はじめまして

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最初の方に学校の説明ぶん投げてしまったけど、一応俺からもざっくり説明をしておく。遠坂に。



さて、俺の通ってる高校は金持ちの王道学校。金望(カネモチ)高校。そのままじゃねえか?それな。ネーミングセンス皆無よな。


山奥の全寮制のゴリラ高もとい男子校。
街までのバスは1日に一本だけ。
って言っても30分かければ街に徒歩で着くから、生徒は大抵知ってる抜け穴を使って学校を抜け出します。俺もたまに使ってる。内緒だけど。


聞いてない?上野は基本放課後部活だろうが。


偏差値で言えば実はそこまで高いわけじゃなく、68くらい。金積めば入れるって話もあるし、まず俺が入れるくらいだしな。卒業すれば箔がつくし、そら親も必死になるわ。




次にクラスについてだけど、

最高| Sクラス(大金持ちか天才どもの集い)
2番 | Aクラス(そこそこの金持ちと特待生他)
3番 | Bクラス(特待生と個人経営の所他)
4番 | Cクラス(頭が悪く金を積みました他)
最低| Zクラス(頭の有無に関わらず大金を積んだか、問題児)

ざっくりいうとこんな感じ。Zクラス以外には金持ちがまばらに振り分けられているらしい。

あとは、
9割がゲイ、バイ
生徒会は顔面で成り立ってる
顔が良い生徒はファンクラブ、もとい親衛隊がいる。
先生は原則禁止されているが、あったりなかったりらしい
ぐらいか。


紙に簡単な図等を書いて出来る限り簡潔に説明したけど、何か質問は?と聞いておく。


「うん、有難う。ある程度聞いてた。」
ならよかった、とうんうん頷く。
「それで質問なんだけど、」
笑顔で促す。
「なんでこんな急に今話し出したの?」


俺の笑顔が固まる。

それはね、



あのチンピラ教師に当てられまくったせいで今刺すような視線を全身に浴びてるからだよ!!!!


そう、つまり、お決まりだがあんなチンピラにもこっそりとファンクラブがある、らしい。らしいって事は、上野からの情報を鵜呑みにすると、だ。
さっきの説明でもあったように原則禁止の為、見つからないようこっそり活動しているって噂があるようだ。


勿論上野にもある。
色々あったのち、何故か上野の親衛隊と仲良くなってる。今はこの話割愛。



正直なところ俺は姉ちゃんみたく腐女子じゃねえから男同士の惚れた腫れたなんてくそどうでもいい。巻き込まないで欲しいの一択。


遠坂には悪いが視線に疲れたから一言、さっきの担任のせい、と伝えると成る程と苦笑いで頷いてくれた。
察しが良くて助かる。









1人になると、より視線が集まっているのを感じる。
視線が集中しているのが分かり、自然に顔が赤くなっていく。昔からそうだった。世に言う多分赤面症。

2人はあの説明の後、チンピラ担任が言い忘れてた、と教室に戻ってきて2人を職員室に連れて行った。
遠坂には教科書、上野には新学期早々寝ていた罰で課題を出すらしい。
上野は付いて来なよって言ってくれたけど、先生に絡まれるのも嫌だし暇しそうって理由で見送った。

でも行けば良かったと今更思う。
視線が痛い。


去年上野と居たから視線には慣れてもおかしくないが、未だ慣れず治らない。
俺のそんな姿を見て俺に届くような声量で話す声が教室から聞こえる。

「きも、」

「顔真っ赤になんのマジなんなの」

「図体デカイくせに女々しすぎ」



うるせえ。
陰キャの俺を見てんじゃねえよ。
全部、言われなくても俺でもわかってる。自分でも嫌で堪らない。つーか女々しいって単語はお前らが1番似合ってるじゃねえかよ。

あぁくそ、春休みの間に髪切ったの、今更後悔。そう思いながら出来る限り顔を隠そうと前髪を手櫛で前にかき集め、机に顔を伏せて目を固く閉じた。
耳栓、上野から奪い忘れてた…。








………早く2人とも帰ってこねえかな……。




バシン!!!


「えっっっっ痛!!?!え、な、え何?!!」
「うっさい柴犬!黙ってさっきの教えて!」
「おま、だから柴犬じゃ…!」
「いいからさっきの!」
「さっきのって何だよ?!」
「あんたが2回目に答えた問題!!」
「は、ぁ……?」


後頭部に激痛が走ったと思えば前に座っているチワワだった。しかも体育館で隣だったうるさいチワワ。声だけでなくえげつないパワーも持ちなんですね。


そういえば、とチワワの言葉に思考を巡らせる。
確かに2問目は前回の復習だからと言って説明も軽く終わってた。……けど、

「なんでおれ…………?」
友達いっぱいいるだろうに。

「………………………上野君の親衛隊の子があんたが教えるの上手いって聞いたから。」

成る程……?
確かに、数回だけ上野の親衛隊の子に教えた事あったな。
それをクラスのチワワが知ってるとは。恐るべしチワワネットワーク。

にしても、そっぽ向いて物凄い嫌々なのが伝わるのまじで、なんかツボ。すっっごい嫌そう。
さっきまでの嫌な感情が散り、思わず笑う。
あーー何こいつ、ほんと、誰だったっけ。不審げな顔が笑いを助長する。
波が収まり、一息ついたところで聞いた。

「はぁ……で、問題どれだっけ?」

期待してなかったのか、半目だった目が大きく開く。
数度瞬きをしたチワワは、さっきまでずっと考えてたのか広げたままの教科書を俺の机に素早く持ってきた。
ごちゃごちゃ一杯計算式が書かれてある。一生懸命さが伝わり、可愛いなと思わず思った。

「…これ。さっさと教えろ。…………僕が理解できなかったらこれで頭をぶっ叩くからね」

鞄に手を突っ込んで取り出したのは、うちわ



鉄製の。



「誠心誠意全力で教えさせて頂きます」



いや全然可愛くねえ!!

恐らく折れないように特注で作ったんだろう。会長様と彫られた字が見えた。何?ライブでもあんの生徒会?ガチ勢にも程がある。
腕の筋肉も凄いのだろう。通りでさっき俺を起こす時の衝撃が半端じゃなかった訳だ。
バレー部なら優秀なアタッカー狙えるな。背が低くなければ。


ガチで痛かった。

2人が帰ってくるまでの間のいい暇つぶしになりそうで助かる。





「嘘だろ……お前ここも分からなかったの……?」
「………………。」
「ごめんって違う違う悪かった軽はずみに申し訳ない、馬鹿にしたわけじゃ、ごめんって以後気を付けますだからその鞄から手を抜いて欲しいな……!!」
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