土器土器体育祭
???【終】
「ただいま〜」
流石の重みから解放された肩を回しながら、靴を脱いでリビングに入る。
「おかえりなさい」
やっぱり起きてたか。
遠坂はそう思った。
椅子に座り、机に広げたプリントを眺めていた塩島が顔をあげ、口元に笑みを浮かべて遠坂を見ていた。
明かりがついていたし、何より先に寝たことが無いから、遠坂は塩島が起きていることは分かっていた。
気にしないで寝ればいいのに。と、言っても無駄であることを心の内で呟いた。
塩島が頑固なことは誰よりもよく知っている。
「お疲れ様だね。まだ仕事してるの?」
「仕事、と言うよりは今日のことを思い返して頭で整理しています」
勤勉だな〜と遠坂は呟いた。
キッチンで手を洗った後、コーヒーを2つ用意すると、塩島の前の椅子に座った。
1つを塩島の前に置いて、礼を言われた遠坂が頷いてコーヒーを一口飲んだ。
コップを置いた遠坂が顎に手をやり、体育祭であった出来事を振り返っていると、意外な人物を目にしたことを思い出した。
「そういえば」
「はい」
プリントから顔をあげて俺を見る塩島に続ける。
「昨日のことだけど、久しぶりに飛鳥君見たなぁ。元気そうで良かったよ」
「あぁ…はは。校庭で話してた所見てらっしゃったんですね。カシラも寂しがっていると伝えておきましたよ」
塩島から学内に居ることは聞いていたが、機会が無く、これまで会わなかった3年Zクラスのリーダーとなっているらしい飛鳥蓮。
地元で族をまとめあげていたが、ここでも頭角を表していた飛鳥に遠坂は感心していた。
流石、父さんに好かれるだけはある。
それより、と一転して声を潜ませる塩島。
「…プールの時、柴さんに見られましたか?」
「うーん…どうだろうね。ただ、俺の背中を見たのは視界に入ったよ」
聞かれた遠坂は、柴が息苦しそうに咳をしながら、自身の背中を見ていた様子を思い返した。
ジャージ着てたし、見られることは無いだろうと中に何も着ていなかったから濡れた服からはばっちり透けて映っていただろうなと思った。
顔を顰める塩島。
「それで…口止めは?対策はしたんですか?」
「してない。聞かれてないしね」
唖然として遠坂を見る塩島。
この方が何を考えているのかわからない。
俺だけが振り回されてばかりだ。
塩島が頭を荒く掻いて携帯を操作し始めるのを遠坂が声をかける。
「何する気?」
「柴さんに口止めです」
「するな」
鋭く端的な命令に手が止まる。
「………どうしてですか」
「分かるだろ?まだ決まったわけじゃ無い。それに…柴君は誰にも言わないよ」
「…いくら"友達"とは言え、若は柴さんに甘くないですか」
渋々画面を落とした塩島が睨むように見る。
「…そうかな。正しい評価をしてるつもりだけど」
嘯く遠坂を見ていたが、やがて諦めたのか、力を抜いて腕を足に置き、アピールするように塩島は大袈裟にため息を吐いた。
「…俺は知りませんからね。カシラに怒られることになっても」
「ふふ、今更こわくないよ」
相対的な表情を互いに見せ、その場は解散
に思えたが、髪を掻き上げた遠坂が身を乗り出して両肘を机に付き、塩島をにこにこと楽しそうに見たことにより、塩島は嫌な予感を察知した。
「そ、そういえば、焼肉、楽しかったですか?参加するなんて珍しいと思っていたのですが」
「うん。楽しかったよ」
「それは良かったです」
「それでね、燕」
「はい」
「保健室で言ったけど」
「…はい」
「今日、何があったのか、聞かせてくれるよね?全部」
「………はい、勿論です」
カシラと同じ雰囲気を意図して纏う遠坂に、逃がすつもりは無いと言外に告げられたのを理解する。
作成したプリントを1枚手に取ると、塩島が体育祭を通しての出来事を静かに話し始めた。
疲れが残っている中、この部屋の住人はまだまだ寝れそうに無かった。
「あのさ〜…なんで話してくれなかったの」
「こんな、馬鹿の騒ぎに若を巻き込めるわけないじゃないですか…!!」
「ただいま〜」
流石の重みから解放された肩を回しながら、靴を脱いでリビングに入る。
「おかえりなさい」
やっぱり起きてたか。
遠坂はそう思った。
椅子に座り、机に広げたプリントを眺めていた塩島が顔をあげ、口元に笑みを浮かべて遠坂を見ていた。
明かりがついていたし、何より先に寝たことが無いから、遠坂は塩島が起きていることは分かっていた。
気にしないで寝ればいいのに。と、言っても無駄であることを心の内で呟いた。
塩島が頑固なことは誰よりもよく知っている。
「お疲れ様だね。まだ仕事してるの?」
「仕事、と言うよりは今日のことを思い返して頭で整理しています」
勤勉だな〜と遠坂は呟いた。
キッチンで手を洗った後、コーヒーを2つ用意すると、塩島の前の椅子に座った。
1つを塩島の前に置いて、礼を言われた遠坂が頷いてコーヒーを一口飲んだ。
コップを置いた遠坂が顎に手をやり、体育祭であった出来事を振り返っていると、意外な人物を目にしたことを思い出した。
「そういえば」
「はい」
プリントから顔をあげて俺を見る塩島に続ける。
「昨日のことだけど、久しぶりに飛鳥君見たなぁ。元気そうで良かったよ」
「あぁ…はは。校庭で話してた所見てらっしゃったんですね。カシラも寂しがっていると伝えておきましたよ」
塩島から学内に居ることは聞いていたが、機会が無く、これまで会わなかった3年Zクラスのリーダーとなっているらしい飛鳥蓮。
地元で族をまとめあげていたが、ここでも頭角を表していた飛鳥に遠坂は感心していた。
流石、父さんに好かれるだけはある。
それより、と一転して声を潜ませる塩島。
「…プールの時、柴さんに見られましたか?」
「うーん…どうだろうね。ただ、俺の背中を見たのは視界に入ったよ」
聞かれた遠坂は、柴が息苦しそうに咳をしながら、自身の背中を見ていた様子を思い返した。
ジャージ着てたし、見られることは無いだろうと中に何も着ていなかったから濡れた服からはばっちり透けて映っていただろうなと思った。
顔を顰める塩島。
「それで…口止めは?対策はしたんですか?」
「してない。聞かれてないしね」
唖然として遠坂を見る塩島。
この方が何を考えているのかわからない。
俺だけが振り回されてばかりだ。
塩島が頭を荒く掻いて携帯を操作し始めるのを遠坂が声をかける。
「何する気?」
「柴さんに口止めです」
「するな」
鋭く端的な命令に手が止まる。
「………どうしてですか」
「分かるだろ?まだ決まったわけじゃ無い。それに…柴君は誰にも言わないよ」
「…いくら"友達"とは言え、若は柴さんに甘くないですか」
渋々画面を落とした塩島が睨むように見る。
「…そうかな。正しい評価をしてるつもりだけど」
嘯く遠坂を見ていたが、やがて諦めたのか、力を抜いて腕を足に置き、アピールするように塩島は大袈裟にため息を吐いた。
「…俺は知りませんからね。カシラに怒られることになっても」
「ふふ、今更こわくないよ」
相対的な表情を互いに見せ、その場は解散
に思えたが、髪を掻き上げた遠坂が身を乗り出して両肘を机に付き、塩島をにこにこと楽しそうに見たことにより、塩島は嫌な予感を察知した。
「そ、そういえば、焼肉、楽しかったですか?参加するなんて珍しいと思っていたのですが」
「うん。楽しかったよ」
「それは良かったです」
「それでね、燕」
「はい」
「保健室で言ったけど」
「…はい」
「今日、何があったのか、聞かせてくれるよね?全部」
「………はい、勿論です」
カシラと同じ雰囲気を意図して纏う遠坂に、逃がすつもりは無いと言外に告げられたのを理解する。
作成したプリントを1枚手に取ると、塩島が体育祭を通しての出来事を静かに話し始めた。
疲れが残っている中、この部屋の住人はまだまだ寝れそうに無かった。
「あのさ〜…なんで話してくれなかったの」
「こんな、馬鹿の騒ぎに若を巻き込めるわけないじゃないですか…!!」
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