期末試験 前章-種蒔き-

新刊探し



放課後になり、夏休み後に大会がある上野は追い込みで練習試合が近いらしく、今日も元気に廊下を走って行った。
走るな。
小森は所属してる親衛隊で差し入れ用のお菓子作りがあるらしく、廊下の窓から声をかけてきた数人のチワワとキャッキャッして教室から出て行った。
女子か?

荷物をまとめて隣の席を見ると、遠坂がまだ席でノートを開いたままだった。

「まだ帰らねえの?」
「うん。まだ少しだけ」
「そっか」

その場を離れようとしたが、遠坂の机に貸出用のバーコードが付いた、B6サイズの本が1冊裏向けてあることに気がついた。

「なあそれ、読み終わってる?」

俺の視線を辿って本を認識した遠坂が、あぁ、と納得したように頷いた。

「うん、今日読み終わったんだ〜。面白かったよ、柴君も読む?」
いつもの調子で手渡されて表紙を見た。

"注意!危険植物大図鑑"
………。

「……いや、いい」
「そう?」

本を受け取ろうと手を伸ばす遠坂を見ながら鞄を背負い直した。

「これから図書館行くんだけど、これもう読まないなら返しとこうか?」
「ほんと?…じゃあ、手間じゃ無いならお願いしようかな」
「おけ」
「ありがと〜」

重ねて礼を言う遠坂と別れ、本を持ったまま廊下を進んだ。


図書館に着き、重めのガラス戸を押し開いてそのまま受付に向かう。
本の貸し出しはレンタル店みたいなシステムだ。
借りる際はIDが連携されている学生証を通して、返す際は受付に渡すだけでいい。
受付は図書館の入り口すぐだし、遠坂から受け取った本を返すのは特段手間ではなかった。
受付でシンパシーを感じる雰囲気の男子生徒に遠坂から預かった本を渡して辺りを見回した。

軽く見た感じはー……居ない、か。
しょうがねえ。
とりあえず新刊コーナー見に行くか。

気になってた新刊は、好きなラノベ作家のものだ。
新シリーズになる、かもしれない。らしい。
ネットで見てると高評価だから楽しみ。

同じフロアの新刊コーナーの棚を見に行き、上から下まで目を通した。

……無い。
いやいや。

もう一度。と、あらかじめスクショしていた画像と照らし合わせたが、何度見てもここには無かった。

検索機械で調べると、あるのはあるらしいのが分かった。
返却棚を念の為見に行き、無いことも確認。

………しょうがねえ、探すか。

中央の階段を登る。
漫画(先生方のお眼鏡にかなった)とラノベや美術本、文庫本は2階にある。
1階を軽く見たところ丸君居なかったし、ついでに探すか。




(にしても人が少ねえ。試験までまだ日があるからか。)
13/33ページ