新入生歓迎会するんだってよ
一難去ってまた一難
「…が………う…………れに……ぅな…」
地面に伏したまま何かぼそっと言ったようだったが全然聞こえない。
呪いの言葉だったら嫌だなと思って何も聞かなかったことにする。
なんなら今ここでさっき貰った催眠スプレーを使うチャンスなのかもしれない。
と、は、思ったものの……うつ伏せで顔を横に向けている泥だらけ無気力全開な人間を放置するだけのスルー力も持ち合わせていなかった。というか普通に人として放置したら最低だろ。
「えっと…その…大丈夫ですか…?あとすいません、気付かず蹴飛ばして…」
「…………………。」
「えーと……………………」
恐る恐る声をかけた俺に無言を続ける。
やめよう。
これは俺の手に負える人間ではないのかもしれない。
関西弁の後に未知の奇人の相手なんて俺には無理だ。倒れた人を放置するとか最低だとはさっき思った所だが、すまんな。生きているから大丈夫きっと。
ゆっくり立ち上がって、適当に自分は去るような言葉を掛けてそそくさと立ち去ろうとしたらまた声が。
「…親衛隊じゃないんですね?」
今度はボーイズソプラノのような澄んだ、よく音の通る声。初めて聞いた声だが思い当たるその主は1人だけ。戸惑いながらも振り返り、YESの返答を返した。
直後、舌打ちをして体を起こした奇人。先程とは一変して柄が悪い。
何なんだいったい。
もう行って良いでしょうか。
そんなのを考えている俺のことは知ったこっちゃないらしい。
「近くに親衛隊を見かけました?いない?わからない?背が低くて髪がハンミョウみたいな奴ら」
ハンミョウて。逆に擬態してそうだが。
「いや…見てない…すね……アっ?!」
体の泥を適当に手で払いながら身を起こすのを見ながら答えたが、泥を払ったTシャツを見てつい声をあげてしまった。
ぱっと見全然グッズに見えない戦車道チームのモチーフのイラストが描かれた…その…デザイン…………ガルパン最終章のやつじゃないすかぁ…………。
興奮しきれないのは、現状明らかにそういったことの交流会ではないのにオタク特有の同志を見つけると声をかけたくなる衝動によって出てしまった声に大いなる後悔が濁流の如く押し寄せてきて声ごと存在を消したいなと思っているからです。
一息。
「なんですかその"ア"は……もしかしてやっぱりいたんですかハンミョウ共」
「や、違います…」
「じゃあなんですか……………
…俺が誰かわかったとかですか」
「あー…………それは、まぁ…」
最初から。
自意識過剰乙と言えないところがこの学校のこわいところ。
「はいはい……俺みたいなウジ虫と関わるのは嫌ですよね、運が悪かったですね、いいですよはやく行ってください…どうせ俺なんて虫に失礼なくらい意味の保たない生物に過ぎませんよ…」
突然長舌になられても。
「違うから、ちょっ、待って、お、落ち着きましょう」
止まらない自虐にキノコ生えかけてる。
違うとは言ったものの、まだ言うか言い淀む。う……でも不安の種を蒔いたのは俺だよなそうだね。不審げに俺の動向を待つ彼に向かって、不明瞭な言葉を冒頭に着ているTシャツを指差す。
「あーその、それ、ガルパンのやつ…汚れちゃってんなって…ほら、今売ってないし大丈夫かな……と…」
「……………なんだ…………そうなの…」
呟くように言った彼からは、さっきのような生えかけたキノコは雲散したようだった。
「……いいんです…これは。あと5枚予備あるから」
5枚も…?!
驚く俺を横目でちらりと見た後すぐ、汚れてしまっているTシャツに視線を落とし小さく笑った。
自虐キャンペーン終わったから少しは落ち着いたのかもしれない。
良かった良かった。
立てるように手を差し出す俺と手を3往復程見て、それから手を取った彼を引き上げながら話しかけた。
「ガルパン、好きなんですね」
「うん…まぁ………。ありがとうございます…」
「いいえ」
彼に何があったにせよ、ここにいるより風紀とか、人気があるところに行った方が良さそうだ。そもそも俺も体育館に手錠支給してもらいに行かないといけなかったし、丁度いいか。
連れ体育館しようと声を掛けかけてやめる。
なんて呼べばいいんだ。
「ところで、あの、…なんて呼べば?」
「何とでも…南部(ナンブ)って呼べばいいんじゃ…?」
南部って名前だったのか。名前まで把握してなかった。
「じゃあ南部さん、俺今から体育館行くんだけど一緒に行きません?」
「…迷惑じゃないなら…」
戸惑いながら頷くのを見て笑い掛けた。
元の道行きゃいいだろ
で……どっちだったっけな。
「あっ!」
「ほらあそこ!」
「いた!!!お前さあ余計な手間掛けさせないでよね!」
そんなチンピラみたいな。
嫌な予感に走り出したい。
願わくば木雨と別れた直後あたりにタイムトリップ。
立ち上がった矢先の俺たちはその場から一歩も進むことも許されなかった。
低い甲高い声(どういうことだこれ?)に呼び止められ、動く間も無く10人近い低身長カラフル頭に囲まれたから。
これかぁ…ハンミョウ共って…。
遠い目で考えていると、誰お前?と。
口籠もっているとまぁいいやって言われた。
なんだよ。正直に言うつもりもなかったけど。
リーダー面をした奴が南部の方に向かって吠える。
「おい!お前だよそこの陰気な虫ケラ。こっちにも計画ってもんがあるのにちょろちょろと…
…もう一度言うけど、元Sクラスだか知らないけどさぁ、ウザイ転校生と群れて会長様方に近づくの…心底目障り。分かる?虫でも理解できるよねぇ」
すげぇ言うなこいつ。
お前らも虫(ハンミョウ)なのに。
首だけ動かして後ろを見ると、顔面にデカデカと書かれた面倒くさいを読み取れた。
聞くき無し。
態度悪し。
状況悪し。
少しだけ動かしている口元からは、だからそんな気ないってずっと言ってんのに…ってな感じで動いていた。
せめて声を張れ。
南部さんの態度にリーダー面以外のハンミョウチワワも騒ぎ出す。
良くない。これは大変よろしくない。
図らずともハンミョウチワワ親衛隊に巻き込まれた俺。
どうしたもんか。
南部さんの様子とハンミョウチワワ親衛隊のご様子では、これで何度目かの再会らしい。
それだけ追うってことは、話してこれで、はい解散、って訳には…
「ふん…言っても聞かないやつだと分かっていたさ……仕事だよ!きて!」
「やっとか〜」
…いかねぇよなぁ…。
パターン展開された黄金方程式。
制裁ゴリラ現る。
やべぇ〜〜〜どうしようか……。
ゴリラは俺を指差してこいつは?と聞く。
仲間じゃない?一緒にやっちゃって。こんなの1人も2人も変わんないでしょ?と答えた。
なんでだよ変わるだろうがよ!!
とか言って俺だけスタコラできるわけもねぇけど!!!
内心頭を掻きむしっている俺のことなんて何のその。ハンミョウチワワ親衛隊達はさっさと去っていった。
去り際に、黄緑色の頭が見えた気がした。
「さぁて…お待ちかねの時間ですよぉ〜」
「(待ってない待ってない)」
「…が………う…………れに……ぅな…」
地面に伏したまま何かぼそっと言ったようだったが全然聞こえない。
呪いの言葉だったら嫌だなと思って何も聞かなかったことにする。
なんなら今ここでさっき貰った催眠スプレーを使うチャンスなのかもしれない。
と、は、思ったものの……うつ伏せで顔を横に向けている泥だらけ無気力全開な人間を放置するだけのスルー力も持ち合わせていなかった。というか普通に人として放置したら最低だろ。
「えっと…その…大丈夫ですか…?あとすいません、気付かず蹴飛ばして…」
「…………………。」
「えーと……………………」
恐る恐る声をかけた俺に無言を続ける。
やめよう。
これは俺の手に負える人間ではないのかもしれない。
関西弁の後に未知の奇人の相手なんて俺には無理だ。倒れた人を放置するとか最低だとはさっき思った所だが、すまんな。生きているから大丈夫きっと。
ゆっくり立ち上がって、適当に自分は去るような言葉を掛けてそそくさと立ち去ろうとしたらまた声が。
「…親衛隊じゃないんですね?」
今度はボーイズソプラノのような澄んだ、よく音の通る声。初めて聞いた声だが思い当たるその主は1人だけ。戸惑いながらも振り返り、YESの返答を返した。
直後、舌打ちをして体を起こした奇人。先程とは一変して柄が悪い。
何なんだいったい。
もう行って良いでしょうか。
そんなのを考えている俺のことは知ったこっちゃないらしい。
「近くに親衛隊を見かけました?いない?わからない?背が低くて髪がハンミョウみたいな奴ら」
ハンミョウて。逆に擬態してそうだが。
「いや…見てない…すね……アっ?!」
体の泥を適当に手で払いながら身を起こすのを見ながら答えたが、泥を払ったTシャツを見てつい声をあげてしまった。
ぱっと見全然グッズに見えない戦車道チームのモチーフのイラストが描かれた…その…デザイン…………ガルパン最終章のやつじゃないすかぁ…………。
興奮しきれないのは、現状明らかにそういったことの交流会ではないのにオタク特有の同志を見つけると声をかけたくなる衝動によって出てしまった声に大いなる後悔が濁流の如く押し寄せてきて声ごと存在を消したいなと思っているからです。
一息。
「なんですかその"ア"は……もしかしてやっぱりいたんですかハンミョウ共」
「や、違います…」
「じゃあなんですか……………
…俺が誰かわかったとかですか」
「あー…………それは、まぁ…」
最初から。
自意識過剰乙と言えないところがこの学校のこわいところ。
「はいはい……俺みたいなウジ虫と関わるのは嫌ですよね、運が悪かったですね、いいですよはやく行ってください…どうせ俺なんて虫に失礼なくらい意味の保たない生物に過ぎませんよ…」
突然長舌になられても。
「違うから、ちょっ、待って、お、落ち着きましょう」
止まらない自虐にキノコ生えかけてる。
違うとは言ったものの、まだ言うか言い淀む。う……でも不安の種を蒔いたのは俺だよなそうだね。不審げに俺の動向を待つ彼に向かって、不明瞭な言葉を冒頭に着ているTシャツを指差す。
「あーその、それ、ガルパンのやつ…汚れちゃってんなって…ほら、今売ってないし大丈夫かな……と…」
「……………なんだ…………そうなの…」
呟くように言った彼からは、さっきのような生えかけたキノコは雲散したようだった。
「……いいんです…これは。あと5枚予備あるから」
5枚も…?!
驚く俺を横目でちらりと見た後すぐ、汚れてしまっているTシャツに視線を落とし小さく笑った。
自虐キャンペーン終わったから少しは落ち着いたのかもしれない。
良かった良かった。
立てるように手を差し出す俺と手を3往復程見て、それから手を取った彼を引き上げながら話しかけた。
「ガルパン、好きなんですね」
「うん…まぁ………。ありがとうございます…」
「いいえ」
彼に何があったにせよ、ここにいるより風紀とか、人気があるところに行った方が良さそうだ。そもそも俺も体育館に手錠支給してもらいに行かないといけなかったし、丁度いいか。
連れ体育館しようと声を掛けかけてやめる。
なんて呼べばいいんだ。
「ところで、あの、…なんて呼べば?」
「何とでも…南部(ナンブ)って呼べばいいんじゃ…?」
南部って名前だったのか。名前まで把握してなかった。
「じゃあ南部さん、俺今から体育館行くんだけど一緒に行きません?」
「…迷惑じゃないなら…」
戸惑いながら頷くのを見て笑い掛けた。
元の道行きゃいいだろ
で……どっちだったっけな。
「あっ!」
「ほらあそこ!」
「いた!!!お前さあ余計な手間掛けさせないでよね!」
そんなチンピラみたいな。
嫌な予感に走り出したい。
願わくば木雨と別れた直後あたりにタイムトリップ。
立ち上がった矢先の俺たちはその場から一歩も進むことも許されなかった。
低い甲高い声(どういうことだこれ?)に呼び止められ、動く間も無く10人近い低身長カラフル頭に囲まれたから。
これかぁ…ハンミョウ共って…。
遠い目で考えていると、誰お前?と。
口籠もっているとまぁいいやって言われた。
なんだよ。正直に言うつもりもなかったけど。
リーダー面をした奴が南部の方に向かって吠える。
「おい!お前だよそこの陰気な虫ケラ。こっちにも計画ってもんがあるのにちょろちょろと…
…もう一度言うけど、元Sクラスだか知らないけどさぁ、ウザイ転校生と群れて会長様方に近づくの…心底目障り。分かる?虫でも理解できるよねぇ」
すげぇ言うなこいつ。
お前らも虫(ハンミョウ)なのに。
首だけ動かして後ろを見ると、顔面にデカデカと書かれた面倒くさいを読み取れた。
聞くき無し。
態度悪し。
状況悪し。
少しだけ動かしている口元からは、だからそんな気ないってずっと言ってんのに…ってな感じで動いていた。
せめて声を張れ。
南部さんの態度にリーダー面以外のハンミョウチワワも騒ぎ出す。
良くない。これは大変よろしくない。
図らずともハンミョウチワワ親衛隊に巻き込まれた俺。
どうしたもんか。
南部さんの様子とハンミョウチワワ親衛隊のご様子では、これで何度目かの再会らしい。
それだけ追うってことは、話してこれで、はい解散、って訳には…
「ふん…言っても聞かないやつだと分かっていたさ……仕事だよ!きて!」
「やっとか〜」
…いかねぇよなぁ…。
パターン展開された黄金方程式。
制裁ゴリラ現る。
やべぇ〜〜〜どうしようか……。
ゴリラは俺を指差してこいつは?と聞く。
仲間じゃない?一緒にやっちゃって。こんなの1人も2人も変わんないでしょ?と答えた。
なんでだよ変わるだろうがよ!!
とか言って俺だけスタコラできるわけもねぇけど!!!
内心頭を掻きむしっている俺のことなんて何のその。ハンミョウチワワ親衛隊達はさっさと去っていった。
去り際に、黄緑色の頭が見えた気がした。
「さぁて…お待ちかねの時間ですよぉ〜」
「(待ってない待ってない)」