新入生歓迎会するんだってよ
柴の仕返し
「委員長!全員無事取り押さえました!」
腕を組んで廊下にもたれ掛かっていた俺に委員が報告をしに来た。手を軽く横に払い、そのまま風紀室に連れてけ、と返す。
古い校舎に風紀委員達の指示や問題児達の耳障りな声が大きく響いている。
普段は静寂で満ちている筈のこの場所がとんだ迷惑な事に使われたもんだな。
保護された1番の問題児は既にブランケットに身を包ませて風紀の休憩室に連れて行っている。
遡る事30分程前。
このイベントに乗じて必ず親衛隊が動く事を踏んで、問題児である神庭を俺達はずっとバングルの位置情報でマークしていた。
が、突然バングルの信号が途絶え、待機していた風紀委員達を総動員して探していたが見つかる気配が一向に無かった。
当然だ。迷惑なイベントを考えた生徒会共は、行動範囲を無駄に広く設定しやがった為、風紀だけで捜索するには時間が到底足りるわけが無い。
カメラの映像を見ても当然そんな姿はない。第一に、校舎に付けられているカメラも10数台しかなく、旧校舎には付けられていない。
糸口もなく苛ついていると、神庭とよく行動しているもう1人の問題児を保護したとの情報が入った。
しかしそこも空振りに終わった。
周りの怯える委員達さえ、苛つきを助長させる材料になっていた。
暫くしてすぐ、神庭と思われるバングルからの範囲外の信号が突然届き、尚且つブラックリスト入りのバングルの信号もすぐ近くにあるのが分かった。
すぐに捜索に出していた腕の立つ風紀に通信で緊急招集。
数10名を連れ駆け付けると、ギリギリではあった様だが未遂の神庭と、ブラックリスト入りの問題児達を縛り上げることができた。
だが………しかし
"いったい誰がやったのか"
旧校舎から全員撤収し、風紀室に戻った今、自身に用意されている机で片肘をつき考える。
実行犯3人はまとめて取り押さえることができた。それも極めて容易に。1人は窓から出たその真下にあるトラップに引っかかり、残る2人は出入り口の粘着質なトラップに勢いがあったのか全身をへばりつけて。
この記載だけではただトラップに引っかかって自滅をした馬鹿に過ぎないが、実際の現場を見ると上手く誘導された末の自滅だと一目瞭然だった。
神庭がいたあの教室が現場であると確定した上で、考えられる逃げ道は4つ。
1つ目。
本校につながる廊下。
だが、網で道を塞ぐように両壁の窓の四方に網の末端にダマを作り窓を閉めて固定された、パッと見るとトラップの一つに見える簡易的で見事なハリボテがあった。
2つ目。
出てすぐ前の中庭に繋がった窓。
だが、1つの窓以外全てに鍵が掛かっていて、全開になったその1つの窓の真下には足を近くの木に吊り下げられるトラップが。
3つ目。
旧校舎の出入り口。
だが、一帯には極めて極力な粘着物のトラップが。
最後。
その教室の中の窓。
ここは1つの窓を除き、他の窓の周りには埃が溜まっていた。あの3人が他の実行犯隠していない限り、あそこから出たのは神庭を助けたであろう人物。
そう。
どう考えてもこれはあの実行犯である3人を陥れる為のものだ。
先程まで聞いていた話によると、最初に突入した秘密兵器も姿を見ていないと言っていたし、馬鹿3人によると吊り目のパーカーとしか情報がなかった。あとは胸が良かったとかほざいていたな。半裸だったのか?どうでもいい。
役に立たない奴等め。
また、神庭とよく行動している友人らしい南部が対象となった、もう一件の軽い制裁未遂でも同様の人物が浮かび上がった。眠らされ縄で縛られていた実行犯。だが向かわせた風紀は顔をあまり覚えておらず、南部も名前も連絡先も聞くの忘れていたという使えなさ。
読み取れるのは私服である為に一年では無い。ただそれだけだ。
この学内にどれだけの生徒がいると。
いずれも共通して、何故ローバーのアイテムである罠を持っていたのか。
拾ったのか、譲り受けたのか、捕まえた人物から盗ったのか、2年、3年の泥棒か。
…最後の条件だと絞り込むまでも無いが、それ以外を考慮するとそれこそキリがないな。
単独かどうかはさて置き、これだけ簡潔でスムーズな策を練る人物。
必ず風紀に必要だ。
来ると分かっていただろう俺達から逃げた理由、直接話して貰おうな?
「随分と悪どい顔してるよ?」
いつの間に入って来ていたのか、艶やかな黒髪を揺らし、含み笑いをしながら声を掛けてきたのは同学年3年の風紀副委員長。
「やっと戻ってきたか。翠(ミドリ)、取調べサボって何してたんですか」
そう聞くと、ニコニコと随分とご機嫌な様子で答えた。
「ふふふっ…ヒ ミ ツ」
「……………」
「あわわわわ」
手元にあったカッターを投げようとしたが、さっさと風紀室を出て行った。
と思ったら再びドアが開き、「あ、もうすぐで余興始まっちゃうから、委員長もはやく来た方がいいよ。……目当ての彼も見つかるかもしれないし」と言ってまたすぐに扉が閉まり、足音が遠ざかって行った。
ふん……。目当ての彼、な。
立食パーティー含め、風紀の仕事を言い訳にハナから行く気はなかったが………行ってみるか。
椅子にかけていたブレザーを羽織り、眼鏡の位置を直して立ち上がった。
「あとは任せます」
「えっ委員長行くんですか余興!?!俺も行きたかったんですが!!」
「ハイハイッ俺も!」
「………ア"?」
「何も言ってないですお留守番大好きです喜んで残ります」
「行ってらっしゃいませ委員長様」
「委員長!全員無事取り押さえました!」
腕を組んで廊下にもたれ掛かっていた俺に委員が報告をしに来た。手を軽く横に払い、そのまま風紀室に連れてけ、と返す。
古い校舎に風紀委員達の指示や問題児達の耳障りな声が大きく響いている。
普段は静寂で満ちている筈のこの場所がとんだ迷惑な事に使われたもんだな。
保護された1番の問題児は既にブランケットに身を包ませて風紀の休憩室に連れて行っている。
遡る事30分程前。
このイベントに乗じて必ず親衛隊が動く事を踏んで、問題児である神庭を俺達はずっとバングルの位置情報でマークしていた。
が、突然バングルの信号が途絶え、待機していた風紀委員達を総動員して探していたが見つかる気配が一向に無かった。
当然だ。迷惑なイベントを考えた生徒会共は、行動範囲を無駄に広く設定しやがった為、風紀だけで捜索するには時間が到底足りるわけが無い。
カメラの映像を見ても当然そんな姿はない。第一に、校舎に付けられているカメラも10数台しかなく、旧校舎には付けられていない。
糸口もなく苛ついていると、神庭とよく行動しているもう1人の問題児を保護したとの情報が入った。
しかしそこも空振りに終わった。
周りの怯える委員達さえ、苛つきを助長させる材料になっていた。
暫くしてすぐ、神庭と思われるバングルからの範囲外の信号が突然届き、尚且つブラックリスト入りのバングルの信号もすぐ近くにあるのが分かった。
すぐに捜索に出していた腕の立つ風紀に通信で緊急招集。
数10名を連れ駆け付けると、ギリギリではあった様だが未遂の神庭と、ブラックリスト入りの問題児達を縛り上げることができた。
だが………しかし
"いったい誰がやったのか"
旧校舎から全員撤収し、風紀室に戻った今、自身に用意されている机で片肘をつき考える。
実行犯3人はまとめて取り押さえることができた。それも極めて容易に。1人は窓から出たその真下にあるトラップに引っかかり、残る2人は出入り口の粘着質なトラップに勢いがあったのか全身をへばりつけて。
この記載だけではただトラップに引っかかって自滅をした馬鹿に過ぎないが、実際の現場を見ると上手く誘導された末の自滅だと一目瞭然だった。
神庭がいたあの教室が現場であると確定した上で、考えられる逃げ道は4つ。
1つ目。
本校につながる廊下。
だが、網で道を塞ぐように両壁の窓の四方に網の末端にダマを作り窓を閉めて固定された、パッと見るとトラップの一つに見える簡易的で見事なハリボテがあった。
2つ目。
出てすぐ前の中庭に繋がった窓。
だが、1つの窓以外全てに鍵が掛かっていて、全開になったその1つの窓の真下には足を近くの木に吊り下げられるトラップが。
3つ目。
旧校舎の出入り口。
だが、一帯には極めて極力な粘着物のトラップが。
最後。
その教室の中の窓。
ここは1つの窓を除き、他の窓の周りには埃が溜まっていた。あの3人が他の実行犯隠していない限り、あそこから出たのは神庭を助けたであろう人物。
そう。
どう考えてもこれはあの実行犯である3人を陥れる為のものだ。
先程まで聞いていた話によると、最初に突入した秘密兵器も姿を見ていないと言っていたし、馬鹿3人によると吊り目のパーカーとしか情報がなかった。あとは胸が良かったとかほざいていたな。半裸だったのか?どうでもいい。
役に立たない奴等め。
また、神庭とよく行動している友人らしい南部が対象となった、もう一件の軽い制裁未遂でも同様の人物が浮かび上がった。眠らされ縄で縛られていた実行犯。だが向かわせた風紀は顔をあまり覚えておらず、南部も名前も連絡先も聞くの忘れていたという使えなさ。
読み取れるのは私服である為に一年では無い。ただそれだけだ。
この学内にどれだけの生徒がいると。
いずれも共通して、何故ローバーのアイテムである罠を持っていたのか。
拾ったのか、譲り受けたのか、捕まえた人物から盗ったのか、2年、3年の泥棒か。
…最後の条件だと絞り込むまでも無いが、それ以外を考慮するとそれこそキリがないな。
単独かどうかはさて置き、これだけ簡潔でスムーズな策を練る人物。
必ず風紀に必要だ。
来ると分かっていただろう俺達から逃げた理由、直接話して貰おうな?
「随分と悪どい顔してるよ?」
いつの間に入って来ていたのか、艶やかな黒髪を揺らし、含み笑いをしながら声を掛けてきたのは同学年3年の風紀副委員長。
「やっと戻ってきたか。翠(ミドリ)、取調べサボって何してたんですか」
そう聞くと、ニコニコと随分とご機嫌な様子で答えた。
「ふふふっ…ヒ ミ ツ」
「……………」
「あわわわわ」
手元にあったカッターを投げようとしたが、さっさと風紀室を出て行った。
と思ったら再びドアが開き、「あ、もうすぐで余興始まっちゃうから、委員長もはやく来た方がいいよ。……目当ての彼も見つかるかもしれないし」と言ってまたすぐに扉が閉まり、足音が遠ざかって行った。
ふん……。目当ての彼、な。
立食パーティー含め、風紀の仕事を言い訳にハナから行く気はなかったが………行ってみるか。
椅子にかけていたブレザーを羽織り、眼鏡の位置を直して立ち上がった。
「あとは任せます」
「えっ委員長行くんですか余興!?!俺も行きたかったんですが!!」
「ハイハイッ俺も!」
「………ア"?」
「何も言ってないですお留守番大好きです喜んで残ります」
「行ってらっしゃいませ委員長様」