新入生歓迎会するんだってよ

いよいよ新入生歓迎会!


決意をして、あれから1週間。
律儀にも惶は毎日ちゃんと一緒に朝食を摂っている。お陰で何故か俺まで健康的に。これが策略なら大成功だぜお惶さん。

ただ、学校に行くかは別で、半々くらいの割合で送り出される。今日は来なかった。いや来いよ。


決意も変わらず、現状維持のまま。
勿論たまにどうでもいい事とか話したりするけど。俺の今読んでる漫画とか聞いてくるし。昨日はハイキュー貸した。面白いよな。俺ノヤっさんが好き。


そういや惶のハマってるDSのゲームについても、そろそろ聞きたいもんだ。



で、今日は来週が新入生歓迎会の土日を抜いた前日。所謂"総合学習"のような時間が6限目に設けられ、放送での説明が行われることになった。


6限のチャイムがなり終わり数分。小森がチワワ達と一緒に録音の準備を済ませていて心の中で称賛。素人目にも分かる、良いやつやろその機材……。


チワワ達が群れて自由ができるこの時間。お察し、殆ど休憩時間と変わらない。友達の席で話してたり、スマホ触ったり、各それぞれ自由だ。ま、担任がそもそも放任主義だからしょうがない。今だって担任用の机で寝てやがるし。


俺も上野と遠坂と駄弁っていて10分程経った時、スピーカーからノイズ音が。俺達は耳を澄ませ、チワワ達は目付きが変わる。
やっとか。


ザザッと鳴った直後。


「はあーいお待たせー!ちょっとまだ準備がアハハハハ終わったなんで始まってアッハハハハねー!ちょっとみんなうるさいってー!だめだめアー!ちょっとー!アイツ抑えとけ待って待ってアー!切れアーッハッハッハッハッハ!!


ヒーーーーーッ!!!」ブツッ


4、5人の声が混じった騒音が終始鳴り響き、笑い声を最後に、切れた。



なんて酷い放送事故。


その筈が、チワワにしてみればご褒美らしい。楽しそうで嬉しい、とか、スピーカーに向かって拝んでたり。
嘘だろ、感涙してるやつまで……!
まるで配給が無い古のオタクである。
誰が誰かなんて全く分からなかったにわか俺氏とは大違いだ。


そう、にわかであるクラスメイト含め俺らはというと……肩を震わせてた。


無理。

最後のさんまさん引き笑いでノックダウン。
困惑の表情の遠坂の隣で、上野と小声で文句を言い合う。


「おい上野笑うなって!」
「フッフフ、柴も笑ってるし、ンフ、人のこと、言えないって、ンンッ……ふー……」
「ブフッ、ゴホンオホン、ヤバいツボる、グフッ……はーーーーー…………」


顔を見合わせ


「「ッッッヒーーーーッ!!」」


俺は堪え切れない笑いを必死に机に押し潰したが、後ろに立ってた上野は崩れ落ちた。辛うじて俺の椅子の背もたれに縋り付いてるけど、やめろやめろ離してほんと、その振動にすら笑っちゃうから今。


笑いの波も収まり、あまりの脱力感に机に突っ伏して何も話せなくなった時、再び放送が。


「フーフフンフフフフーフフンンン〜ンーンーンーン〜……えー始まったな、今年第1回目になります生徒会ラジオ通信。いつも聞いてくれて感謝する。パーソナリティは俺、生徒会会長の氷室(ヒムロ)がお送りする」





「早速だが、これからお送りする

\""月曜なぁに?""/

…このコーナーはリスナーに月曜日に開催する新入生歓迎会の内容を考えてもらうコーナーだ。沢山のお便り感謝する。」
なんだそれは。


なんだこれは。


今度は鼻歌で始まった校内放送ラジオとやらに困惑するチワワ除く一同。

きた!ってチワワと言ってる小森を見るに、親衛隊ではメジャー?聞いたこと無いんだが??
突然始まる落ち着きのある本格的(?)なラジオ。温度差が激しい。


「そこで、コーナー毎にゲストを招いてる。紹介しよう、副会長の桜島(サクラジマ)だ。」
「アッハッハ!ハッハッハ!ヒィ」
「以上だ。」
そんな馬鹿な。


や、確かに腹一杯。
笑う気力はもう無い。


ってか副会長だったんかい。


「ハー…で、何?僕この台本読めば良いの?凄い書いてるんだけどアッハッハッハ!多くないこれ!」
「喧しいから退場だ。連れてけ」
「え?本気?もう?!アッハッハッハ!!!お腹痛いって!アハハハハッッヒーーーーッ!」
「チェンジ」
チェンジ。

音声がぶつ切りになり、再びさっきは聞こえなかった穏やかなBGMが流れた。さっきは笑い声がBGMだったから聞こえなかったんだな。


副会長……あんな感じだったのか……。


親近感を抱いたけど、俺の中の勝手な幻想理想は笑い声によってバッキバキに砕かれた。
あゝ大人版オリヴィア…………


大差無かった。
無問題。


「…静かになったな。さて、月曜日に行う新入生歓迎会だが、最終決定は、……"警察と泥棒"で決まった。

\ヒュー!イェーイ!パチパチパチ!ドンドンパフパフ!/

…感謝する。地域によっては、ケイドロ、ドロケイ、等と略すこともあるそうだ。細かいルールなどについてはラジオ放送後に冊子を配るのでよく読んでおくように。」


はーーい!!と校内に低高の良いお返事が響き渡った。


あれ、そういやケイドロって基本的に鬼ごっこと変わんなくね?捕まった後また逃げれるかくらいしか。
ルールサボったか?

「鬼ごっこと変わんなくね?ルールサボったか?とでも思ったかそこの貴様、」
エスパーにしか思えない会長の言葉に心臓が跳ねた。ビクリ。


「確かに殆どのルールは丸パク……参考にしてやった。だがこの、"警察と泥棒"には、去年とは違う、タノシーイ付属品を作った。」付属品?


「その名も、"ロバガチャ"」

ロバ……。
…………………。
robber…………?いやネーミングセンスを本気で疑う。直訳じゃねえか。


「当日、警察、泥棒ごとに別々の体育館に集まってもらう。バングルは昨年同様だが、今年はさらに泥棒側にランダムに3つ迄のアイテムが入った黒い袋を渡す。…実は全15種ある。」

15種。
もしやそこしか凝ってないだろ生徒会。


「どう使うか、または使うかは自由だ。是非有効活用してもらいたい。さて、続いては次のコーナー」

言葉を切ったと同時に音楽が切り替わり、今度はロックな音楽に。


「\""これだけは聞いてくれー!""/

……このコーナーはこれだけは伝えておきたいことを叫ぶコーナーだ。こちらも沢山のお便り感謝する。」

ところで誰が送ってんの?親衛隊?


「その中から1つだけ選んだ。それを次のゲストが読ませて貰う。
さて、紹介する。次のゲストはこの方、簿記の木雨(キウ)だ」
「よろしゅうお願いしますー」

とてつもなくやる気の無さそうな関西弁が聞こえてきた。いや、やる気が無いというより、気力が無い方が近い?


「え?これ俺が自分で?あー、はーいじゃあー読みますねー、ペンネーム"生徒会辞めたいさん"からもらいました、おおき」
「タイムだ」
ブツッ。




「失礼。簿記が間違えたようだ。続きを」「………………ペンネーム"生徒会万歳やわクソったれ"さんからもらいました、ほんまおおきにどーも……」

生徒会にかなりの恐怖を感じた。

と、同時にお便りを出した人物も判明した。


「"いつもお疲れ様です俺。今回のコーナーで言わせてもらいたいのは、新入生歓迎会のルールについて"…ということで、ここからは俺が代弁させてもらいますー。
さっき生徒会長が、詳しくは冊子配る、とか言うてはったけど、その中でも覚えててほしい事を数点ピックアップしましたんで。」

ボソッと、読まんやつもおるやろうし、そう簿記がすらすらと話し出した内容は要点が纏まっていて分かりやすかった、と思う。
上野と、直接机に絵しりとりを開催して白熱してたから正直あまり聞いてない。

一般生徒は日曜日のみ寮から出るな、警察側は最初に1人1つ手錠が配られる、泥棒側は1年と生徒会長役員ってことだけは聞こえた。

芸術性の高い俺らの絵が暴走し出したところで苦労人らしき簿記の話が終わり、次のコーナーにいつのまにか移ったようだった。


「…ゃ…ぃどーもぉ、会計の秋葉 綺羅(アキバ キラ)だーよ、きらりんって覚えてねぇ〜。おれは1日の流れを言うね、っと」

幼少の頃どこかで聞いたことがあるようなきらりんの革命の話しはさておき。
ここは聞いといたほうがいいか。


「ここだけを読め」
「ここ?えーと、朝9時に各体育館集合。イベント終了が11時、12時に余興。お昼の1時くらいに交流深める立食パーティー。で、3時くらいには自由にかいさーん!
わ〜、お昼寝できるねぇ」
そうだねぇ

なんてこったい。大雑把すぎて聞いた意味無かったかなこれ。


「フーフフンおっとフフフそろそろフーフフンンン〜ンーンーンーン〜

……残念だがタイムアップのようだ。我々が企画した新入生歓迎会の事がこれで理解できたか?よろしい。それでは月曜に会えることを楽しみにしている。 

see you next week. Goodbye」

最後の発音の力の入れよう草。元々流暢で得意なのか…そこだけ物凄く練習したのか…。



リズムの狂った異様な、音楽とも呼びづらい音が最後に2分程流れ、鳴り止まぬ拍手喝采と共に放送は終了した。




放送終了後。手元には冊子が。
それを一度パラパラと流し読みをし、


机に置いた。





「よーし!さーー帰ろ帰ろ」
「おれも今週は部活休みなんだって〜!一緒にかーえろ」
「2人共…この…行事にしては分厚い冊子は持って帰らないの…?」
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