中間テストですよ

お疲れ様でした!!!



「ッッおわっっっっっ…………ったーーーーーー!!!!!!!」
「いえーーーーーい!!!!!!」
「お疲れ〜」


中間試験は計4日で終わり、最後の試験が終わってすぐ、クラスは浮かれムードに入った。すました様に言ったが、俺も授業が早く終わる今日は何しようかソワソワする。

担任からはクラスに労いを送り、簡潔にHRを終わらせてくれて今日の授業は解散になった。勿論最後に「早く終わるからって外で問題を起こすなよ」と釘を刺されたが。

燃え尽きてまだ机で液状化している上野を見て遠坂と笑っていると、小森がバタバタと慌ただしげに荷造りを。

「なんかあんの?」
「今日から次のライブに向けての準備があるの!急がないと!」
「ライブ」
「ライブ………?」

なんの……?

……生徒会………?


「へぇ…………。」
「じゃ!また明日!上野くんお疲れ!」
ヘイヘイ。パンッ。俺らは。パンッ。

早々にクラスを後にした小森の後ろ姿に3人で、また明日ー。と声を掛けた。

「上野も元気だせよ、今日からまた部活なんだろ?」
「そうだ!!!そうなの!!!やったーー!!!」

急に元気を出して机から起き上がった上野。
今度は上野が慌ただしく準備を始める番だった。

体操着忘れた!?!?!と言って、挨拶も忘れ教室を出ていった嵐のような奴に、遠坂と顔を見合わせた。

「あははっ、じゃあ僕らも帰ろっか」
「だな」


遠坂は今日何すんの?と話していると、ラインに通知が来たのが見えた。
なんだ?
相手は珍しく惶からで、

『悪い』
『風紀室にこれから来れるか』

だった。

一体どういうことなのか返信をしようとすると、横から見ていた遠坂が「取り敢えず行ってみない?」と言ってきた。いや見るなよ。困るもんでもないから良いけど。

というか付いてくんのかい。

遠坂も行くけど良い?と書こうとして、面倒になったからやめた。遠坂が言うように取り敢えず行ってみるか。激しく行きたくないが。




と、完全に惶が隠れ風紀だということを忘れて遠坂を風紀に連れて行ってしまった。


「………んでテメェもいんだよ」
「や……ごめん…俺がうっかり……。」
「久しぶりだね、狼谷君!」

ばったり部屋の前で会った惶に睨まれてから、うっかりしてたことを思い出して顔を逸らした。


まだ惶が風紀とか言ってないし、まだバレてないなら2人だけで中入るでも良いんじゃないかな〜〜と挙手しようとすると、突然扉が勢いよく開いた。


「おい。狼谷とその同室者ですね?居るなら早く入ってくれませんか。こちらも暇じゃないので」

制服をきっちり着て、髪も綺麗にセットしているノンフレームの眼鏡を掛けたイケメン。

「風紀委員長…」
だった。

遠坂を見て驚いた様に目を丸くした委員長だが、すぐに元の冷めた顔に戻した。
「まぁ問題はないか。……3人とも中に入ってください」
惶は納得していないようだったが、無理に反発することもなく3人で順に中に入った。


中に入るのは初めてで、目だけで部屋の中を観察する。
職員室くらいで結構広い。誰も居ないからよりそう見えるのか?
綺麗に整頓されているが、物が多いからかごちゃごちゃした印象を持った。合わさった机が幾つかあり、奥の少し離れたところに風紀委員長、と書かれたプレートが置いてあった。
他にも部屋があるようで、扉には"談話室"とある。

入ることは無いと思ってたのに、ついに入ってしまった。
去年制裁に遭った関係で風紀とは少し縁がある。役付きは顔が良いから、委員長とは会いたく無かった。

こうなったらもうどうしようもねぇけど。

手前にある談話用の向かい合ったソファーと、間に机がある場所に促され、俺達は手前側のソファーに座る。委員長はすぐ近くにあった机に適当に腰掛けた。
結構雑なんすね。とは思うだけ。

「では早速。現在、君には狼谷君の同室者になってくれていますが、つい先日空き部屋ができました。今まで学校の不手際で面倒をかけましたね」
「そう、なんですか…」
驚く。

そうだった。
あまりに馴染んで忘れていた。
何度も期間限定だと、言い聞かせてきたのに。
急なことで頭がまわらない。
惶の方を見ると、先に聞いていた様で特に驚きもせず腕を組んで何も言わなかった。

なんだよ。
お前は何も思わねぇのかよ。
それなりに、楽しかったのは俺だけかよ。

八つ当たりに近い感情が胸に迫り上がった。
これまでも本当は面倒だったのかもしれない。

だから、嫌なんだよ。
こういうのは。

一度目を瞑って言いたいもやもやを抑え込み、承諾の意を伝えようとした時。
声があがった。

「それでですね」
「えっ、はい」
委員長だ。
パッと顔をあげて思わず返事を返した。

「君には狼谷君の事情も知っていると聞き及んでいますし、君とは違い彼が1人部屋ということも正直どうかと学校側の意見もあります」
「はい…?」
「こいつが嫌じゃなければ、」
「おい」
「黙ってろ。…いかがでしょう?このままでいくというのは」
にこりと胡散臭い委員長の顔を見て茫然と口を動かした。
「えっと、は…い……。それは…全然……」


「……いいのか。本当に」
あ。不安そう。

少しずつ無愛想ながらも表情が分かるようになって、今の惶の言いたいことが分かった。

嫌じゃ、なかったのか。

そっか。


よかった。


「いいよ、今後もよろしく。惶」
笑い掛けた俺を見て少し目を見開く惶。安心して目が潤んでしまったのがバレたか?嫌だな。
「…よろしく。柚木」

「はいはい青春の時間は終わりですよ」
パンパンと手を叩いて委員長が早々に空気をブチ破った。空気クラッシャーかよ。ありがたいけど。

「ところでこんなに仲が良くなっていたとは聞いていませんでしたね。下の名前で呼び合ってるんですか?」
「るせェな…」
「彼とここまで普通にしてるなんて中々君も…………


君、名前は」

ギクゥ

「…柚木です。」
「苗字」
「………………。」
「………………………。」

「……柴です……。」
圧に負けた。
これだから俺は……。


「柴柚木、しばゆずき、しば…しば……」
口の中で音を確かめる様に何度も俺の名前を声に出す委員長。
何故。

……そんなわけ。
だって、ほら、問題児この学校多いし。
去年ちょっといざこざあったくらいで覚えてたり、
「思い出しました。」
思い出しちゃった?!!!!!

俺もう嫌!!!この流れ!!!!!

「はい、はい。成る程、君でしたか。金的潰し事件の」
「潰して無いです」
「潰す気満々でしたよね?」

「………少し。」

くっそ。
嬉しそうに何度も頷く委員長。
を憎々しく思う俺。
と、訝しげに見る惶。
と、我関せず普段通りにこやかな遠坂。


いや、やっぱなんでここにいんの遠坂お前。


「いやいや〜〜私会いたかったんですよね。あの時の君は私が来るよりも先に颯爽と帰った、と聞き及んだものですから」
「そうですか。特に怪我とかしてなかったので」
「あれ?そういえば君、治りかけですが怪我してますよね?どうされたんですか?」
「これはちょっと前に事故っただけです」
「ちょっと前っていつですかね?どのような事故?」
こわいこわいこわい!!
何?!??!なんでこんな詰めてくんの!?!!

「まぁいいでしょう。今は。」
今は。

「ところで柴君」
「………はい」
レンズが蛍光灯に反射して、そこから見える鋭い瞳を見て、悪寒が走る。


「風紀委員になりませんか」


「は?」





「は?」
「ハ?」
「ニコッ?」
「ニコニコッ」
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