期末試験 後章-芽吹き-

2



少し…って、厳密には何分なんだ……?

遠坂とハグをして暫く。
俺達はまだ同じ体勢だった。
暫く、とはいうものの、それが5分なのかそれ以上経っているのかなんて分からなかった。

気分的には30分は過ぎた。


この空気感で携帯取り出して時間確認するのも憚れるし、図書館の時計の位置もちょうど見えない場所に居る。

人が少ないとは言え、ここでこのままで居るのもな〜〜。
それにしても、腕の中にいる遠坂は大人しく、身動き一つ取らない。
呼吸だけは感じる。

……寝てねえよな?

動けない身体で視線だけを忙しなく動かしていると、正面の本棚から靴先が見えた。

うわ。
え。

焦って、遠坂を離すか、声を掛けるか、俺も顔を隠すか、と選択肢が頭を巡るだけで時間切れになった。

少し見えていた足先の持ち主の頭が視界に入る。
俺より少し背の高く、ショートカットの男子生徒がこちらの本棚を覗こうと首を捻った。
腕に図書委員の腕章を付け、バチっと俺と目があった。
その瞬間、見知った穏やかに見える垂れ目が見開き、すぐにまた本棚の影に身を仰け反らせていった。


………。
ん?


見知った顔だ?


再び、驚いたままの顔だけを覗かせた人物の口が開くのと同時に俺も口を開いた。

「柴先輩?!」
「丸君…?!」

俺達の声に億劫そうに首を起こした遠坂がキョロキョロと辺りを見回し、真後ろに首を捻った。
1テンポ遅れ、丸君に気付いた遠坂は、やっほ〜と言わんばかりに手を振った。

いや、だから。
なんでそんな平常心なんだよお前は。




「久しぶりだね〜」
「そ…うですね」
「そういやそうだった」
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