新入生歓迎会するんだってよ
2
「さぁて…お待ちかねの時間ですよぉ〜ぎゃはははッッ」
全然待ってない。1ミクロンも待ってない。お帰りください。
苦い気持ちでまた後ろを振り向くと、もう殴られた後のような死んだ顔をしていた。
はやい。もやしすぎる。
頭良いんだからもう少し粘る気持ちを持ってくれ。
こうなったら、俺がない頭振り絞って必死に頭を回転させるしかないようだ。
だって不条理に殴られたくないからネ!
ゴリラは1人だけなのがまだ救いか。
バングルを数メートル先の範囲外に投げようと思ったけどそんな隙もなさそう。
と、いうか俺のだけで風紀が反応してくれるかどうか。何の躊躇いもなくこちらに歩いてくるゴリラに少しでも隙を見出そうと声を投げかけた。
「なんでここがわかった?」
「あ"?しらねーよ、アイツらが着いてこいって言ったのを聞いただけだからなぁ。それより逃げんなよ。メンドクセーことすっとより痛くすんぞ」
「俺達をどうしろって?」
「…どうって、しばらくぶん殴っとけ、
ってチッ…ごちゃごちゃウルセーなお前」
やべ。
後方の南部さんに向いてた目がこっちに。
それも酷く機嫌が悪そうに眉間に皺が寄っている。
素直に答えてしまったのが相当苛立ったらしい。
ありがとうゴリラくん。万が一にもケツの心配しないだけちょっと気が楽になったわ。
それでもだいぶ嫌だが。
先程のゆっくりした歩みから苛立ちを乗せ早足にこっちに来るゴリラ。俺のパーカーを掴み、不安げそうな彼に安心させるかのようにしっかり両足に力を入れる。
やや前傾姿勢になり、手を後ろに。
袋を持った手に力を入れた。
向きを間違えずに持ったな。
大丈夫。
落ち着け。
「あ"ぁ"?逃げる気かてめー!」
「んなことしねぇーーよ!!」
プシューーーーー!
距離を取るために、ゴリラがあと一歩で殴ってくる距離で尻餅をついて、袋の中で手繰り寄せていたスプレーを吹き掛けた。
何のスプレーか分からず困惑するゴリラ。
「なっ、何しやがった!!なんだこれ!??」
えっと…。
「め、目潰しスプレー」
「てめーーーー!!!
失明すんのかオレ!」
「…目を洗えば大丈夫って」
「そういうことは早く言え!
チッ!覚えとけ……
よ…………」
ゴリラは校舎の方に行こうとしたのか、向きを変えて歩き出したところでそのまま前向きに崩れる様に倒れた。
「「…………。」」
尻餅をつく直前に横に押しておいた南部さんが、立ったまま俺の手元のスプレーの文字を読む。
「……催眠スプレー?……嘘ついたのか…。」
「まぁ……すぐ効くか分からなかったし…。」
素直で愚直なゴリラで大変助かった。
さて、今のうちに縛り上げとくか。
起きられたら面倒だからな。
袋を大きく開いて縄を取り出し、ゴリラの方に向かっていると南部さんが無言で袋を探っているのが見えた。
何していらっしゃるんで??
まぁいいか。
よし、こんなもんか。
独り言を呟き、適当に動けないように手と足を繋いで硬く縛ったゴリラを立って見下ろす。
何やらシュールな見た目になってしまった気がする…。
見たくなくなって南部さんの方に目を向けると、手に何か持っていた。
それは……煙幕?
何がしたいのか良く分からず近づくと話しかけられた。
「…なんで初めから煙幕を使わなかったんですか…?」
「それは、えーっと、…2人とも逃げ切れる自信がなかったから」
「………どうして………」
「どうして……?!」
そんなに脚力に自信が…?!
「…どうして…俺なんかにそんなに普通に接してくれるんだ……煙幕で目眩しして貴方だけ逃げれたのに」
…………。
「……"あきらめないこと、そして、どんな状況でも逃げ出さないこと"……です、よ」byガルパン引用。
ちょっと恥ずかしいから顔を見ず言葉を繋げる。
「それに、…貴重な同志を見捨てるわけにいかないじゃないですか」
ニッと笑って顔を見ると呆けた顔をしていた。
あれ、やっぱ恥ずかしいな?
だが人生とは黒歴史が積み重なってできているものだ…………by俺
しにたい。
けれど、南部さんは暫く視線をそろそろ左右に動かすと、ぎこちなくも笑みを返してくれたから多分、気持ちは伝わった。
さーて、じゃあ風紀呼ぶか。
縛ったゴリラと南部さんからバングルを拝借して範囲外に投げ込んだ。途端に音が鳴り始める。理解が難しそうな彼に、実は木雨から教えてもらった事を話すことに。
皆に渡されたバングルには実は種類が2種類あった。
1つは俺のように一般的な生徒用。
もう一方は、風紀からよく取り締まりを受け危険視されている生徒、もしくは生徒会や見た目麗しい警護対象と…親衛隊からの制裁対象になりえる人物。
つまり、一般生徒と問題が起こりやすい生徒、の2種類あったということだ。
違いは、問題が起きやすい方のバングルから発信されるものは通常とは違った通知らしく、風紀はそちらを重視してるって点。
「せやから、俺がポイってあっちに投げたら風紀飛んでくるでワハハハ」っつってたな。クソ迷惑な奴だ。
見分けポイントは貼ってある小さなシール。
案の定、ゴリラと南部さんのバングルにもシールが貼ってあったから使ったって訳だ。
嫌そうに納得してる彼に、そうだろうなと相槌を打った。自分が問題視されてるって分かるの嫌だよな。分かる分かる。上野の親衛隊とイザコザがあった昨年を思い出すぜ。
風紀を待つ間
「最近やってるんですけど、このアプリゲーやってます?」
「あ…俺も好きですこれ…。」
「あ、じゃあ良ければフレンドなりません?」
「アッはい…ありがとうございます…。」
「アッいえこちらこそ、まだ全然弱いんですけど」
「アッ俺も全然そんな…。」
「…………。」
「…………。」
でそこからエンドレス無言タイム。
数分で風紀が来てタイムアップ。陰キャが揃うとこうなる事は読めていたさ。
そして結構風紀到着早い。
流石。
そういえば…誰かが"風紀は連絡してから平均5分程度で来る"って言ってたっけ。
「どうかされましたか?!」
「えーと……今は大丈夫です」
駆け付けた風紀は5人で、腕っ節の良さそうなのがそのうちの3人だった。投げたバングルは2つなのにこの人数とは……今年の風紀は慎重なタイプのようだ。
ゴリラは肩に担がれ、南部さんは一応保健室に行くことに。俺は丁重に辞退した。良く考えなくともこのメンバーで本館の方に戻ったら親衛隊から目をつけられそうだったから。
到着から別れるまでに、何度も念押しに風紀から毛玉も一緒じゃないのか、毛玉は見かけていないか、と聞かれたが……もしや……迷子か?
それとも………?
いやいや、まぁまぁまぁ、これは風紀の仕事だし俺が考えても仕方ねぇや。
「さぁて…お待ちかねの時間ですよぉ〜ぎゃはははッッ」
全然待ってない。1ミクロンも待ってない。お帰りください。
苦い気持ちでまた後ろを振り向くと、もう殴られた後のような死んだ顔をしていた。
はやい。もやしすぎる。
頭良いんだからもう少し粘る気持ちを持ってくれ。
こうなったら、俺がない頭振り絞って必死に頭を回転させるしかないようだ。
だって不条理に殴られたくないからネ!
ゴリラは1人だけなのがまだ救いか。
バングルを数メートル先の範囲外に投げようと思ったけどそんな隙もなさそう。
と、いうか俺のだけで風紀が反応してくれるかどうか。何の躊躇いもなくこちらに歩いてくるゴリラに少しでも隙を見出そうと声を投げかけた。
「なんでここがわかった?」
「あ"?しらねーよ、アイツらが着いてこいって言ったのを聞いただけだからなぁ。それより逃げんなよ。メンドクセーことすっとより痛くすんぞ」
「俺達をどうしろって?」
「…どうって、しばらくぶん殴っとけ、
ってチッ…ごちゃごちゃウルセーなお前」
やべ。
後方の南部さんに向いてた目がこっちに。
それも酷く機嫌が悪そうに眉間に皺が寄っている。
素直に答えてしまったのが相当苛立ったらしい。
ありがとうゴリラくん。万が一にもケツの心配しないだけちょっと気が楽になったわ。
それでもだいぶ嫌だが。
先程のゆっくりした歩みから苛立ちを乗せ早足にこっちに来るゴリラ。俺のパーカーを掴み、不安げそうな彼に安心させるかのようにしっかり両足に力を入れる。
やや前傾姿勢になり、手を後ろに。
袋を持った手に力を入れた。
向きを間違えずに持ったな。
大丈夫。
落ち着け。
「あ"ぁ"?逃げる気かてめー!」
「んなことしねぇーーよ!!」
プシューーーーー!
距離を取るために、ゴリラがあと一歩で殴ってくる距離で尻餅をついて、袋の中で手繰り寄せていたスプレーを吹き掛けた。
何のスプレーか分からず困惑するゴリラ。
「なっ、何しやがった!!なんだこれ!??」
えっと…。
「め、目潰しスプレー」
「てめーーーー!!!
失明すんのかオレ!」
「…目を洗えば大丈夫って」
「そういうことは早く言え!
チッ!覚えとけ……
よ…………」
ゴリラは校舎の方に行こうとしたのか、向きを変えて歩き出したところでそのまま前向きに崩れる様に倒れた。
「「…………。」」
尻餅をつく直前に横に押しておいた南部さんが、立ったまま俺の手元のスプレーの文字を読む。
「……催眠スプレー?……嘘ついたのか…。」
「まぁ……すぐ効くか分からなかったし…。」
素直で愚直なゴリラで大変助かった。
さて、今のうちに縛り上げとくか。
起きられたら面倒だからな。
袋を大きく開いて縄を取り出し、ゴリラの方に向かっていると南部さんが無言で袋を探っているのが見えた。
何していらっしゃるんで??
まぁいいか。
よし、こんなもんか。
独り言を呟き、適当に動けないように手と足を繋いで硬く縛ったゴリラを立って見下ろす。
何やらシュールな見た目になってしまった気がする…。
見たくなくなって南部さんの方に目を向けると、手に何か持っていた。
それは……煙幕?
何がしたいのか良く分からず近づくと話しかけられた。
「…なんで初めから煙幕を使わなかったんですか…?」
「それは、えーっと、…2人とも逃げ切れる自信がなかったから」
「………どうして………」
「どうして……?!」
そんなに脚力に自信が…?!
「…どうして…俺なんかにそんなに普通に接してくれるんだ……煙幕で目眩しして貴方だけ逃げれたのに」
…………。
「……"あきらめないこと、そして、どんな状況でも逃げ出さないこと"……です、よ」byガルパン引用。
ちょっと恥ずかしいから顔を見ず言葉を繋げる。
「それに、…貴重な同志を見捨てるわけにいかないじゃないですか」
ニッと笑って顔を見ると呆けた顔をしていた。
あれ、やっぱ恥ずかしいな?
だが人生とは黒歴史が積み重なってできているものだ…………by俺
しにたい。
けれど、南部さんは暫く視線をそろそろ左右に動かすと、ぎこちなくも笑みを返してくれたから多分、気持ちは伝わった。
さーて、じゃあ風紀呼ぶか。
縛ったゴリラと南部さんからバングルを拝借して範囲外に投げ込んだ。途端に音が鳴り始める。理解が難しそうな彼に、実は木雨から教えてもらった事を話すことに。
皆に渡されたバングルには実は種類が2種類あった。
1つは俺のように一般的な生徒用。
もう一方は、風紀からよく取り締まりを受け危険視されている生徒、もしくは生徒会や見た目麗しい警護対象と…親衛隊からの制裁対象になりえる人物。
つまり、一般生徒と問題が起こりやすい生徒、の2種類あったということだ。
違いは、問題が起きやすい方のバングルから発信されるものは通常とは違った通知らしく、風紀はそちらを重視してるって点。
「せやから、俺がポイってあっちに投げたら風紀飛んでくるでワハハハ」っつってたな。クソ迷惑な奴だ。
見分けポイントは貼ってある小さなシール。
案の定、ゴリラと南部さんのバングルにもシールが貼ってあったから使ったって訳だ。
嫌そうに納得してる彼に、そうだろうなと相槌を打った。自分が問題視されてるって分かるの嫌だよな。分かる分かる。上野の親衛隊とイザコザがあった昨年を思い出すぜ。
風紀を待つ間
「最近やってるんですけど、このアプリゲーやってます?」
「あ…俺も好きですこれ…。」
「あ、じゃあ良ければフレンドなりません?」
「アッはい…ありがとうございます…。」
「アッいえこちらこそ、まだ全然弱いんですけど」
「アッ俺も全然そんな…。」
「…………。」
「…………。」
でそこからエンドレス無言タイム。
数分で風紀が来てタイムアップ。陰キャが揃うとこうなる事は読めていたさ。
そして結構風紀到着早い。
流石。
そういえば…誰かが"風紀は連絡してから平均5分程度で来る"って言ってたっけ。
「どうかされましたか?!」
「えーと……今は大丈夫です」
駆け付けた風紀は5人で、腕っ節の良さそうなのがそのうちの3人だった。投げたバングルは2つなのにこの人数とは……今年の風紀は慎重なタイプのようだ。
ゴリラは肩に担がれ、南部さんは一応保健室に行くことに。俺は丁重に辞退した。良く考えなくともこのメンバーで本館の方に戻ったら親衛隊から目をつけられそうだったから。
到着から別れるまでに、何度も念押しに風紀から毛玉も一緒じゃないのか、毛玉は見かけていないか、と聞かれたが……もしや……迷子か?
それとも………?
いやいや、まぁまぁまぁ、これは風紀の仕事だし俺が考えても仕方ねぇや。