期末試験 前章-種蒔き-

嵐の日



ベルの音が耳に入り、シパシパする目を何度か瞬かせて目つきをより一層悪くして辺りを伺った。

くっっっっら。
青暗い視界に自室が映った。
まだ4時なのでは??
そう思って携帯をタップして時間を確認する。
7時2分
瞬きをゆっくり繰り返し、2分が3分に変わった。
のっそり身を起こして窓の外を見ると、嵐の前のように真っ黒な雲が空一面を埋め尽くしている。

え〜〜〜行きたくねえ〜〜〜。

もう一度布団に倒れ込もうかとした所で、隣の部屋のドアが開く音がした。
……こういう時にちゃんと起きるんだからお惶さんはタイミングが悪い。
惶が珍しく俺と同じくらいに起きるなら、俺も起きないとな…。

身を引きずるようにして扉に手を掛け、もう一度窓の方を見た。

……本当に嫌な天気だな。

扉を開いて廊下に足を踏み出し、湿った空気がまとわりつくような不快感を無視して廊下を歩いた。



***

寮を出て、すぐにでも降り出しそうな空を見上げて思わず眉を顰めた。
凛さんに、念の為シャツの下にインナーを着るように言っておいたが、この蒸し暑さだ。
着ないとも限らない。
彼が家を出る前くらいにもう一度言っておくか。

放課後までこのまま持つとも思えないし、放課後は見回りを減らして調査にあてるようにするか。

今日の放課後にミーティングを行うと予め風紀に連絡は入れてある。
俺でも意外だったこの話。
委員はどういう反応を見せるのか、少し楽しみに思った。



***


時間が経過するにつれ、天候は順当とも思える程に悪化した。
パラパラと降り出した雨は昼になる頃には豪雨に至った。

運動部が体育館に押し寄せることに、普段は広々と使えるコートを使えなくなる上野はしょぼくれ、それを見て宥めたり呆れたりする教室がある一方。


窓を打ち付ける雨に感謝する人がいた。



なんて、なんて好都合なんだ!

これまで幾度となく邪魔をされ続け、神も仏も無いのだと、自分の力だけで成し遂げるしかないと、そう思っていた。

そうではないんだね。

これはきっと、僕を後押ししてくれているんだ。

最後に天が味方するのは、やっぱり僕なんだ。
彼を守ろうと動いてきた、この僕が。


この僕が正しいんだ。


普段は鬱陶しく感じる、湿気を含んだ肩まである髪を払い、机の下でタップした携帯の画面にチカっと外から光った一瞬。


映った僕の顔は輝いて見えた。


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