中間テストですよ
美月
ってか明日じゃねえや。
明日土曜じゃねえか。上野め。
脳内で、先に言ったのは柴じゃん理不尽!と騒ぐ上野を黙殺。
時折床を擦るスリッパの音を聞きながらさっきまでのことを思い返していた。
上野は明日も学校嫌じゃねぇの本当に凄い。
俺は明日何しよう。
とりあえず、また姉ちゃんから催促のラインが来る前にさらっとBLのやつ見て送り返すか〜。あとは見逃してた冬アニメ見て回ってー、ゲームのイベント走る。
と、決めたところで目的地に着いた。
中から声がしないことをこっそり確認して、ノックする。
何故なら、誰かと話してる時に鉢合わせるととても気不味い気持ちになるから。
「どーぞー」
「…失礼しまーす」
ガラッと開けると、予想通り1人。よかった。
整頓された部屋の窓辺の机。今日受け持ったクラスのプリントの採点をしている様だった。煙草は吸ってない。
匂いは残ってるから、少し前までは吸ってたのかもしれない。
居たのは担任。
この教室、というか部屋は、担任の占拠している数学準備室だ。
「ん?わんちゃんか。学習係は勤勉だなー」
「まだ無いの知ってるでしょ」
「ははっ。まぁちょっと待て、そこ座ってろ」
「いやこれ返す、」
「はいはい」
「だけ、」
「グッボーイグッボーイ」
「だから……」
聞く気ねえ。挙句に犬扱いしやがって。
一度確認でこちらを向いた後、すぐにまた続きをし始めた先生は、空いた手でぶらぶらとソファーの方を指差していた。
紺色のブランケットが背もたれに掛けられたそれは、茶色の合皮で2人掛けのものだった。2人掛けといっても、今俺が座ってもだいぶ余裕があるから詰めれば3人は座れるゆったり仕様。
そういやこれ備品?私物????
聞きたいようなそうでもないような。
何にせよ、座り心地は良い。
ブランケットがあるのは、もしかしたら仮眠をここで取ったり?たまにお邪魔した時に寝起きの顔をしていたのは机で寝たわけじゃかったのかもしれない。
聖職者お疲れ様です。
……聖職者???
ひと段落ついたらしい先生がペンを置いて立ち上がる。向かった先は棚で、手元からは陶器の触れ合うガチャリという音が鳴っていた。
「インスタントしかないけどコーヒー、紅茶どっちだー?」
いや長居する気ねえけど。
断ろうとするも、湯沸かしポットを付けてお湯を沸かし始めてしまった手前、断り辛くなり「コーヒーで」と言った。
俺の目の前の机にコップとコーヒーフレッシュとスティックシュガーを置いて、先生は俺の座っているソファーの肘掛けに腰を置いた。
「それで?」
「…これです」
さっきから聞こうとしなかったじゃねえか、と、言いたいのを抑え、ずっと手に持っていた袋を差し出す。
中身は勿論、歓迎会の時に遠坂が持ってきてくれたクロックス。
あの後、俺の靴は隠れ風紀の惶が回収して持って帰ってきてくれたから無事だ。あれ以外ちゃんとしたの持ってないから、惶にはくっそ感謝した。という余談。
「ベタベタの罠に靴奪われたので、あの時は助かりました。これ、ありがとうございました」
「あいよー」
あっさりと受け取った袋をそのまま適当に床に置いてこっちを見る。
と、湯が沸いた音が鳴り、そのまま立ち上がってポットを持って帰ってきた。
「それで?」
お湯をコップに注ぎながら、先程と同じ問いを繰り返す先生。
コーヒーの香りが煙草の匂いと交じった。
「…何が」
先生の手元に目を落とす。俺の用事は済んだから、これ飲んだらすぐ帰ろ。と思いつつそう答えた。
俺の目の前にカップを置き、自分の分を手に持ったままさっきの場所に戻った先生は、自身の顔に手を指差した。
「それ。」
「……あぁ。これですか?」
どうやら俺の顔の傷のことを聞きたかったらしい。もう結構治りかけで、アザも黄緑色になっている。
週明けに言ったのにまだ聞きたいのか。それとも忘れたのかおっさん。耄碌してんな。
「だから、階段から落ちただけですって。自業自得…」
「んな話誰が信じんだよ」
「……上野と伊藤」
「……アイツらは出すなー…」
脱力する先生に笑う。あいつら先生からもそういう扱い?
…流石に先生にはバレてるらしい。
そりゃそうだ。
先生が口を重く開いた。
「…去年と同じじゃ、」
「違いますよ」
食い気味に遮った。
違う。
去年の制裁とは全然違う。
いつもの眉間の皺すらなく、こちらを真剣に見る先生を真っ直ぐ見返す。
「…これは、俺の自業自得なんですよ」
自業自得で自己満足。あの時、あの転校生の手助けをしてようがしてまいが、結果的に俺の自己満足。この怪我も、俺が選んだただの結果に過ぎない。
「…そう、か」
此方に伸ばす手を避けずに、顔に触れる大きな掌を目を少し伏せてそのまま受け入れた。
治りかけの跡を撫でる手が擽ったくて先生に目を向けると、いつもの眉に皺を寄せた先生が居た。
どうやら、伝えたいことは分かってくれたようだった。
「お前さー………保護者の方に俺どう言やいいんだよこれー」
「言わないでいいですよ!!」
姉ちゃんに言うとか、恐ろしいことを…!
血の気の多いあの人なら理由はどうあれ殴り込みにきそう。俺に対し含め。
ペチペチと叩きだした手が鬱陶しくて払う。
もうだいぶ冷めて飲みやすくなっているコーヒーが目に入り、砂糖とミルクを入れて一口飲んだ。
うま。
「これなんですか?美味しいですね」
「知らね。貰いもんだからなー」
「貢ぎ物ですか」
「………お前な…」
「ぶはっ!」
嫌〜な顔をする先生に思わず吹き出してしまった。
手に持ったままのコップが揺れる。
おっと。
コーヒー溢れるかと、あぶねぇ〜。
プチ真面目な話も済み、そのまま適当に雑談しているとすぐコーヒーも飲み終えた。
空になったコップをどうしよう、と手で持ち困ってるのが分かった先生が「帰りにまとめて洗うからそこ置いとけ」と言ってくれた。
その言葉に甘えてコップを机の上に置き、鞄を持って立ち上がる。
窓の外は、来る時は橙色だったのにもう随分と色が無くなっている。
思っていたより長居してしまっていたらしい。
「休みにハメ外して問題起こすなよー」
「先生に言われたくはない」
「あぁ?俺は……俺は………うん」
嘘でもするわけないとか言えよ。
「あとクラスでの問題とかな。ほら、俺担任だしいつでも言えよ。面倒は嫌だが」
話すり替えんなよ。
「担任の発言としてどうかと」
「こんな担任いてもいい」
「凄い自己肯定」
この自己肯定感は見習うべきかもしれない。
文鳥の爪ひと欠け分くらいは。
冷めた目で担任を見ていると、ドアにノックが。こんな時間に?他の先生か?
「美月先生、白崎です。書類を確認してほしくて伺いました。今お時間大丈夫でしょうか」
はきはきとしていて落ち着いた声。
どうやら生徒っぽい。
丁度いいと思い、2人してドアの方を見ていたが、振り向いて先生に挨拶をした。
「じゃあ俺はこれで。靴と、あとコーヒーご馳走様でした」
「おー。じゃあ気をつけて真っ直ぐおうちに帰るんだぞー」
「当たり前に寮だし子供じゃあるまいし」
「フッ……高校生は"子供"なんだろ?」
「……………。」
………….教室でのこと聞いてたのか。
嫌な大人〜〜。
馬鹿にしたような顔で見てくる先生が憎らしい。
無言のままドアの方に向かい、戸に手を掛けてから先生に顔だけ向けた。
「…校内で煙草は控えてくださいね。大人なんですから、
千桜ちゃんせーんせ」
そう言って、部屋から出た。
生徒から呼ばれると必ず拒否る呼ばれ方。
千桜(チオ)ちゃん。
先生の下の名前だ。
嫌がらせで呼んでやった。
幼稚?
だって、俺は"子供"なので?
俺が開いたドアから、外に立っていた生徒がそのまま入っていった。
すれ違って会釈を軽くした程度の顔合わせだったが……
いや……すげえ美人だった。
ボブほどの長さのサラサラで真っ黒な髪。と対照的な真っ白な肌に、伏せた目の縁には長いまつ毛。何も塗って無さそうなのに唇は薄い綺麗な朱色で目を引いた。
あとすっげえいい匂いした。
…変態くさい。
やっぱ今の無し。
下駄箱に向かいつつさっきの美人が誰なのか頭を傾げていたら、担任の部屋から音が漏れて声が聞こえた。
「…小悪魔わ…ゃん……」
「頭を抱えてどうしたんです?犬?ですか?動画でも見てたので?ところで、本題の此方です」
「ぁ……そう……は……お…生徒会…好きに……し…ろ……だ…」
「生徒会顧問なんですから一応」
「ぉ………な………」
故意に盗み聞きした気がして、少し罪悪感が湧く。
白崎さんは生徒会らしい。
通りで群を抜く美人さ、なわけだ。
にしても白崎さんの声があまりにはきはきして通るから会話筒抜けだぞ。大丈夫かあの部屋のプライバシー。
今度またお邪魔する機会あったら声を潜めることに決めた。
離れるにつれ、次第に声は聞こえなくなり、俺は罪悪感から解放された。
「さっきの彼?あぁ、俺の受け持つクラスの愛犬」
「……犯罪だけはやめてくださいね。由緒あるこの学校で逮捕報道は…」
「真面目なお前に言うべきじゃなかったな〜……えっその目マジ?」
「いやー、先生もやる時はちゃんと仕事やるんだな。生徒会顧問だったとは」
ってか明日じゃねえや。
明日土曜じゃねえか。上野め。
脳内で、先に言ったのは柴じゃん理不尽!と騒ぐ上野を黙殺。
時折床を擦るスリッパの音を聞きながらさっきまでのことを思い返していた。
上野は明日も学校嫌じゃねぇの本当に凄い。
俺は明日何しよう。
とりあえず、また姉ちゃんから催促のラインが来る前にさらっとBLのやつ見て送り返すか〜。あとは見逃してた冬アニメ見て回ってー、ゲームのイベント走る。
と、決めたところで目的地に着いた。
中から声がしないことをこっそり確認して、ノックする。
何故なら、誰かと話してる時に鉢合わせるととても気不味い気持ちになるから。
「どーぞー」
「…失礼しまーす」
ガラッと開けると、予想通り1人。よかった。
整頓された部屋の窓辺の机。今日受け持ったクラスのプリントの採点をしている様だった。煙草は吸ってない。
匂いは残ってるから、少し前までは吸ってたのかもしれない。
居たのは担任。
この教室、というか部屋は、担任の占拠している数学準備室だ。
「ん?わんちゃんか。学習係は勤勉だなー」
「まだ無いの知ってるでしょ」
「ははっ。まぁちょっと待て、そこ座ってろ」
「いやこれ返す、」
「はいはい」
「だけ、」
「グッボーイグッボーイ」
「だから……」
聞く気ねえ。挙句に犬扱いしやがって。
一度確認でこちらを向いた後、すぐにまた続きをし始めた先生は、空いた手でぶらぶらとソファーの方を指差していた。
紺色のブランケットが背もたれに掛けられたそれは、茶色の合皮で2人掛けのものだった。2人掛けといっても、今俺が座ってもだいぶ余裕があるから詰めれば3人は座れるゆったり仕様。
そういやこれ備品?私物????
聞きたいようなそうでもないような。
何にせよ、座り心地は良い。
ブランケットがあるのは、もしかしたら仮眠をここで取ったり?たまにお邪魔した時に寝起きの顔をしていたのは机で寝たわけじゃかったのかもしれない。
聖職者お疲れ様です。
……聖職者???
ひと段落ついたらしい先生がペンを置いて立ち上がる。向かった先は棚で、手元からは陶器の触れ合うガチャリという音が鳴っていた。
「インスタントしかないけどコーヒー、紅茶どっちだー?」
いや長居する気ねえけど。
断ろうとするも、湯沸かしポットを付けてお湯を沸かし始めてしまった手前、断り辛くなり「コーヒーで」と言った。
俺の目の前の机にコップとコーヒーフレッシュとスティックシュガーを置いて、先生は俺の座っているソファーの肘掛けに腰を置いた。
「それで?」
「…これです」
さっきから聞こうとしなかったじゃねえか、と、言いたいのを抑え、ずっと手に持っていた袋を差し出す。
中身は勿論、歓迎会の時に遠坂が持ってきてくれたクロックス。
あの後、俺の靴は隠れ風紀の惶が回収して持って帰ってきてくれたから無事だ。あれ以外ちゃんとしたの持ってないから、惶にはくっそ感謝した。という余談。
「ベタベタの罠に靴奪われたので、あの時は助かりました。これ、ありがとうございました」
「あいよー」
あっさりと受け取った袋をそのまま適当に床に置いてこっちを見る。
と、湯が沸いた音が鳴り、そのまま立ち上がってポットを持って帰ってきた。
「それで?」
お湯をコップに注ぎながら、先程と同じ問いを繰り返す先生。
コーヒーの香りが煙草の匂いと交じった。
「…何が」
先生の手元に目を落とす。俺の用事は済んだから、これ飲んだらすぐ帰ろ。と思いつつそう答えた。
俺の目の前にカップを置き、自分の分を手に持ったままさっきの場所に戻った先生は、自身の顔に手を指差した。
「それ。」
「……あぁ。これですか?」
どうやら俺の顔の傷のことを聞きたかったらしい。もう結構治りかけで、アザも黄緑色になっている。
週明けに言ったのにまだ聞きたいのか。それとも忘れたのかおっさん。耄碌してんな。
「だから、階段から落ちただけですって。自業自得…」
「んな話誰が信じんだよ」
「……上野と伊藤」
「……アイツらは出すなー…」
脱力する先生に笑う。あいつら先生からもそういう扱い?
…流石に先生にはバレてるらしい。
そりゃそうだ。
先生が口を重く開いた。
「…去年と同じじゃ、」
「違いますよ」
食い気味に遮った。
違う。
去年の制裁とは全然違う。
いつもの眉間の皺すらなく、こちらを真剣に見る先生を真っ直ぐ見返す。
「…これは、俺の自業自得なんですよ」
自業自得で自己満足。あの時、あの転校生の手助けをしてようがしてまいが、結果的に俺の自己満足。この怪我も、俺が選んだただの結果に過ぎない。
「…そう、か」
此方に伸ばす手を避けずに、顔に触れる大きな掌を目を少し伏せてそのまま受け入れた。
治りかけの跡を撫でる手が擽ったくて先生に目を向けると、いつもの眉に皺を寄せた先生が居た。
どうやら、伝えたいことは分かってくれたようだった。
「お前さー………保護者の方に俺どう言やいいんだよこれー」
「言わないでいいですよ!!」
姉ちゃんに言うとか、恐ろしいことを…!
血の気の多いあの人なら理由はどうあれ殴り込みにきそう。俺に対し含め。
ペチペチと叩きだした手が鬱陶しくて払う。
もうだいぶ冷めて飲みやすくなっているコーヒーが目に入り、砂糖とミルクを入れて一口飲んだ。
うま。
「これなんですか?美味しいですね」
「知らね。貰いもんだからなー」
「貢ぎ物ですか」
「………お前な…」
「ぶはっ!」
嫌〜な顔をする先生に思わず吹き出してしまった。
手に持ったままのコップが揺れる。
おっと。
コーヒー溢れるかと、あぶねぇ〜。
プチ真面目な話も済み、そのまま適当に雑談しているとすぐコーヒーも飲み終えた。
空になったコップをどうしよう、と手で持ち困ってるのが分かった先生が「帰りにまとめて洗うからそこ置いとけ」と言ってくれた。
その言葉に甘えてコップを机の上に置き、鞄を持って立ち上がる。
窓の外は、来る時は橙色だったのにもう随分と色が無くなっている。
思っていたより長居してしまっていたらしい。
「休みにハメ外して問題起こすなよー」
「先生に言われたくはない」
「あぁ?俺は……俺は………うん」
嘘でもするわけないとか言えよ。
「あとクラスでの問題とかな。ほら、俺担任だしいつでも言えよ。面倒は嫌だが」
話すり替えんなよ。
「担任の発言としてどうかと」
「こんな担任いてもいい」
「凄い自己肯定」
この自己肯定感は見習うべきかもしれない。
文鳥の爪ひと欠け分くらいは。
冷めた目で担任を見ていると、ドアにノックが。こんな時間に?他の先生か?
「美月先生、白崎です。書類を確認してほしくて伺いました。今お時間大丈夫でしょうか」
はきはきとしていて落ち着いた声。
どうやら生徒っぽい。
丁度いいと思い、2人してドアの方を見ていたが、振り向いて先生に挨拶をした。
「じゃあ俺はこれで。靴と、あとコーヒーご馳走様でした」
「おー。じゃあ気をつけて真っ直ぐおうちに帰るんだぞー」
「当たり前に寮だし子供じゃあるまいし」
「フッ……高校生は"子供"なんだろ?」
「……………。」
………….教室でのこと聞いてたのか。
嫌な大人〜〜。
馬鹿にしたような顔で見てくる先生が憎らしい。
無言のままドアの方に向かい、戸に手を掛けてから先生に顔だけ向けた。
「…校内で煙草は控えてくださいね。大人なんですから、
千桜ちゃんせーんせ」
そう言って、部屋から出た。
生徒から呼ばれると必ず拒否る呼ばれ方。
千桜(チオ)ちゃん。
先生の下の名前だ。
嫌がらせで呼んでやった。
幼稚?
だって、俺は"子供"なので?
俺が開いたドアから、外に立っていた生徒がそのまま入っていった。
すれ違って会釈を軽くした程度の顔合わせだったが……
いや……すげえ美人だった。
ボブほどの長さのサラサラで真っ黒な髪。と対照的な真っ白な肌に、伏せた目の縁には長いまつ毛。何も塗って無さそうなのに唇は薄い綺麗な朱色で目を引いた。
あとすっげえいい匂いした。
…変態くさい。
やっぱ今の無し。
下駄箱に向かいつつさっきの美人が誰なのか頭を傾げていたら、担任の部屋から音が漏れて声が聞こえた。
「…小悪魔わ…ゃん……」
「頭を抱えてどうしたんです?犬?ですか?動画でも見てたので?ところで、本題の此方です」
「ぁ……そう……は……お…生徒会…好きに……し…ろ……だ…」
「生徒会顧問なんですから一応」
「ぉ………な………」
故意に盗み聞きした気がして、少し罪悪感が湧く。
白崎さんは生徒会らしい。
通りで群を抜く美人さ、なわけだ。
にしても白崎さんの声があまりにはきはきして通るから会話筒抜けだぞ。大丈夫かあの部屋のプライバシー。
今度またお邪魔する機会あったら声を潜めることに決めた。
離れるにつれ、次第に声は聞こえなくなり、俺は罪悪感から解放された。
「さっきの彼?あぁ、俺の受け持つクラスの愛犬」
「……犯罪だけはやめてくださいね。由緒あるこの学校で逮捕報道は…」
「真面目なお前に言うべきじゃなかったな〜……えっその目マジ?」
「いやー、先生もやる時はちゃんと仕事やるんだな。生徒会顧問だったとは」