期末試験 前章-種蒔き-
4
話を全て聞き終え、疲労感に背もたれに体重を預けた。
あーーー良い椅子。
カップを口元に運ぶ。
あーーーー美味。
社会人になったらコーヒーメーカー買うか。
学生の短期バイトくらいで手の届くもんじゃないだろこれ。
写真部にはなんであるのか?
知るか。
俺の所作をずっと面白そうに見ていた加賀屋先輩はカップから口を離した。
「それで、どうカナ?」
どうもこうもねえだろ。
「確信得るにはそれしかないんだろうな、とだけ。
……てかマジでやるんすか」
「やるヨ!ねぇクラブズ」
「「「「いぇ〜〜い」」」」
アトラクション乗るんじゃねえんだけど??
作業しながらも聞こえていたのか、すぐに軽いノリの返事が返ってきた。
当然ながら、ここのメンバーは既に話が通っているらしい。
特に、話の要となる一葉君は、毛玉とよく似たアフロのカツラを夏のライブのように振り回している。
それは、やめといた方が良いんじゃないか…?
見た目が幼い一葉君達に不安を覚え、ある提案が思い浮かんだ。
俺よりも一葉君の方が適任かもしれんが、一回俺で失敗したくらい、大丈夫だろ。
「…あー、のですね。俺があれ、やってみてもいいです…?ダメ元で」
部屋にいる全ての人間が動きを止め、怯んだ。
……ダメ?
目を丸くして笑みを引っ込ませた加賀屋先輩。
そのまま口を開き。
「ホントに?ホントのホントにうーたんがやるの???」
怒涛の反対を食らった後、ワンチャンあるかも、と折れなかった俺にとうとう加賀屋先輩が折れた。
暗い部屋から写真部の普通の部室に出た際、眩しさに目を細める。
ぶつぶつまだ言っている方に顔を向けた。
気が進まないと全身で表現する加賀屋先輩は、閉めた扉の無造作に貼られたポスターに背を押し付けていた。
「じゃあ、日程はまた後日?」
「…え〜〜〜……うーん……うん…。」
下を向いて何度も俺と床とを往復させる目が物凄くわざとらしい。
そんな嫌がることを後輩にやらそうとしてたの、どうかと思うぜ。
フォローする必要性を感じず、じゃ、と扉に向かうと、加賀屋先輩が大股で俺の横を過ぎて先に扉に着いた。
同じくらいの身長の癖に足の長さアピールかポッター。
そう思ったが、振り返ることなく扉を開けて左右に首を振って外を確認する加賀屋先輩を見て思い違いだと気付いた。
勝手に気まずさを覚え、いや、俺も同じくらい足長いから、と内心言い訳をした。
「いーよ、うーたん」
大きく扉を横にスライドして、丁度1人分通れるくらいで加賀屋先輩が横にずれた。
「…ありがとうございます」
「うん。…じゃーまたネ」
「はい」
扉から頭を覗かせたまま見送ってくれた加賀屋先輩に頭を下げた後、前を向いて廊下を歩いた。
日が暮れたオレンジ色の光が窓のガラスに反射して廊下はより明るく見える。
こんな穏やかにあの加賀屋先輩と別れるとはな。
不思議と少し晴れやかな心地だった。
ただなんか。
なんか、引っかかってる気も。
「あ"ッコップ?!!」
「ウヒヒィッはぁっはぁっうーたんが飲んだコップ、…コップは…どこォ……?」
「除菌シートで拭いて置いといたよー」
「持って帰る時ぬれちゃうもんねー」
「オレらやさしいねー」
「うーたんにもやさしいねー」
話を全て聞き終え、疲労感に背もたれに体重を預けた。
あーーー良い椅子。
カップを口元に運ぶ。
あーーーー美味。
社会人になったらコーヒーメーカー買うか。
学生の短期バイトくらいで手の届くもんじゃないだろこれ。
写真部にはなんであるのか?
知るか。
俺の所作をずっと面白そうに見ていた加賀屋先輩はカップから口を離した。
「それで、どうカナ?」
どうもこうもねえだろ。
「確信得るにはそれしかないんだろうな、とだけ。
……てかマジでやるんすか」
「やるヨ!ねぇクラブズ」
「「「「いぇ〜〜い」」」」
アトラクション乗るんじゃねえんだけど??
作業しながらも聞こえていたのか、すぐに軽いノリの返事が返ってきた。
当然ながら、ここのメンバーは既に話が通っているらしい。
特に、話の要となる一葉君は、毛玉とよく似たアフロのカツラを夏のライブのように振り回している。
それは、やめといた方が良いんじゃないか…?
見た目が幼い一葉君達に不安を覚え、ある提案が思い浮かんだ。
俺よりも一葉君の方が適任かもしれんが、一回俺で失敗したくらい、大丈夫だろ。
「…あー、のですね。俺があれ、やってみてもいいです…?ダメ元で」
部屋にいる全ての人間が動きを止め、怯んだ。
……ダメ?
目を丸くして笑みを引っ込ませた加賀屋先輩。
そのまま口を開き。
「ホントに?ホントのホントにうーたんがやるの???」
怒涛の反対を食らった後、ワンチャンあるかも、と折れなかった俺にとうとう加賀屋先輩が折れた。
暗い部屋から写真部の普通の部室に出た際、眩しさに目を細める。
ぶつぶつまだ言っている方に顔を向けた。
気が進まないと全身で表現する加賀屋先輩は、閉めた扉の無造作に貼られたポスターに背を押し付けていた。
「じゃあ、日程はまた後日?」
「…え〜〜〜……うーん……うん…。」
下を向いて何度も俺と床とを往復させる目が物凄くわざとらしい。
そんな嫌がることを後輩にやらそうとしてたの、どうかと思うぜ。
フォローする必要性を感じず、じゃ、と扉に向かうと、加賀屋先輩が大股で俺の横を過ぎて先に扉に着いた。
同じくらいの身長の癖に足の長さアピールかポッター。
そう思ったが、振り返ることなく扉を開けて左右に首を振って外を確認する加賀屋先輩を見て思い違いだと気付いた。
勝手に気まずさを覚え、いや、俺も同じくらい足長いから、と内心言い訳をした。
「いーよ、うーたん」
大きく扉を横にスライドして、丁度1人分通れるくらいで加賀屋先輩が横にずれた。
「…ありがとうございます」
「うん。…じゃーまたネ」
「はい」
扉から頭を覗かせたまま見送ってくれた加賀屋先輩に頭を下げた後、前を向いて廊下を歩いた。
日が暮れたオレンジ色の光が窓のガラスに反射して廊下はより明るく見える。
こんな穏やかにあの加賀屋先輩と別れるとはな。
不思議と少し晴れやかな心地だった。
ただなんか。
なんか、引っかかってる気も。
「あ"ッコップ?!!」
「ウヒヒィッはぁっはぁっうーたんが飲んだコップ、…コップは…どこォ……?」
「除菌シートで拭いて置いといたよー」
「持って帰る時ぬれちゃうもんねー」
「オレらやさしいねー」
「うーたんにもやさしいねー」