期末試験 後章-芽吹き-
豚丼と狼谷
寮に帰ってきて玄関口でほっと息を吐いた。
大きい靴とリビングからの明かりで先に惶が帰ってきているのが分かった。
遠坂とは、時間が時間であることと、知ってることを伝えるとはいえあやふやな話をするのもどうかと思い、一度加賀屋先輩に現状を聞いてからにすることにした。
手を洗ってからリビングに入ると、私服の惶がキッチンに立っていた。
「ただいま」
「ああ」
「手伝えることなんかある?」
荷物を適当に下に置こうと肩から外した。
「ねェよ。終わった。着替えてこい」
まじ?流石。
することないならしょうがないと、惶の言葉に素直に従うことに。
部屋に荷物を置き、半ズボンとTシャツに着替えてリビングに戻ると、テーブルに皿を置く惶が見えた。
少し背伸びをして覗き込む。
「さんきゅー、他なんかいる?」
お。豚丼。美味そう。
「箸…とコップ」
「おっけ。お茶で良かった?」
頷く惶の横を通り過ぎ、冷蔵庫に入っていたお茶をコップに注いだ。
箸を2膳掴んでテーブルに向かう。
コップをテーブルに置き、椅子に座った惶に箸を渡して自分も椅子に座った。
手を合わせて、いつものやつ。
「「いただきます」」
数ヶ月経ってなんとも慣れたもんだ。
いつも通り無言で食べ進めてふと思った。
遠坂も、こんな感じで食べてたのかもしれない。
時間が合った時は一緒に食べてるって、焼肉の時そう言ってたから。
塩島委員長が入院して数日は惶も難しい顔をしていた。
あとついでにクラスメイトの風紀委員達も。
伊藤は先週まで酷い落ち込みようだった。
週明けでやっと持ち直したようで、笑顔が少しずつ増えてきている。
そして、塩島委員長の、そのことにはまだ誰も触れられずにいる。
不気味な程に。
俺も、惶にその話をすることはなかった。
ただ、これから遠坂に話すことになると思うと自然と塩島委員長について考えてしまう。
とはいえ、そのまま直球で惶にその話題を持ちかけるのもな…。
そう、色々考えている内に、そういえば、と思い付いたことがあった。
今なら聞ける気がして。
半分程食べた丼を見ながら話しかけた。
「そういや、惶ん家ってこんな感じでご飯食べたりすんの?」
これは遠坂と塩島委員長が家族ぐるみって話から連想したことだ。
言ってから流石に踏み込み過ぎたか不安に思ったが、惶は想像以上にすんなりと答えた。
「たまにな。家業が忙しくなければ」
「へえ自営業なのか」
「ああ。寺院だ」
「へえ、じいん。
…………寺院?」
寺院???
2文字が頭を回る。
顔を上げると、惶はほとんど食べ切った丼を持って何でもないように頷いた。
寺院。
寺院って、寺、だよな。
惶が……お坊さんのご子息…。
惶の坊主姿が頭にふわふわと浮かんだ。
ただのワイルド系イケメンだった。
まあでも、家の事を聞いて腑に落ちた事があった。
ほとんどの週末に実家に帰ることや、弟妹の面倒をみているってこと。
実家が寺なら両親が忙しくてもおかしくない。
にしても、寺か…。
お世話になったこともあるけど、こんな身近に居ると流石に好奇心がふつふつと湧いてくる。
いやでもそんな話してもらってすぐ色々聞くのもなあ〜〜。
箸を動かすスピードが低速になりつつ完食してお茶を飲む惶を見ていると、俺と目があって分かりやすく呆れたように息を吐いた。
「………言いたいことあんなら今言え。風呂行くまでなら受け付けてやる。
無ェならいい。あるならこれっきりだ」
ありますあります!
言ってすぐテーブルに手をついて席を立とうとする惶に慌てて口を開いた。
「い、1個だけ」
「……なんだ」
着席した惶に安堵する。
「………これは、俺が無知だから馬鹿な事聞くのかも知れないんだけど」
「なんだよ」
ちょっと聞くのが恥ずかしくなってきて前置きしたのに、間髪入れずに惶に相槌を打たれ、逃げ場を無し。
腹を括る。
「………修行とか、マジであんの…?」
箸を握りしめて惶の目を見て聞いた。
数秒間が空いた。
その間、惶はいつも通りの仏頂面で俺を見ていたが、徐々に動き出した。
スッと片手で顔を覆い、顔を背けた。
これは呆れられ…。
呆れ…………。
肩震えてんな。
遠坂に続いてお前もかよ。
振動が収まるのは俺が豚丼を食べ切った頃だった。
惶が何もなかったかのように、手を顔から退けてこっちを見た時、俺は仏頂面だった。
「無えの。あんの。」
「ん"…………ある。」
あるんかい。
「…滝修行とかも?」
「ある」
「マジ?!」
あんの?!!
流石にそれはびっくりした。
あるのか…。
「宗派にもよるが、基本的に大卒で1年の修行がいる」
「へえ〜〜〜」
寮に帰ってきて玄関口でほっと息を吐いた。
大きい靴とリビングからの明かりで先に惶が帰ってきているのが分かった。
遠坂とは、時間が時間であることと、知ってることを伝えるとはいえあやふやな話をするのもどうかと思い、一度加賀屋先輩に現状を聞いてからにすることにした。
手を洗ってからリビングに入ると、私服の惶がキッチンに立っていた。
「ただいま」
「ああ」
「手伝えることなんかある?」
荷物を適当に下に置こうと肩から外した。
「ねェよ。終わった。着替えてこい」
まじ?流石。
することないならしょうがないと、惶の言葉に素直に従うことに。
部屋に荷物を置き、半ズボンとTシャツに着替えてリビングに戻ると、テーブルに皿を置く惶が見えた。
少し背伸びをして覗き込む。
「さんきゅー、他なんかいる?」
お。豚丼。美味そう。
「箸…とコップ」
「おっけ。お茶で良かった?」
頷く惶の横を通り過ぎ、冷蔵庫に入っていたお茶をコップに注いだ。
箸を2膳掴んでテーブルに向かう。
コップをテーブルに置き、椅子に座った惶に箸を渡して自分も椅子に座った。
手を合わせて、いつものやつ。
「「いただきます」」
数ヶ月経ってなんとも慣れたもんだ。
いつも通り無言で食べ進めてふと思った。
遠坂も、こんな感じで食べてたのかもしれない。
時間が合った時は一緒に食べてるって、焼肉の時そう言ってたから。
塩島委員長が入院して数日は惶も難しい顔をしていた。
あとついでにクラスメイトの風紀委員達も。
伊藤は先週まで酷い落ち込みようだった。
週明けでやっと持ち直したようで、笑顔が少しずつ増えてきている。
そして、塩島委員長の、そのことにはまだ誰も触れられずにいる。
不気味な程に。
俺も、惶にその話をすることはなかった。
ただ、これから遠坂に話すことになると思うと自然と塩島委員長について考えてしまう。
とはいえ、そのまま直球で惶にその話題を持ちかけるのもな…。
そう、色々考えている内に、そういえば、と思い付いたことがあった。
今なら聞ける気がして。
半分程食べた丼を見ながら話しかけた。
「そういや、惶ん家ってこんな感じでご飯食べたりすんの?」
これは遠坂と塩島委員長が家族ぐるみって話から連想したことだ。
言ってから流石に踏み込み過ぎたか不安に思ったが、惶は想像以上にすんなりと答えた。
「たまにな。家業が忙しくなければ」
「へえ自営業なのか」
「ああ。寺院だ」
「へえ、じいん。
…………寺院?」
寺院???
2文字が頭を回る。
顔を上げると、惶はほとんど食べ切った丼を持って何でもないように頷いた。
寺院。
寺院って、寺、だよな。
惶が……お坊さんのご子息…。
惶の坊主姿が頭にふわふわと浮かんだ。
ただのワイルド系イケメンだった。
まあでも、家の事を聞いて腑に落ちた事があった。
ほとんどの週末に実家に帰ることや、弟妹の面倒をみているってこと。
実家が寺なら両親が忙しくてもおかしくない。
にしても、寺か…。
お世話になったこともあるけど、こんな身近に居ると流石に好奇心がふつふつと湧いてくる。
いやでもそんな話してもらってすぐ色々聞くのもなあ〜〜。
箸を動かすスピードが低速になりつつ完食してお茶を飲む惶を見ていると、俺と目があって分かりやすく呆れたように息を吐いた。
「………言いたいことあんなら今言え。風呂行くまでなら受け付けてやる。
無ェならいい。あるならこれっきりだ」
ありますあります!
言ってすぐテーブルに手をついて席を立とうとする惶に慌てて口を開いた。
「い、1個だけ」
「……なんだ」
着席した惶に安堵する。
「………これは、俺が無知だから馬鹿な事聞くのかも知れないんだけど」
「なんだよ」
ちょっと聞くのが恥ずかしくなってきて前置きしたのに、間髪入れずに惶に相槌を打たれ、逃げ場を無し。
腹を括る。
「………修行とか、マジであんの…?」
箸を握りしめて惶の目を見て聞いた。
数秒間が空いた。
その間、惶はいつも通りの仏頂面で俺を見ていたが、徐々に動き出した。
スッと片手で顔を覆い、顔を背けた。
これは呆れられ…。
呆れ…………。
肩震えてんな。
遠坂に続いてお前もかよ。
振動が収まるのは俺が豚丼を食べ切った頃だった。
惶が何もなかったかのように、手を顔から退けてこっちを見た時、俺は仏頂面だった。
「無えの。あんの。」
「ん"…………ある。」
あるんかい。
「…滝修行とかも?」
「ある」
「マジ?!」
あんの?!!
流石にそれはびっくりした。
あるのか…。
「宗派にもよるが、基本的に大卒で1年の修行がいる」
「へえ〜〜〜」