期末試験 前章-種蒔き-

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ジワジワと熱くなってきた顔を隠すため、強引に惶の背中のシャツを掴み直して顔を押し付けた。
眼鏡がずれ上がり、鼻を押さえるプラスチックのパット部分が瞼の横に当たる。

頼むから誰も追及すんな。

なんで俺がこんな羞恥プレイをする羽目になるんだよ。
全ての元凶がこいつに思えてくる…。
巻き込まれた始まりでもあるし間違いじゃねえ。
クソ!おファックですわ!!


……元凶?

待てよ。

はた、と思い返す。
そういえばこいつは毛玉の関わった一連の事件の最初の実行犯なはず。
それから、初犯は失敗を起こしやすいって聞いたことがある。

つまり、加賀屋先輩から聞いた、窄楽って人について犯行の言質を取れる可能性がある?

惶の背中から顔だけ出して、ムカつく顔で俺達の様子を眺めていたピアスマンに声をかけた。

「ピアスマン、聞きたいことが」
「……なんだよ」

きょとんとしたピアスマンは、あ、俺のことかというように返事を返した。
お前しか居ねえだろジャラジャラピアス着けた奴は。

「あの時の、新入生歓迎会のイベの時の指示者について、詳しく」

塩島委員長は明後日の質問をした俺を不思議そうに見ていたが、質問の意図を汲み取ったようで、納得するように頷いた。

「……確かに、そうだな。
あの時はただの親衛隊による制裁としか考えていなかったから深く聞いてなかった、か。
……これまでの一連の事件として、もう一度あなたからは詳細を聞く必要がありそうですね」

唐突に空気が変わり、過去の話に移ったことにピアスマンは困惑していたが、俺と塩島委員長の真剣な顔から自分に持ち札があると思い至ったらしい。
気持ち悪い笑みを浮かべ始めた。

…本当にずっと気持ち悪いな。
そのまま委員長壁にめり込ませてくんねぇかな。
塩島委員長も不快に感じたようで腕をより強く締めあげた。

「わかった!わかったわかった!すんません!話すって!」
「ったく。面倒な手間掛けさせないでください」
やったれやったれ!
拘束された状態のピアスマンに俺の気分は上々だ。

「ただ!…オレにも条件があるぜ。オレにとってあの時の話は不利になるんだろ?」
「…そうなんですか?」

ブラックリスト入りしてるくらいだし、あの時の実行犯として風紀から処罰を受けたことくらいしか知らない俺は塩島委員長に聞いてみることにした。

ピアスマンの発言以降、眉を顰めて柄の悪い表情をした塩島委員長が口を開いた。

「…ええ、その通りです。彼はZクラスで二分している勢力の内の、より凶悪な方に属しています。
そのため、私に売る相手がどうであれ、風紀に協力したと知れたら身に危険が及ぶでしょうね。

それから、柴さんにお伝えしていませんでしたが、体育祭での一件で明確に阻害してきたZクラスの生徒の内、何名かはいつの間にか退学しています。
彼らについてはその後の行方が分からず、コンタクトを取ることができていない状況なので、一連の事件の主犯であるかなどの裏取りができていません。
また、前述のことから、主犯は教師や一生徒を学内から消すことができる人物。つまり、情報を洩らせば消される可能性が高い。と、推察できます」

え。うわぁ…。
もし何か知ってて、漏らしたのバレたらどの角度からもバッドエンドルートか。

ザマァ、とは思う。
ただ、そうだな。

恐らく、体育祭の一件で消えた生徒より持っている情報が少ない可能性は限りなく大きいが、無いよりはマシか。
俺と写真部が何か仕掛けなくとも、現状を打破する何かを持っている、かも、しれない。

塩島委員長の話を聞き終え、揃ってピアスマンの発言を待っていると、さっきよりピアスマンが引き締まった表情になっていたことに気付いた。
神妙な顔付きで口を開く。

「オレ、なんか思ったよりヤバくね?」
分かってなかったんかい。

呆れている俺達を横目にピアスマンが「えーーーじゃあもうオレの条件これしかねーや」と壁に顔を擦り付けてモゾモゾ動き出した。

「…聞くだけは聞きましょう」
ため息を吐いて投げやりに言った塩島委員長にピアスマンは一言。

「つり目くんのおっぱい貸して」




「ア"?」
「は?」
「マジモウムリオマワリサン」
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