中間テストですよ

金玉キラキラ金曜日
※いじめ表現有


休みを満喫した後、憂鬱な登校日を迎えた日


から早3日。

金玉キラキラ金曜日。


「わ〜い明日は練習試合しに行く!土曜!」
「良かったなー」
「良かったねぇ〜」
俺は休みだ。

運動馬鹿の上野が大はしゃぎ。
俺なら休みがないとか萎えるのに流石だ。

「柴、現国の提出物まだだったろ?俺持ってくけど」
「あっマジ?ありがと委員長。助かる」

限りなく羞恥の怪我お披露目登校日から数日経つと、クラスメイトも慣れた様に補助してくれる。愛。特に不便というほどでもないんだけど、優しさが嬉しい。

待って俺も〜!と声を上げる上野に、お前はまだ書けてないだろ、とド直球でぶん殴られしょんぼりするのを遠坂と笑う。


休み明け。
朝から俺の顔に驚くクラスメイトからの心配の声に"階段から落ちた"というお決まりの文句を返しまくった。

2年になってはじめましての人達も話しかけてくれて、クラスの意外な優しさに触れた。
クラスの大体半数くらいの人と話したか?

去年の制裁後のクラスを思い出し、今年も怪我で微妙な空気になって浮くかもしれない、という嫌な予想は杞憂だった。



だが人相悪いな!イメチェン?!と言ってきた馬鹿ゴリラ。
野田な。
覚えたぞ。


それから怪我をして役得だったのは、体育を見学させてもらえてることだ。


お陰で今日は見学常連者達と話すことができた。


今日の体育の授業はバスケ。

去年から同じクラスの地味ーズの飯田と、チーム戦だからどっちが勝つか賭けしようぜって話をしていると、病弱代表貧血体質の石田と、喘息持ちの万年体育見学者儚げ美青年の骨川、捻挫して途中退場の岩田が会話に入ってきた。

岩田が「賭けすんの?俺も混ぜろ混ぜろ」と言い、骨川と石田が「賭けなら多い方が良くない?」と言って参加の挙手。

「じゃあお前らどっちに賭ける?」
適応が早い飯田が聞いた。


ざっくり分けると


上野率いるチワワ多めチーム
vs
サッカー部多めゴリラチーム


ちなみに遠坂はゴリラチーム。
端っこで腕を後ろに回して観戦スタイルだ。
参加しろ。

最も、サッカーの一件で懲りたのかもしれないが。


「正直、上野くんのチームがやっぱ強いよね〜」
現に上野が点を稼ぎまくって10点差リードしている。
やっぱ上野のいるチームかね、賭けるなら。


「けど上野くんは柴くんがいるじゃん」

うん?


「ん?!いや、なん、ちょっっ何が!?」
「だよね〜やっぱり彼氏は応援しないとだもんね」
「しょうがねぇなー」
「まてまてまて」

彼氏?!?
何がなんでそうなる?!

「でも上野のチーム応援してるんでしょ?」
「……それは…まあ…」
「はいはい」
「ちょっといやそれとこれとは」
「じゃあ僕らはあっちのチーム?」
「スルーしないでください」
「当然、柴のカレピなんて目じゃねえ俺のチームが勝ちますわ」

依然とスルーされる中、岩田がフフンとドヤ顔で言った。
のを皆で怪訝そうに見る。

「お前のチーム?」
「戦力外の?」
「岩田くんのチーム?」
「ブロックの拍子に挫いた挙句ブロックできてなかった岩田の?」
「オーバーキル!!!オーバーキル!!!!」

ウワーンと乙女泣きをする岩田をこれ見よがしに弄りまくった。
何が誰がカレピだオラッ!


ってかクラス全体の認識そんなんなってんの?マ?ツラい。


「で、どうする?俺ら」
「俺のチームだろ?」
「いや無いな」
「ない」

満場一致で岩田以外は上野のチームになった。
賭けの物はお菓子に。

「チロルチョコでいいんじゃない?」
可愛いかよ。
「俺牛乳のやつ以外ならなんでも良いぜ!よろしくな!」
馬鹿かよ。

そんなの、
「じゃあ上野のチーム勝ったら、逆に牛乳のやつ買ってやるわ」
「俺も」
「僕も」
「逆に?!なんでそう言うこと言うの!?!なぁ!骨川は違うよな!!!」
「ふふ」
「骨川?!??」


結果、点差は少しずつ開き、余裕で上野のチームが勝った。

おめでとう。

上野と遠坂を見学組で仲良く手を振って出迎え、2人は首を傾げていた。


そして
「待って!!ねぇ!!まじで牛乳のやつしかないじゃん!!!!ねぇ!!!!!」
ハッ。有り難く受け取れ。



そんな感じで若干クラスとも馴染めた。

馴染めた?

怪我の功名。



だが、そりゃあ良いことばかりでは終わらない。



昼休み。

飯も食って、遠坂と上野が別々の用事で教室から出たから俺の席で骨川と岩田と駄弁っていたところ

「おい、小森くんの腰巾着」
「怪我して皆に同情集めて良い気になって調子に乗んなよ」と、クラスのチワワ数人が俺に突っかかってきた。


ん…………?

「ちょっと…」
「君は口出ししないで」
「おいおい何何急に」
「岩は黙ってろ」
「……なんとか言えば?口は動くでしょ?」
「…………………。」




そういや、小森最近話してないな。


庇ってくれる2人を他所に、俺の思考は明後日に飛んでいた。

「この状況でよく無視できるね、耳も遠くなったの?」

背中の痣消すのに、コンシーラーってやつ持ってるなら貸してもらおうとか思ってたのに。休み明け以来、休み時間もいつの間にか居なくなってるし。

「………おい」

いや、まぁ、親衛隊のあれこれと忙しいのかもしれないが。お陰で校内のコンビニで買っちゃったわ。案外高くて驚いた。化粧品高くね?ガチャガチャ回せるじゃねえか。くっ…出費が痛い…。

っていうか、顔すら全然合わせてないよな?
もしや俺の顔が見れないほどヤバいのか?
泣く。

「ちょっと!!」
「うわ、えっ、悪い、何?」

急に胸ぐら掴まれて驚く。
なんだっけ、と周りを意識すると、なんだか不穏な空気になっていた。

骨川と岩田や委員長、最近話すようになったクラスメイト達が心配げにこっちを見ている。

嫌なことに現在、クラスで絶賛注目の的らしい。

あー…やばい。


顔に血が集まるのが分かる。

骨川と岩田はチワワ達に俺から引き離され、お陰で俺の周囲は3人のチワワで囲まれていた。

背が俺より全然下だから威圧感も怖さも何もないが。

とは言え……………困る。

今までの対処法は、相手が鎮火して立ち去るまで待つか、逃げるかの2択のみ。

現状どちらもできそうも無い。

何故か怒ってるチワワ達は俺が何かアクションを起こすのを待っている様子だった。

なんだ。その、分かんねえけど取り敢えず謝っておこう。

「ええと、その、すいません」
「謝って終わると思ってんの?!」
火に油。
選択肢イベントで好感度下がるやつ。

駄目だったか。


なんて。
内心 余裕ぶってはいるものの。

実際はコイキングにも劣らない無力なやつになっていた。
今俺が出来ていることは、閉口して視線を右往左往することだけだ。
まだはねるが出来るだけコイキングの方がマシか。


「ずっと不快だったんだよね、上野くんにも媚びて」
「ガリ勉だけが取り柄の隠キャオタクは付き合う奴考えろよ」
「顔面見たことある?」
「上野くんや骨川くん達が話すのは優しいからだけって分かんないの?」


容赦ねぇな。

でも言い返せる答えも持ち合わせていない。
ただ、"媚びてはない"それだけ言おうと口を開くと視界が滲んだ。


あー…。
いつの間にここまで。


「ハッ。何?泣くの?泣きなよ」
「雑魚すぎて笑うんだけど」
「泣ーけ!泣ーけ!」


クラス中の視線を浴びてるなか、思考が鈍って何も言い返せないもどかしさと悔しさで頭が熱い。

感情と思考は分離していて、あと少しで塩水が目から出そうだな、とも考えていた。

目を潰してでも泣きたくないな。

「そんなんだから小森くんにも見限られるんだよ」


「……………。」



それは……、

駄目なやつ。


さっき考えそうになっただけに、視界が張り詰め、頭が真っ白になった。

耳障りな合唱だけが無意味に耳を通り抜けていた。


しんどい。




「委員長…!はやく先生呼んでよ…!」
「もう呼んだってば…!」
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