新入生歓迎会するんだってよ
ただいま
腹一杯でもう食えねぇ。
吐きそう。
寮のソファーにだらしなく身を預けた。
あれから女装コンテストが閉会し、生徒会長の挨拶があった後、待ちに待った3学年合同交流パーティーという名のタダ飯イベントが始まった。去年は遠慮してあまり食べられなかった。だから今年こそは、と食べまくったら案の定、腹がはち切れそうに。
怪我で全身が重いこともあり、警察と泥棒の景品授与者が発表される3時より前に体育館の出入口にいた先生に寮に帰してもらえた。
公的に許されたサボり万歳。
遠坂と上野は、俺が1人で帰るって言ったから体育館で景品発表待ちをしている。上野にラインで恨めしげなスタンプを連投された。
おい。
戦果良いし景品貰えるだろうに。
まったく、サボりはよくないなぁ。
にんまり笑いながら、"ぴえん"の絵文字だけ送って煽る。
上野が"ぷんぷん"の怒った絵文字と中指を立てた絵文字を送ってきた。遠坂からも通知が来て、なんだと思いトーク画面を見ると全く同じ内容で、ついに声を上げて笑ってしまった。
馬鹿だ。
遠坂の携帯でも送ったなあいつ。
体を小刻みに揺らしながらずるずるとソファーに横になる。
上野に返信を返してやろうと画面を見ていたが、瞼が重くなり、瞬きを数回繰り返す。
視界が薄暗くなりながらも考えるのは、帰ってくるであろう期間限定の同室者。
あー……………でもちょっとだけ、ちょっとだけなら寝ても…すぐ起き…たら…………。
思考が分散したのち完全に瞼が落ち、視界は無になった。
身体的ダメージと精神的ストレスで相当疲れていたのか、柴は寝落ちてすぐ穏やかな寝息をたてた。
「ぅーー…ん………んん…?」
意識が浮上し、ぼんやりした頭で手探りで手繰り寄せた携帯で時間を確認する。
19時12分。
えーと……19時って…。
「7時?!!???」
4時間もタイムリトップ?!違うタイムトリップ?!????!!!跳ね起きようとしたら全身筋肉痛の如く身体が動かず、不自然に身悶えする人間になってしまった。まるで芋虫。
待てよ、こんな時間ということは…!?
ソファーに手をつき、上体を起こして周りを素早く見回すと。
ソファーの前に惶が座っていた。
なんてことは無く、俺が帰ってきた状態と全く変わらない光景だった。
数冊積み上げた漫画。ラノベ。テレビのリモコンの位置。何も動いていない。
嘘だろ。まだ帰って来てないとか。
いや、"今日は"帰って来ないのか
………もう帰って来ないのか………?
ま、それは無いか。部屋着のスウェットやら私物は普通に置いてるし。
頭をよぎるのはあの空き教室で見た、黒のキャップを被り、ゆるい絵柄の生き物が描かれたトレーナーを着ていた人物、惶。
虚無のまま考える。
とりあえず、風呂入ろ。
そのまま風呂場に直行した。適当に服を床に脱ぎ捨て、ベタベタと手にくっつく鬱陶しい湿布を剥がした。
流れるシャワーが心地良い。顔を下に向けて水流を見ると、身体を伝っていくお湯が汗や泥だけでなく、今日あった様々な事を排水口に流してくれている気がした。
念入りに身体を洗い湯に浸かると、じんわりと熱が行き渡り、節々を解きほぐしていく。
満足げな溜め息を吐いて手足を伸ばす。少しばかり気持ちが軽くなり思考は明後日に飛んだ。
ハ〜〜温泉行きて〜〜〜!城崎温泉行きたい。兵庫だっけ?ついでにユニバにも行きたい。行った事ないんだよなユニバ。ジュラシックワールドのあの恐竜のジェットコースター乗りたい。
夏休みに上野でも誘って行くために検索でもするか、と洗面台に置いたままの携帯を触るために風呂を出た。
あ。着替え持ってくんの忘れてた。
身体をタオルで拭き、手探りでいつも着替えを置いている所を触ると空。
………まぁ惶はまだいないし、いっか。
玄関から音はしてなかったことを思い返す。
携帯を片手に、髪の毛を荒く拭きながらフルチンで廊下に出て部屋に向かった。
いちよう、リビングをチラッと覗いて惶がいない事を確認。
良かった。
そのまま部屋の前に行き、ドアノブを捻ったと同時に、玄関から音がした。
カードキーを当てたピッと高い機械音。振り返り、瞬きをするその数秒で扉が開いて、
閉まった。
「………………ただいま」
「……お…おかえり………」
整った切れ目の瞳を軽く見開き、"あの時"見た服装に、風紀と書かれた腕章を手に持って玄関に惶が立っていた。
髪から廊下にポタリと落ちた水滴の音が、妙に大きく聞こえた。
「………とりあえず、股間隠せよ」
「えっ、アッうわっ!………悪い」
腹一杯でもう食えねぇ。
吐きそう。
寮のソファーにだらしなく身を預けた。
あれから女装コンテストが閉会し、生徒会長の挨拶があった後、待ちに待った3学年合同交流パーティーという名のタダ飯イベントが始まった。去年は遠慮してあまり食べられなかった。だから今年こそは、と食べまくったら案の定、腹がはち切れそうに。
怪我で全身が重いこともあり、警察と泥棒の景品授与者が発表される3時より前に体育館の出入口にいた先生に寮に帰してもらえた。
公的に許されたサボり万歳。
遠坂と上野は、俺が1人で帰るって言ったから体育館で景品発表待ちをしている。上野にラインで恨めしげなスタンプを連投された。
おい。
戦果良いし景品貰えるだろうに。
まったく、サボりはよくないなぁ。
にんまり笑いながら、"ぴえん"の絵文字だけ送って煽る。
上野が"ぷんぷん"の怒った絵文字と中指を立てた絵文字を送ってきた。遠坂からも通知が来て、なんだと思いトーク画面を見ると全く同じ内容で、ついに声を上げて笑ってしまった。
馬鹿だ。
遠坂の携帯でも送ったなあいつ。
体を小刻みに揺らしながらずるずるとソファーに横になる。
上野に返信を返してやろうと画面を見ていたが、瞼が重くなり、瞬きを数回繰り返す。
視界が薄暗くなりながらも考えるのは、帰ってくるであろう期間限定の同室者。
あー……………でもちょっとだけ、ちょっとだけなら寝ても…すぐ起き…たら…………。
思考が分散したのち完全に瞼が落ち、視界は無になった。
身体的ダメージと精神的ストレスで相当疲れていたのか、柴は寝落ちてすぐ穏やかな寝息をたてた。
「ぅーー…ん………んん…?」
意識が浮上し、ぼんやりした頭で手探りで手繰り寄せた携帯で時間を確認する。
19時12分。
えーと……19時って…。
「7時?!!???」
4時間もタイムリトップ?!違うタイムトリップ?!????!!!跳ね起きようとしたら全身筋肉痛の如く身体が動かず、不自然に身悶えする人間になってしまった。まるで芋虫。
待てよ、こんな時間ということは…!?
ソファーに手をつき、上体を起こして周りを素早く見回すと。
ソファーの前に惶が座っていた。
なんてことは無く、俺が帰ってきた状態と全く変わらない光景だった。
数冊積み上げた漫画。ラノベ。テレビのリモコンの位置。何も動いていない。
嘘だろ。まだ帰って来てないとか。
いや、"今日は"帰って来ないのか
………もう帰って来ないのか………?
ま、それは無いか。部屋着のスウェットやら私物は普通に置いてるし。
頭をよぎるのはあの空き教室で見た、黒のキャップを被り、ゆるい絵柄の生き物が描かれたトレーナーを着ていた人物、惶。
虚無のまま考える。
とりあえず、風呂入ろ。
そのまま風呂場に直行した。適当に服を床に脱ぎ捨て、ベタベタと手にくっつく鬱陶しい湿布を剥がした。
流れるシャワーが心地良い。顔を下に向けて水流を見ると、身体を伝っていくお湯が汗や泥だけでなく、今日あった様々な事を排水口に流してくれている気がした。
念入りに身体を洗い湯に浸かると、じんわりと熱が行き渡り、節々を解きほぐしていく。
満足げな溜め息を吐いて手足を伸ばす。少しばかり気持ちが軽くなり思考は明後日に飛んだ。
ハ〜〜温泉行きて〜〜〜!城崎温泉行きたい。兵庫だっけ?ついでにユニバにも行きたい。行った事ないんだよなユニバ。ジュラシックワールドのあの恐竜のジェットコースター乗りたい。
夏休みに上野でも誘って行くために検索でもするか、と洗面台に置いたままの携帯を触るために風呂を出た。
あ。着替え持ってくんの忘れてた。
身体をタオルで拭き、手探りでいつも着替えを置いている所を触ると空。
………まぁ惶はまだいないし、いっか。
玄関から音はしてなかったことを思い返す。
携帯を片手に、髪の毛を荒く拭きながらフルチンで廊下に出て部屋に向かった。
いちよう、リビングをチラッと覗いて惶がいない事を確認。
良かった。
そのまま部屋の前に行き、ドアノブを捻ったと同時に、玄関から音がした。
カードキーを当てたピッと高い機械音。振り返り、瞬きをするその数秒で扉が開いて、
閉まった。
「………………ただいま」
「……お…おかえり………」
整った切れ目の瞳を軽く見開き、"あの時"見た服装に、風紀と書かれた腕章を手に持って玄関に惶が立っていた。
髪から廊下にポタリと落ちた水滴の音が、妙に大きく聞こえた。
「………とりあえず、股間隠せよ」
「えっ、アッうわっ!………悪い」