新入生歓迎会するんだってよ

どなたでしょうか


風紀ですかサボりですか見張りですかそうですか
「すいませんでした」


冷や汗をかいてすぐ立ち上がろうとしたのを肩に手を掛けて押し戻される。


「何しとんねん、立ったらあかんってバレるやん、はよ座ってって」


さっきから捕まるとか。バレるって。


いやそんな。

関西弁。

イケメン。

そんな。


いやいやいやいやわははははははは


「……簿記…?」
指差して引き攣った笑みを浮かべた俺に、ピンポーン、と含み笑いをした関西弁のイケメン。


正体は生徒会簿記。


真実はいつもひとつ。



「何してるんですかこんなとこで…危ないですよ」
「自分に言われとうないわ」
仰る通りで。

「あと、その敬語。自分が2年か3年か分からんけど、俺2年やし。1年とちゃうなら敬語は別にいらんのちゃう?

いうてどっちでもええけど」

どっちでもいいんかい。
いやお前は俺が3年だったとしても敬語使わんのかい。

ツッコミそうになって口を閉ざす。
ノリ軽。
関西人こわ。
校内放送の時と全然違う。
あまりにもフランク。

「関西人こわ…」
「こわない、こわないよ〜」

自然と隣に座って、さっきまでの俺と同じように携帯を触り出す簿記。
………。
「いや、逃げた方がいいんじゃ?何してんですか?」
「やからぁ、自分に言われとうない…って2回目からはおもんないで」捻らんと。

捻らねぇよ。面白いこと言おうと思ってねぇよ。片方の眉を上げて嘲笑する笑みを浮かべるのにイラッ。


すぐ俺から携帯に目を戻した簿記を横目で見る。
これまで何度も式とかで舞台の上に立って居たんだろうけど、大抵寝てた俺は簿記の姿は知らなかった。

つまりこれが初めて見る生徒会役員の簿記。見れば見るほど、成る程生徒会。赤みを帯びた黒髪をセンター分けにして、すっきりした爽やかイケメンフェイスを惜しげもなくひけらかしている。
(ちなみに俺が顔をわかっているのは、会長、副会長くらい)


視線を感じていたのかもう一度こっちに顔を向けた。

「なに?見惚れた?イケメンやなって?
もぉ〜〜〜


知ってる」
「やかましいわ」
「…………。」
「……………。」


間を置き、顔を見合わせ笑った。



「あは、はぁ…放送の時と雰囲気違いすぎでは?」
「ちゃうねん、あれはほんま、しんどすぎてあぁならざる終えんっていうか、生徒会ほんま疲れんねん」
「あー……」ツッコミ疲れ?

伏目で答えた簿記の表情の翳りで苦労が垣間見えた。
可哀想にな…。


「憐れんでる風にしてるけど全然わろてんで自分」ばれてら。


こっちを暫く見たと思ったら、思い出したかのように笑う。
なんだ狂ったか。

「フッーーー…ンハハッ、なんや久々にボケれて感動しちゃった。お前と会えてよかったわ」

アイドルゲーに出てくる攻略対象みたいな顔しないで。ポイント貯めたくないです。

「そいつは重畳」


熱くなり出す顔を隠すように顔を逸らし、適当に相槌をうった。

「ちょうじょう?」
「…良かったねって意味」
「ふぅん、ま、ええわ。ライン交換しよや、あ、やってない?mixi?カカオ?電話番号でもメアドでもええよ。ほんでどこ住み?次いつ会う?」
「古め出会い厨やめろ」


どういう誘い方だよ。いいよ普通にそれくらい。そう思ってラインを開く俺を見て意外そうな顔をするのは、なんでだ。


「…や、自分みたいなのって、大抵俺みたいな役職付きと連絡交換したがらんから…」


あっ。


「おい、そういえばみたいな顔すな」
「お、俺……携帯…持ってない気が…する」
「目逸らすなや。手、ほらおてて見て。うんうん、そうそれが携帯やで、おじいちゃん。貸してみ?」

老人介護された。
そして自然に携帯を奪われた。
画面を覗くと勝手に友達追加。承認までしっかり終わらせてらぁ。


呆れていると、悪戯が成功したような笑みを浮かべられた。





「返事は絶対1分以内やないとウチ許さへんから」
「束縛系彼女わろた」
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