期末試験 前章-種蒔き-

肉と野菜炒めを一部トレードしました




担任が試験について言及してから数日経った昼休み。
食堂で聞こえる話題は親衛隊の話を除きある程度同じだった。
主に、期末試験の話や、その後の夏休みの話。

タオルを頭に乗せたままの男子のすぐそばの席に座る。
通りすがりに鼻につく塩素の香りがした。
もう水泳の授業が始まったところがあるらしかった。

人気メニューを選んでしまった遠坂を席で待っている間、俺達の話題も自然と周りと同じになった。

「そういえば、Bクラスの親衛隊の子によると、Bクラスの古典は試験ギリギリまで範囲するらしいよ」
うわ大変。
いや、むしろ記憶が新しいから逆に覚えてるもんか?

「Bクラスといえば、毛玉もそうだったよね〜」
「あー。だったっけか」

毛玉なー…。
肘を机につき、無意識に手を首の後ろに伸ばした。
最近毎朝塗っている背骨辺りをシャツの上から確認するように数本の指で撫でる。

「授業が遅れてるのも"その"毛玉のせいらしいね」
手持ち無沙汰に髪を触る小森が、そのまま不機嫌な顔で「ぜっっっったい探してる人見つかっても口止めしてやる…。」と憎々しげに呟いたのが聞こえた。
それは助かる。
ただこのまま話が膨らむのはちょっと避けたい。

「話戻すけど、そろそろ試験だけどお前大丈夫?提出物とか早めに確認しとけよ」

正面に座っている上野と視線を合わせて言った。

「大丈夫じゃないと思う!!」
笑顔で言い切んな。
「僕のノートで良ければいつでも言ってね!」
お前は甘やかすな。
隣なんだから起こせ。
「ごめんね待たせちゃった。それで、どうしたの?テストの話?」

トレーが空けていた隣の席に置かれ、遠坂がやっと来たのが分かった。
お、選んだの北海道フェアの豚丼だったのか。
艶々と輝く肉と香りで一気に空腹を自覚する。
美味そう。

「そう、上野の提出物の話。それにそんな待ってないから全然」
「いいから座りなよ。食べるよ」

小森の一声でそれぞれ手を合わせ、昼飯にありついた。
…そのー、美味いし安いけど、野菜炒め飽きてきたな。




「遠坂それ美味い?」
「うん。美味しいよ〜食べてみる?」
「明日はおれも北海道フェアのやつにしよっかな〜」
「上野くんっコロッケとじゃがバターならすぐ買えるみたいだよ!」
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