの柴です」
重厚な焦茶色の扉をノックして、声をいつもより張り上げる。
「……………。」
も、返事がない。
無機物だから屍でもないが。
そうだな…。取り敢えず中を少し覗いて、それからどうするか考えるか。重い扉を上半身ごと力を掛けて押し開いた。
静かな中は、想像通りの豪華絢爛な部屋だった。
壁には歴代生徒会の先輩方がそれぞれ飾っていったのだろう、高そうな額に収められた趣向の違う絵画が大小様々に掛けられている。
奥の窓辺には、外からの自然光で色鮮やかにに光る花瓶。その花瓶には、こまめに手入れされているのだろうとひと目で分かる、生けられた綺麗な花が。
天井からは、金持ちの自宅紹介で玄関によく目にするなんかキラキラしてる照明。
奥の紺色で金の刺繍が織りなされたカーテンが開いた窓辺の前には、一際高そうなアンティーク系の机が。上には書類と筆記具など様々な物が置いてあるが、目を惹いたのは、光を浴びて煌めく、"生徒会長 氷室俊也"と書かれている黒の机上名刺。
その前に向かい合った机が3組あるが、机上名刺は会長しか見当たらなかった。
そして資材室とプレートが付いた部屋が1つ。扉の閉まった小さなガラスからは明かりは見えず、誰も居ないようだった。
豪華さは違えど、部屋の作りは風紀室と大体同じようだ。
つい先日風紀室にお邪魔したように、生徒会室にも、すぐ入口の手前側に談話用であろう向かい合ったソファー。部屋一面に敷かれたフカフカの絨毯から伸びたソファーの脚には傷一つ見えない。
そして、扉から顔を覗かせたそんな俺の目の前には
フカフカの絨毯の上で正座をして涙目で俺を見上げる、宗。
戸惑う俺。
「……………。」
「……ぅ…………。」
目があったまま、ゆっくりと頭が下にさがっていった。
「すみませんでした…!!!」
お手本のような綺麗な土下座だった。
扉をノックする直前に浮かんだ土下座の執行者は何故か宗になった。
いやいやいや待て、どうしてそうなった。
一連の動作を見ているだけだったが、すぐに慌てて中に入り、宗の体を起こさせる。
「すみません…ほんと…僕のせいで…」
「な?落ち着こ?そもそも俺まだ何にも知らねえし」
そうなんだよ。何も知らねえのに謝られても困る。
ってその俺を呼んだ当事者で、この部屋の主は何故か居ない。
「謝るのは置いといて、生徒会長は?」
体を起こしたものの、依然と綺麗な正座のままの宗に聞く。
「あ…柴君を呼んだ後に携帯見て、すぐ出ていっちゃったみたい」
「何故。」
「ごっごめん!僕が引き止めればよかったのに…!また僕のせいで柴君に迷惑を…!」
何処ぞのサラリーマンみたくなってしまった宗。
お前のせいじゃないんだ宗。
しゃがんで頭を抱えているのを宗が心配そうに見守っていた時。
資材室から物音が聞こえた。
それからすぐに扉が開く。
「なんや、やんや騒いでどないしたん宗ちゃん…………
って、バズ……?」
「…おひさー……」
寝起きの顔で暗い部屋から出てきたのは、ケイドロ以来に会う木雨だった。たまにラインはしてるけど。
眠そうな目が見開き、あだ名を呼んだと同時に唖然とした顔で手をぷらぷらと振ってきたので、それに倣って返しながら挨拶をした。
「やーん、おひさ〜10年振りちゃう!?
……やなくて、えっ?ほんまなんでバズおんの」
適当なボケを挟んでこっちに寄ってきた木雨。途中地面に置いてあった段ボールに蹴躓いて声を漏らしつつ、俺の隣に。
「なになに?夢?きれ〜に正座しとる宗ちゃんも夢の宗ちゃん?俺の本体寝てんの?」
「本体ってなんだよ。スタンドかよ」
「そのツッコミはバズや〜〜!!」
どういう判断だよ。あとスタンド知ってんのかよ。
「木雨はなんで?サボり?」
「ちゃうっっっわ!!!!!」
うるせ。
力一杯ツッコまれ、声のボリュームに顔を顰めた。
「ほら、見て?目の下のこのクマぁ!」
指を差して見せてくるのに頷いた。
「かわいい青色してんな」
「うふふ、せやろ〜。ちゃうねん!!!!」
はい。
「ちゃうねん!!て!!!!!」
はい。
間を空けて2度言わなくても。
大事なことなので?
ふざけたのはさておき。まぁ、忙しいんだろうなということは部屋を覗いた時に気付いていた。会長の机の上はさほど散らかっていないものの、向かい合っている6つの机の上は散らかった書類でいっぱいだったから。
ちらりと書類に目を向けたのを見て木雨が話す。
「ここ1ヶ月くらい、アイツら皆どっか遊びに行きよってな…。今までこんな書類溜まるの見たことないねんけど…」
皆?ガチで?
引いた顔をした俺を見て、慌てて宗が口を開いた。
「あっ、皆って言ってもね、書記の白崎君はちゃんと仕事してるんだよ。今は職員室の方に出てるんだけど」
つまり…。
「つまり…実質3人で生徒会を運用してんの…?」
「い、今はね…」
ヤベー……。
「ほんまありえへんやろ?!??もう俺2年しか信じられへん!!!!」
うわーんと泣きまねをする木雨。
を無視する俺。
へぇ。同学年なのか。白崎サン。
って白崎…。
白崎っていえば。
担任に会いに来ていた美人か!
なんだかんだ、これで生徒会役付きに会うのはあと残すところ3人らしい。
あとは会長、副会長、会計。
サボりトライアングル。
会いたくねぇな〜〜〜。
「ってちゃうちゃう。愚痴ってる場合ちゃうかった」
木雨が思い出したように握り拳を作り、ポンっと手を叩いた。
「なんでここ(奴隷の城)にバズがおんの?」
「なんで俺もここ(奴隷の城)に呼ばれたのか知らねぇの。会長からの呼び出しだったんだけど、宗がなんか知ってるっぽい」
「ムロ会長が呼び出しぃ?」
ムロ会長?
「……はい…。実は……」
と、宗が話そうとしたタイミングで効果音の付いた派手な音を立てて入り口が開いた。
「そこからは俺自らが話そう」
「主役は後から来るものだ。それから俺はムロでは無い。氷室だ。」
「げぇ…」
「あわわわ…」
「(顔がうるさいな)」