土器土器体育祭

焼肉!!!



120分コースだったらしく、先生が腕時計を見たままテーブルに近づいて来た。

食欲の化身である男子高校生にかかれば120分で大満足だった。
それぞれ腹を撫でて重そうに立ち上がる。

店員にありがとうございます、などと次々に声を掛けて先に店外に出て、先生が現れるのを待った。

ありがとうございました、と店員の声が聞こえ、先生が出てくる。
服を捲り、財布をポケットに仕舞いながら扉を閉める先生に揃って腰を軽く折った。

「「「ご馳走様でした!」」」
「「ありがとうございました!」」

先生が手を上げて口元を緩める。
「いっぱい食べたみたいだな〜。店長がビビってた」
「めっちゃ美味かったです!」
歩き出す先生に着いていきながら陽キャ達が感想を言い始める。

「また連れてってください!」
「ちょっとそれは無理」
即レス。

ぞろぞろと、来た時よりのっそりと全員でバスの送迎場所に向かうとバスが停まっていた。
この時間の便は無いはずだ。
どうやら先生がお願いしてくれていたらしい。

全員でバスに乗り込み、満員電車のような密で出発した。
座る場所が無く立っていると、座っているクラスメイトの中には疲れ切ったのか、15分くらいの時間で寝てしまった奴がちらほら見えた。

降りる時には口数が減り、ほとんどの奴が眠そうな顔付きになっていることを俺の隣に立っていた先生が揶揄った。

「よく寝れそうでなにより」
街灯に照らされた先生の顔を見る。
いつもより目が開いてない。
…そういや、先生も走ったもんな。

「先生もよく寝れそうですね」
口角をわざと上げて言うと、先生がゆっくりと手を自身の顔に持って行った。

「……そんな顔してるか?」
心外そうに言う先生に思わず吹き出して頷いた。
「お疲れ様でした」
「いやぁ疲れたほんと…。」
先生って大変だな。

俺にだけ聞こえるような声量で呟く先生を憐れみの目で見た。

既にクラスメイトの大半が散り散りに寮へ入っていくのを見ていると、先生が背中を押してきた。

「じゃ、センセイも安眠できそうだから、今すぐ寝そうなそこの奴の介護、よろしくなー」
そこの奴、と顎で指す方を見ると、虚ろな目で首をかくんかくんと動かしている上野が居た。

重たいのはちょっと。

さっきまで会話していた方を振り返ると、既に背を向けて歩く姿が。
向かう先は校舎では無く、教員用の寮だろう。任意らしいが、先生は寮で生活しているみたいだ。

酒は飲んでなかった筈だがふわふわとした足取りの先生を暫く眺めた後、大きいのを介護しようとする小さいのの手助けをすることにした。



「アッ待てこれ無理、遠坂〜!」
「はぁい」
「き、気合いが…気合いが足りないんだ」
「ん〜……。んん…。」
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