期末試験 前章-種蒔き-

3



ラノベに語りかけてる痛いことをしてる間に開いた扉。

眩しい視界。
煙草を手にしたままドアノブを持ったヤンキーの背後に焦げた匂いの正体が判明。
対峙しているヤンキーとは別の、もう1人のヤンキーが庭園の花に煙草を押し付けていた。

なぁんだ、良かった良かった。
ヤンキーに無碍にされたラノベは無かったと。
でも花は苗を提供してる花道部に怒られるゼ。

あー良かった。
くるっとその場で90度回転して回れ右。
さあ帰ろう!

「おいおいおいおい、どこ行こうとしてんだよテメー」

とは行かないですよね。

首元のシャツを掴まれ、後ろに引かれてよろける。

「テメー見たよな??オレらが吸ってんの見たよな??なァ???!」

答えを求めてない疑問を投げかけるのは俺どうかと思う。
そういうとこだと思う。

シワになりそうな程握られた首元のシャツは離されない。
というか揺さぶられてる。
やめろ。

うるさく騒ぎ出すヤンキー2人を無視してどう行動するか思考を巡らせる。
王道ルートなら、この後サンドバッグか金せびられるだろ?
いや、金持ってるはずのヤンキーの癖にな。草。

どっちも嫌。

引きずられ、あっという間に庭園に足が付いていた。
息苦しさに咳き込みながら2人を覗き見る。
どっちもマッチョってわけじゃなさそうだし、なんとか軽傷で逃げれそうだ。
何発かは覚悟してる。

俺を捕まえたままのヤンキーが扉から手を離そうとしていたのを見て、腹を括る。
スムーズに逃げるには、扉が閉まるまでがチャンスだ。

まだ掴んでいるヤンキーは背後に居る。
鳩尾に肘を喰らわせようと腕を曲げた。


「逃げようとか考えてんじゃねェだろーな」
声と共に、目の前に赤くチリチリと燃えた煙草の先が見えて思わず固まった。

「っ…!」
押し付けるように煙草を向けてきたのは、前に居たヤンキーだった。

動かなくなった俺の顔を見てにやにやとした奴の顔を見ている間に、背後から扉が閉まった音がした。



「………。」
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