期末試験 前章-種蒔き-
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オドオドした教師が背を向け、ひたすら傷だらけの黒板に書く文字を適当に板書するだけの時間がやっと終わり、放課後になった。
"あと少しで期末試験なので、提出物の確認をお願いします"と黒板に素っ気なく書かれた文字を見た後、軽い鞄を持って教室を出た。
ダリィ。
そういえば、とレンさんの様子を思い出した。
レンさん、期末試験が近いから授業受けてたのか。
風紀に手を貸してやってる為、単位の面では安泰だ。
だから、俺には関係ねェけどな、と思った。
今日は特に風紀の用は無かったが、レンさんから言われた為、塩島を人目のつかない所に呼び出した。
授業中にラインで伝えようとしたが、長くなりだした文面を見て途中で面倒になったのが直接会う理由だ。
旧校舎近く。
一階の本校舎との渡り廊下が呼び出した先だった。
鐘が鳴ってすぐに向かった俺が先に着いたらしく、塩島の姿は見えなかった。
ラインを開くと、メッセージは『しょうがないですね。私も暇じゃないのですが』の文句で終わったままだ。
当然無視した。
普段顎で使ってんだから来い。
数分待っても来ず、手持ち無沙汰になった俺は弟が最近ハマり出したサッカーのゲームをDSで始めることにした。
持ってきていて正解だった。
花壇に腰を下ろし、暫く育成を続けていると足音がして顔をあげた。
塩島。
「遅ェ」
「あのですね…メッセージ送ったの見てますよね?」
それがどうした。と返そうとして、俺の手元に視線を留めたままの塩島に疑問を抱いた。
なんだよ。
「…何です、それ」
「……DS」
変な奴だ。
何度かディーエス、と呟いた後、考える様に首を傾げた塩島。
……知らねェのか?坊ちゃんだからか?
まさか、と眉間に力が入る俺の視線を感じたのか、塩島が誤魔化す様に両手を振って話を切り出してきた。
「あ、いえ、いえ。何でもありません。
…それで、藤土のことで話とは?」
セーブをしてDSの電源を落とした後、今日で2度目の、レンさんに話した同様の内容を話した。
話を聞き終え一言。
「それ、もしかしなくても柴さんの体験談ですよね」
「……なんでだよ」
「だって貴方が話を聞ける一般の生徒なんて彼くらいしか居ないじゃないですか」
呆れた様に言う塩島に舌打ちを打った。
「それで?その話をわざわざ何故私に?」
「レンさんがお前に伝えとけつったから」
「成る程。言うこと聞くわけです」
うるせェ。
納得して頷く塩島に、これだから面倒くせェ。レンさんから言えよ、と思った。
「それにしても、柴さんは本当に色んな事に巻き込まれるな」
独り言を拾い、内心頷いた。
それは、本当にそうだ。
疫病神でも憑いてんじゃねェか。
実家が寺だから、親父に言えば厄除けくらいしてくれんじゃねェかと思った。
夏は忙しいし親父は「ちょっと無理!」って言いそうだ。
言ってみるなら今週帰った時だな。
校舎を見上げ、明後日の方向に思考を向けていた俺に塩島が「話はそれで以上ですか?」と聞いてきた。
あぁ。と、塩島の方に向き直ろうとした時、二階の校舎の渡り廊下に見覚えのある人影が2つ、目の端に映った。
耳を澄ますと、木々の音に混じり、言い争う様な声が。
目に力を込め、睨む様に誰がいるのか見定める。
認識したと同時に地面を強く蹴って走る。
戸惑う声が背に投げかけられた。
「ちょっと、急にどうしたんですか」
「柚木が上でZクラスに絡まれてんだよ」
「あぁ、そういう。1人だけですし、彼なら大丈夫でしょう。狼谷そんなに心配性だったんですか?」
塩島も見たのか、着いてくる気らしく少し後ろに離れたところでそう呑気に言いだしたのに、言葉尻を強く吐き捨てた。
「その1人が、さっき話した藤土さん側の3年なんだよ」
塩島程呑気に構えていられず、それからは後ろからの声を聞くことをやめ、一刻も早く柴の所へ向かうために足を速めた。
オドオドした教師が背を向け、ひたすら傷だらけの黒板に書く文字を適当に板書するだけの時間がやっと終わり、放課後になった。
"あと少しで期末試験なので、提出物の確認をお願いします"と黒板に素っ気なく書かれた文字を見た後、軽い鞄を持って教室を出た。
ダリィ。
そういえば、とレンさんの様子を思い出した。
レンさん、期末試験が近いから授業受けてたのか。
風紀に手を貸してやってる為、単位の面では安泰だ。
だから、俺には関係ねェけどな、と思った。
今日は特に風紀の用は無かったが、レンさんから言われた為、塩島を人目のつかない所に呼び出した。
授業中にラインで伝えようとしたが、長くなりだした文面を見て途中で面倒になったのが直接会う理由だ。
旧校舎近く。
一階の本校舎との渡り廊下が呼び出した先だった。
鐘が鳴ってすぐに向かった俺が先に着いたらしく、塩島の姿は見えなかった。
ラインを開くと、メッセージは『しょうがないですね。私も暇じゃないのですが』の文句で終わったままだ。
当然無視した。
普段顎で使ってんだから来い。
数分待っても来ず、手持ち無沙汰になった俺は弟が最近ハマり出したサッカーのゲームをDSで始めることにした。
持ってきていて正解だった。
花壇に腰を下ろし、暫く育成を続けていると足音がして顔をあげた。
塩島。
「遅ェ」
「あのですね…メッセージ送ったの見てますよね?」
それがどうした。と返そうとして、俺の手元に視線を留めたままの塩島に疑問を抱いた。
なんだよ。
「…何です、それ」
「……DS」
変な奴だ。
何度かディーエス、と呟いた後、考える様に首を傾げた塩島。
……知らねェのか?坊ちゃんだからか?
まさか、と眉間に力が入る俺の視線を感じたのか、塩島が誤魔化す様に両手を振って話を切り出してきた。
「あ、いえ、いえ。何でもありません。
…それで、藤土のことで話とは?」
セーブをしてDSの電源を落とした後、今日で2度目の、レンさんに話した同様の内容を話した。
話を聞き終え一言。
「それ、もしかしなくても柴さんの体験談ですよね」
「……なんでだよ」
「だって貴方が話を聞ける一般の生徒なんて彼くらいしか居ないじゃないですか」
呆れた様に言う塩島に舌打ちを打った。
「それで?その話をわざわざ何故私に?」
「レンさんがお前に伝えとけつったから」
「成る程。言うこと聞くわけです」
うるせェ。
納得して頷く塩島に、これだから面倒くせェ。レンさんから言えよ、と思った。
「それにしても、柴さんは本当に色んな事に巻き込まれるな」
独り言を拾い、内心頷いた。
それは、本当にそうだ。
疫病神でも憑いてんじゃねェか。
実家が寺だから、親父に言えば厄除けくらいしてくれんじゃねェかと思った。
夏は忙しいし親父は「ちょっと無理!」って言いそうだ。
言ってみるなら今週帰った時だな。
校舎を見上げ、明後日の方向に思考を向けていた俺に塩島が「話はそれで以上ですか?」と聞いてきた。
あぁ。と、塩島の方に向き直ろうとした時、二階の校舎の渡り廊下に見覚えのある人影が2つ、目の端に映った。
耳を澄ますと、木々の音に混じり、言い争う様な声が。
目に力を込め、睨む様に誰がいるのか見定める。
認識したと同時に地面を強く蹴って走る。
戸惑う声が背に投げかけられた。
「ちょっと、急にどうしたんですか」
「柚木が上でZクラスに絡まれてんだよ」
「あぁ、そういう。1人だけですし、彼なら大丈夫でしょう。狼谷そんなに心配性だったんですか?」
塩島も見たのか、着いてくる気らしく少し後ろに離れたところでそう呑気に言いだしたのに、言葉尻を強く吐き捨てた。
「その1人が、さっき話した藤土さん側の3年なんだよ」
塩島程呑気に構えていられず、それからは後ろからの声を聞くことをやめ、一刻も早く柴の所へ向かうために足を速めた。