期末試験 後章-芽吹き-

3



俺から体を離し、丸君の方に身体を向けた遠坂はいつもの調子だった。

「最近図書館でも見かけなかったし、君とは体育祭以来だね〜」
「です、ね……。はい…。」

遠坂と俺と窓の方とを忙しなく見ていく丸君は、大変挙動不審だ。
しかも見えるのはまだ顔だけ。
なんでだよ。

どうしたのか、そう聞こうとして、丸君と目が合った途端逸らされた。
そのいつもと違う丸君の違和感に、さっきまでの遠坂とのハグシーンを見られていたことに気付き、じわじわと顔が赤くなってきた。
顔を下に向け、片手で顔を隠して手のひらを前に伸ばした。

「…丸君、ち、違うから、そういうのじゃないから……。」
「え?!…いや、でも…。」
「ん?」

ピンと来ていない遠坂。
ん?じゃねえんだよ。

俺の発言に察した丸君はまだ戸惑っていたが、意を決した様に本棚の影から身体を見せ、こっちに向かってくるのを指の間から見えた。

聞きたいことがあると言わんばかりに眉を下げて俺を伺う丸君が俺達の前で立ち止まった。

「……あの」
はい。
「…………お2人は、付き合ってたり」
「しません」
しません。

聞かれると思ったよ!
そりゃな!

即答した俺に安心した様な表情をしたが、丸君はまだ少し疑っているらしく遠坂の方を見た。
お前からもなんとか言え。

「な?遠坂」
「ん?…ふふ」
おい。
濁すな。
無駄に怪しくすんな。

「えっ?えっ…?」
「揶揄ってやんなって」

呆れる俺にようやく遠坂が答えた。

「ふふ、反応が良くてつい。ごめんね?付き合ってないよ」
「そうなんですか…そっか…。」

ようやく納得してくれたらしい丸君に安心したが、まだ何か思うところがあったらしく、顔から手を離した俺を見た。
なんか、眉寄ってんな?

「……じゃあ。どうしてお2人は…抱擁、してたんですか?」
抱擁て。

…………。

「…あー、俺、その、たまにフリーハグ開催したりしなかったりしてるから」
「…………したり?」
「……しなかったり……。」
「………………。」

丸君のジト目。
遠坂はもう興味がないらしく本棚の背表紙を見て回っている。
発端はお前なんだから少しは助けようとする意志を見せてくれ。

や、だから!
「第一、まず、俺はおっぱいが大きくて可愛くて元気な女子がいいから…!」

わざわざ俺の方を見た遠坂が笑いながら「ここには居ないねぇ〜」と言った。
お前〜!!!

歯軋りする俺に、丸君が真剣な顔付きで、あの、と声を掛けてきた。

「…身長が大きいは、胸が大きいと条件変更可能でしょうか」
そこ1番変えちゃ駄目だろ。
お前にとってそれありなのかよ。
ストライクゾーン広いな。

無言で手を交差させバッテンを作った俺に丸君は項垂れた。

お前がいいなら……俺は良いと思うぜ…?
人には人の、ド性癖。




「胸が大きいは、男も可ですか」
「食い下がるな…」
「浪漫だね〜」
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