期末試験 前章-種蒔き-

3



知られたくことを、知ったこっちゃねえとばかりに平然と俺に投げかけてくるのを怒鳴って場を誤魔化していたが、ピアスマンボケカスがへらへらと近寄って来たのを見て、すぐに口をつぐんで惶の背のシャツを掴んで隠れた。
なんでさっき吹き飛ばされたばっかなのにこっち来れんだよ異常者め。

真上から視線を感じたが、それどころじゃねえんで。
そのまま壁になっててくれ。

横で立っていた塩島委員長は、暫くピアスマンを見て考える様に手を顎に寄せていたが、思い立ったように素早い動きでピアスマンに近付き、腕を捻って壁に押し付けた。
鈍い音と呻く声が静かになった廊下に響く。

「元カレではない、と。分かりました。
…ちなみに、先程思い出しましたが、コレは風紀のブラックリスト入りの3年Zクラスの生徒です。それで、それも踏まえた上でお聞かせください。

柴さん。
コレと、どんなご関係で?」
うわうわうわうわ。

しびれを切らしたらしい。
回答を求めたのはブリザードを纏う風紀委員長、だけではなく、真上から見下ろしてくる惶もだった。
睨んでもいない。が、無言の圧。
4つの眼力が刺さった。
痛い。

無言でいたところで逃れられるはずもなく、誤魔化したところでピアスマンがここにいる以上無駄なことは明白だった。

「………分かりました、話します」ざっくり。

そう切り出し、渋々、警察と泥棒の時の実行犯であり、その際に拘束に協力したのは俺だったこと。
だからアレに顔が知れていることと、それが原因で絡まれていることを白状した。
や、悪いことしてねえんだけど。

2人共あの時駆けつけたメンバーだった為、話はスムーズに伝わった。
まあだから話したくなかったんだが。

それぞれの話を咀嚼する反応に少し重荷が降りた気がした。

が、咀嚼し終えた惶の発言に固まる。

「おい。待て、それでなんで"おっぱい"ってワードが出てくんだよ」
ギクゥ。

上半身を捻って肩を掴んでくる惶。
俺、お前からそのワードちょっと聞きたくなかったな。

現実逃避で誤魔化す時間をロスしたのに気付いたのは、壁に顔を押し付けたままのピアスマンボケカスがこっちを見てニタリと顔を歪めてからだった。

ちょっと。
おい。
口開くな。
やめろ。
「それはね、ジャマされた時に、オレがこの子のおっぱいを開発したか、らっ」

「………………。」
「……………………。」
「………………チッ」

肩から手を離した惶が舌打ちした俺を見て、舌打ちすんのか、と呟いたのが耳に入った。


するだろ。
させてくれよ。
23/33ページ