期末試験 前章-種蒔き-
3-Z
終業の鐘が鳴ってすぐ、柚木から聞いた藤土先輩の話をしに3年の階に向かった。
「よー狼谷どーしたー?」
「ッス、レンさんいつものとこスか」
「アァ、レンさんか。いるぞ」
「アザス」
この階にいるのは基本的にレンさん派しか居ない。
大抵は友好的で、階段でたむろっている先輩達と挨拶を交わしてそのまま進んだ。
レンさんが大体いつも居るのは、クラスの教室だ。
教科書を読んだら分かる授業の時はどこかにふらっと出ているらしいが、今回は授業に出ていたらしい。
俺のクラスより荒れた3年の教室の前に立つとすぐに派手な髪が見えた。
ノックする扉も無い為、そのまま教室に入って声を掛けた。
「レンさん。今いいスか」
「あーー待った」
通りすがりに歓迎の声を掛けてくる先輩達に頭を下げ、窓際の棚に片足を置いて携帯を見ているレンさんに近付く。
すぐ前まで来て暫く経った後。
「…オッケ、何?誰?…って惶か」
「はい」
顔をあげ、俺と目を合わせ、認知したレンさんが真っ直ぐ腕を伸ばして手のひらだけ上下に動かし、俺の頭をボールのように弾ませた。
「………。」
「レアじゃん。何?」
「……ここでは少し」
俺の言葉を聞き、背を丸めて上目遣いで目を射抜いてくる。
「……分かった、ちょっと歩くか!」
聞く必要があると理解してくれたらしい。
足を下ろし、そのまま教室を出ていく後ろ姿に着いていく。
教室から少し歩き、人払いをした空き教室の机に腰掛けてすぐ、立ったままの俺にレンさんが口を開いた。
「それで?風紀のことか?地秋のことか?」
「……!」
「おっ、その反応は地秋の方か」
にゃはは、と笑うレンさんを、目を見開いて驚きを隠せずにいた。
察しが早いのは流石としか。
煙草を取り出し、口に咥えるのを眺める。
一息つくのを見た後、分かっているなら、と話を切り出すことにした。
「…はい。藤土先輩のことで、少し耳に入れて欲しいことが。」
そして、
図書館に居たこと。
一般の生徒相手に騒ぎを起こそうとしたZクラスの生徒を追い払ったこと。
上記を話し終え、煙草の煙を眺めたままの、何を考えているのか分からないレンさんを伺った。
「……へぇ〜…地秋がねぇ…。」
ぽつりと呟いたレンさんが続けて「…あいつ恋したとか無いよな?更生した?だとしたらウケる」と口の端を歪めて俺を見た。
いや…。それはねェんじゃ…。
…ねェよな。
柚木、お前、言ってないことあったりしねェよな。
おい。
言い淀む俺の反応にひとしきり肩を震わせて笑った後、煙草を持った手を振った。
「いや冗談冗談、あいつ、今は俺に復讐することで頭いっぱいな子だから。無えよ、多分」
「……ッスか」
カラッと笑い飛ばしてはいるが、刺さるような圧を出すレンさんを、改めて恐ろしいと感じた。
「それで、燕君にも話した?それ」
「まだです」
「オッケ、じゃーその話、燕君にも話してあげて」
頷くと同時に予鈴が鳴った。
丁度良いタイミングだ。
頭を下げ、空き教室から出ようとした後ろから足音がして振り返る。
レンさんはそのままここに残るものと思っていたが、煙草の火を消して隣に並んできた。
廊下に出て隣を見る。
「次の授業、出るんスか」
「まーな。やっぱ、時代はヤンキーもインテリだから」
レンさんのいつもの決まり文句だ。
別れ際に俺の背を軽く叩き、教室に戻る背を見送った。
「……ハァ。出るか、授業」
終業の鐘が鳴ってすぐ、柚木から聞いた藤土先輩の話をしに3年の階に向かった。
「よー狼谷どーしたー?」
「ッス、レンさんいつものとこスか」
「アァ、レンさんか。いるぞ」
「アザス」
この階にいるのは基本的にレンさん派しか居ない。
大抵は友好的で、階段でたむろっている先輩達と挨拶を交わしてそのまま進んだ。
レンさんが大体いつも居るのは、クラスの教室だ。
教科書を読んだら分かる授業の時はどこかにふらっと出ているらしいが、今回は授業に出ていたらしい。
俺のクラスより荒れた3年の教室の前に立つとすぐに派手な髪が見えた。
ノックする扉も無い為、そのまま教室に入って声を掛けた。
「レンさん。今いいスか」
「あーー待った」
通りすがりに歓迎の声を掛けてくる先輩達に頭を下げ、窓際の棚に片足を置いて携帯を見ているレンさんに近付く。
すぐ前まで来て暫く経った後。
「…オッケ、何?誰?…って惶か」
「はい」
顔をあげ、俺と目を合わせ、認知したレンさんが真っ直ぐ腕を伸ばして手のひらだけ上下に動かし、俺の頭をボールのように弾ませた。
「………。」
「レアじゃん。何?」
「……ここでは少し」
俺の言葉を聞き、背を丸めて上目遣いで目を射抜いてくる。
「……分かった、ちょっと歩くか!」
聞く必要があると理解してくれたらしい。
足を下ろし、そのまま教室を出ていく後ろ姿に着いていく。
教室から少し歩き、人払いをした空き教室の机に腰掛けてすぐ、立ったままの俺にレンさんが口を開いた。
「それで?風紀のことか?地秋のことか?」
「……!」
「おっ、その反応は地秋の方か」
にゃはは、と笑うレンさんを、目を見開いて驚きを隠せずにいた。
察しが早いのは流石としか。
煙草を取り出し、口に咥えるのを眺める。
一息つくのを見た後、分かっているなら、と話を切り出すことにした。
「…はい。藤土先輩のことで、少し耳に入れて欲しいことが。」
そして、
図書館に居たこと。
一般の生徒相手に騒ぎを起こそうとしたZクラスの生徒を追い払ったこと。
上記を話し終え、煙草の煙を眺めたままの、何を考えているのか分からないレンさんを伺った。
「……へぇ〜…地秋がねぇ…。」
ぽつりと呟いたレンさんが続けて「…あいつ恋したとか無いよな?更生した?だとしたらウケる」と口の端を歪めて俺を見た。
いや…。それはねェんじゃ…。
…ねェよな。
柚木、お前、言ってないことあったりしねェよな。
おい。
言い淀む俺の反応にひとしきり肩を震わせて笑った後、煙草を持った手を振った。
「いや冗談冗談、あいつ、今は俺に復讐することで頭いっぱいな子だから。無えよ、多分」
「……ッスか」
カラッと笑い飛ばしてはいるが、刺さるような圧を出すレンさんを、改めて恐ろしいと感じた。
「それで、燕君にも話した?それ」
「まだです」
「オッケ、じゃーその話、燕君にも話してあげて」
頷くと同時に予鈴が鳴った。
丁度良いタイミングだ。
頭を下げ、空き教室から出ようとした後ろから足音がして振り返る。
レンさんはそのままここに残るものと思っていたが、煙草の火を消して隣に並んできた。
廊下に出て隣を見る。
「次の授業、出るんスか」
「まーな。やっぱ、時代はヤンキーもインテリだから」
レンさんのいつもの決まり文句だ。
別れ際に俺の背を軽く叩き、教室に戻る背を見送った。
「……ハァ。出るか、授業」