期末試験 後章-芽吹き-

おすすめの本



今、俺は遠坂と2人で図書館に居る。

遠坂には悪いが、正直どう受け答えをすれば良いのか分からない俺には気まずかった。

とはいえ、実はも何も、こうなった発端は俺だった。

放課後。
借りていたラノベも読む気になれず、結局半分程捲った所で返却の期日になっていた。
だから何気なく「遠坂は図書館行く?」と聞いた。
遠坂は「行こうかな」と答えた。
ただそれだけ。

それだけ、なんだけど。

けど、これまで一緒に行ったことが無かったから想定外の返答だったんだよ。

上野も小森も、いつも通り部活と推し活でもうその場には居なかった。
だから「おけ」とだけ言った。


その結果が、今。


でも案外遠坂を連れてきて良かったかもしれん。
普段見ているらしい、少々変わった本が立ち並ぶ本棚の背表紙を見て回る遠坂の後ろ姿を見てそう思った。


「あ、柴君、これとかどう?」
面白かったよ〜。と背表紙に指を引っ掛け、スルッと取り出した本の表紙を見せてくる遠坂。

マジで俺へのおすすめを探してくれてたのかよ。
大きなフォントで書かれてある文字を目で追う。

世界の未解決事件

気にしてるか?気にしてるんだな???
解決する!するから!!

「………あーー面白そう、だけど、もうちょい平和な奴とかあったりする…?」
「ん〜…。」

遠坂は首を傾け、考える様な仕草をしながら手にしている本を元の棚に戻した。
再び背を向けて歩き出した遠坂は、平和…平和かぁ…。と呟きながら視線を彷徨わせている。


……まあ、遠坂の気が少しでも紛れてるなら良かった、のか。

何読むことになるのかだけは、少し不安だが。




「これとかどう?"毒の図鑑"」
「あーー、そうそうそうそうそんな感じ。近い」
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