土器土器体育祭
2
終わった。
荒い息で一言、惶の声が聞こえ、思考が止まる。
終わった…?
って、何が。
袖を口に持っていき、意味を聞こうとしたが、続ける言葉に力が抜けた。
『神庭がいた。何人かZクラスの馬鹿は居たが、無事だ』
よ、
良かった…。
深く息を吐いた。
『…何箇所か殴られてるが』
……良かった…?
けどまあ、惶が無事って言うなら、酷い怪我では無いんだろう。
へたり込もうとして、持ち直す。
とりあえず惶と合流するか。
ホッとしてゆっくり階段を登っているとまた通信が入り、惶がまだ続けるのかと思っていたが、聞こえた声は意外な人物だった。
『イタタ…聞こえたヨ、狼谷くんナイスだネ。脳筋でもやるじゃない』
目を見開く。
と、つんざく音が耳を通り抜け、イヤホンをすぐに手に持ち耳から離した。
少し離してても聞こえる声。
『ぶちょーーー!!!!!だいじょーぶだったなら早く言ってよ!!!あ、手振ってる。違うよ!!!そうじゃないよ!!!』
『ちょっと四葉くん通信切って?ボクのアタマ割れそう。既にさっきスイカ割りみたいにされたけどネ、アハハ』
笑えねえよ。
『元気そうだな。よく寝れたみたいで良かったじゃねェか』
皮肉をいう惶に苦笑いして階段を登り終えた。教室が並ぶ廊下に目を向けると、丁度教室から出てくる惶が居た。
肩に担いでいるのは、チラッと見えた毛玉からして神庭だ。
体操着を着たままで、気を失っているらしく動かなかった。
『それじゃあ神庭くんのことはボクが塩島くんに伝えるから、狼谷くんは神庭くんを保健室に連れてってネ』
『了解』
俺の方に向かいながら襟を掴んでそう言った惶が、俺と目があって一つ頷いた。
通り過ぎる惶に、ナイス、と声を掛け、階段を降りていくのを見送った。
無事に計画を阻んだことに安堵していたが、何か頭の片隅に引っ掛かった。
何か、忘れてる気が。
なんだ…?
考えていると、視界の端に走る人影が。
すぐにそちらに顔を向け、姿を目で追う。
向かい側の下の階の渡り廊下からこっちの校舎へ走っていく姿はすぐに再び校舎の中へ消え、見えなくなった。
残念だが、パーカーを羽織っており、フードで頭を隠されているため人物の特定に至らなかった。
体育祭でわざわざ私物のパーカーを持ってきているなんて怪しさ満点だろ。
走ってきた方角に目を向ける。
3棟目の第3校舎。体育館からすぐ俺が入った校舎だ。
急速に動き出す頭が片隅にあった違和感の正体を告げた。
南部さん。
そうだ。
囮だと加賀屋先輩から言われ、実際その通りだったが、南部さんの居場所がわかってなかった。
加賀屋先輩達写真部や、風紀は知ってるのか?嫌な予感に焦り始め、足を動かす。
まずは、と袖を口元に持っていく。
「あの、ひとついいですか?南部さんって見つかってますか?」
少し待ち、繋がった声は加賀屋先輩ではなかった。
『ぶちょー今ヤクザ先輩と話してるから僕から言うね。そーいえば、まだ見つかってないや。ヤンキーの人数的に囮だっただろーから、今頃どっかに転がされてるんじゃない?』
感謝を伝え、通信を切る。
次に風紀に掛けようとして、止めた。
掛けても加賀屋先輩と話しているだろう。
足を止めずに向かっている先は、人影が来た方角である、第3校舎。
あの人物が南部さんに関わっているかは分からない。
ひとまず一通り見てから報告してみるか。
階段を降り、人影が消えた辺りに着いたが、流石に誰も居なかった。
渡り廊下から第3校舎へ走る。
とりあえず3階を探すか、と思い、いつもと違う異変を目にしていたことを思い出した。
…第3校舎といえば、丸まっていた垂れ幕があったよな。
吊っていた階は、今いる、3階。
………そんなわけない、よな。
息を切らし、垂れ幕が吊ってある場所が横から見える所に着いた。
バクバクと心臓が動くのを全身に感じながら、垂れ幕を覗き見た。
真っ直ぐに下に降りた垂れ幕が1つ、2つと風に揺られており、まだ丸まったままの3つ目は重さがあるかのように動かなかった。
そして、その丸めた輪の中に、人が、居た。
終わった。
荒い息で一言、惶の声が聞こえ、思考が止まる。
終わった…?
って、何が。
袖を口に持っていき、意味を聞こうとしたが、続ける言葉に力が抜けた。
『神庭がいた。何人かZクラスの馬鹿は居たが、無事だ』
よ、
良かった…。
深く息を吐いた。
『…何箇所か殴られてるが』
……良かった…?
けどまあ、惶が無事って言うなら、酷い怪我では無いんだろう。
へたり込もうとして、持ち直す。
とりあえず惶と合流するか。
ホッとしてゆっくり階段を登っているとまた通信が入り、惶がまだ続けるのかと思っていたが、聞こえた声は意外な人物だった。
『イタタ…聞こえたヨ、狼谷くんナイスだネ。脳筋でもやるじゃない』
目を見開く。
と、つんざく音が耳を通り抜け、イヤホンをすぐに手に持ち耳から離した。
少し離してても聞こえる声。
『ぶちょーーー!!!!!だいじょーぶだったなら早く言ってよ!!!あ、手振ってる。違うよ!!!そうじゃないよ!!!』
『ちょっと四葉くん通信切って?ボクのアタマ割れそう。既にさっきスイカ割りみたいにされたけどネ、アハハ』
笑えねえよ。
『元気そうだな。よく寝れたみたいで良かったじゃねェか』
皮肉をいう惶に苦笑いして階段を登り終えた。教室が並ぶ廊下に目を向けると、丁度教室から出てくる惶が居た。
肩に担いでいるのは、チラッと見えた毛玉からして神庭だ。
体操着を着たままで、気を失っているらしく動かなかった。
『それじゃあ神庭くんのことはボクが塩島くんに伝えるから、狼谷くんは神庭くんを保健室に連れてってネ』
『了解』
俺の方に向かいながら襟を掴んでそう言った惶が、俺と目があって一つ頷いた。
通り過ぎる惶に、ナイス、と声を掛け、階段を降りていくのを見送った。
無事に計画を阻んだことに安堵していたが、何か頭の片隅に引っ掛かった。
何か、忘れてる気が。
なんだ…?
考えていると、視界の端に走る人影が。
すぐにそちらに顔を向け、姿を目で追う。
向かい側の下の階の渡り廊下からこっちの校舎へ走っていく姿はすぐに再び校舎の中へ消え、見えなくなった。
残念だが、パーカーを羽織っており、フードで頭を隠されているため人物の特定に至らなかった。
体育祭でわざわざ私物のパーカーを持ってきているなんて怪しさ満点だろ。
走ってきた方角に目を向ける。
3棟目の第3校舎。体育館からすぐ俺が入った校舎だ。
急速に動き出す頭が片隅にあった違和感の正体を告げた。
南部さん。
そうだ。
囮だと加賀屋先輩から言われ、実際その通りだったが、南部さんの居場所がわかってなかった。
加賀屋先輩達写真部や、風紀は知ってるのか?嫌な予感に焦り始め、足を動かす。
まずは、と袖を口元に持っていく。
「あの、ひとついいですか?南部さんって見つかってますか?」
少し待ち、繋がった声は加賀屋先輩ではなかった。
『ぶちょー今ヤクザ先輩と話してるから僕から言うね。そーいえば、まだ見つかってないや。ヤンキーの人数的に囮だっただろーから、今頃どっかに転がされてるんじゃない?』
感謝を伝え、通信を切る。
次に風紀に掛けようとして、止めた。
掛けても加賀屋先輩と話しているだろう。
足を止めずに向かっている先は、人影が来た方角である、第3校舎。
あの人物が南部さんに関わっているかは分からない。
ひとまず一通り見てから報告してみるか。
階段を降り、人影が消えた辺りに着いたが、流石に誰も居なかった。
渡り廊下から第3校舎へ走る。
とりあえず3階を探すか、と思い、いつもと違う異変を目にしていたことを思い出した。
…第3校舎といえば、丸まっていた垂れ幕があったよな。
吊っていた階は、今いる、3階。
………そんなわけない、よな。
息を切らし、垂れ幕が吊ってある場所が横から見える所に着いた。
バクバクと心臓が動くのを全身に感じながら、垂れ幕を覗き見た。
真っ直ぐに下に降りた垂れ幕が1つ、2つと風に揺られており、まだ丸まったままの3つ目は重さがあるかのように動かなかった。
そして、その丸めた輪の中に、人が、居た。