土器土器体育祭
カメラ6
加賀屋先輩から指示を受けた3階は唯一、3棟共繋がった渡り廊下が南北に2本あった。
もし加賀屋先輩の所にどちらか2人が居るとしたらZクラスが集まっていてもおかしく無い。
そう考えて向かおうとしていたが、加賀屋先輩が俺を3階のままに留めておこうとしたのは恐らく。
隣の棟を見る。
どっちにでも動けるようにするため、だろう。
最も、惶の所はハズレで加賀屋先輩の所に向かってるから俺が行っても邪魔になりそうだった。
とは言え、このまま連絡が入るまで何もしないのもな…。
じっとしていられずウロウロと歩く。
渡り廊下を行ったり来たりしていると、足音が階段から聞こえた。
やべ。
隠れる場所、と周囲を見渡したがそんな所はない。
タンッタンッと駆け上がってくる足音が近くなってくる。
っ、せ、せめてすぐに見えないように!
ダッシュで廊下の隅に滑り込んだ。
ここなら階段から上がっても正面から見えない。
しゃがんで近付いてくる足音に耳を澄ます。
…なんか武器になりそうな物体育館からパクってくるんだった。
後悔していると、3階に着いたらしく、階段を登る音が止んだ。
目をこらす。
靴が見え、体操着のハーフパンツが見え、顔が。
流れ作業のように4階に上がろうとしていた切れ目が俺の目と合い、動きが止まる。
「…何してんだ」
階段から上がってきたのは、額から汗を流す惶だった。
朝ぶりに見る惶は変わらない見た目で安心した。
変わった点といえば、体操着の袖を肩に丸めてまとめていたことと、襟にピンがあることだ。
あとは拳に赤黒い色。
何故。
けどお前で良かった…。
「早かったな」
惶に駆け寄る。
「ああ。…他に誰も見てねェか」
頷く。
時間が無いことからそのまま惶を送り出そうと階段の下まで着いて行った。
そろそろ加賀屋先輩が5階に着く頃だろう。
「何かあったら通信か風紀にすぐ連絡できるようにしてろよ」
「惶も気をつけて」
言葉を交わして惶が階段を登った時だった。
『緊急事態だよ!!』
緊迫感のある鋭い声が耳に刺さった。
この声は、ついさっき聞いた四葉さんだ。
聞き返すより早く続ける。
『5階に着いてカメラの部屋から出ようとしたらぶちょーが殴られて、たぶんいま気を失ってる』
加賀屋先輩が…!?
「どういうことだ。何があった。神庭か南部は居たのか」
見ると、惶が首を下に向けて襟を掴んでいた。
『ぶちょーが電源を付けたカメラからはどっちも映ってなかったから2人とも5階に居ないと思う。…状況は僕らもまだよく分かんなくて…ぶちょーから連絡が来て、声が途切れて付いたカメラ見たら扉から倒れた足だけが映ってて、』
グスッと鼻を啜るのが聞こえる。写真部も加賀屋先輩を心配してるのが伝わった。
「…分かった。夏目の所に向かう」
階段を降りて俺の前を駆けていく惶の顔は険しかった。
多分、俺も同じような顔をしていると思った。
着いていくか数歩踏み出し、立ち止まる。
袖を口に持っていく。
「夏目副委員長って今どこにいますか?」
『グスッ、グリーン先輩…?』
グリーン先輩。
下の名前が翠だから…?
一瞬思考が止まった耳に写真部が声を交わすのが聞こえる。
『一葉、グリーン先輩って今どこ?…わかった。……グリーン先輩は2階に居た映像以降映ってないって』
「…それっていつくらい前のことです?」
『うーたんが体育館からの連絡来た時くらい』
結構前だ。
着いていてもおかしくない。むしろ、走っているなら着いているはず。
『うーたん?』
「いや、なんでもないです。風紀に連絡しましたか?」
『見てすぐこの連絡したからまだ…』
「分かりました、じゃあ俺が風紀に加賀屋先輩のこと連絡するのでカメラの監視お願いします」
『うん…。』
不安そうな声に、携帯を操作していた手を止める。下ろしていた腕を上げる。
「…あの変態なら大丈夫ですよ。加賀屋先輩の周りには誰も居ないんですよね?」
『うん』
「じゃあ大丈夫です。すぐに風紀委員向かわせますね」
『わかった。…ありがと』
通信が切れる音を聞いてすぐ携帯を耳に当てる。
数コール鳴った後、繋がった。
「もしもし、塩島委員長」
『すみません。少しばたついていて…加賀屋さんと会えましたか?』
「…はい、5階で。それが、加賀屋先輩が襲われたみたいで、」
『は?!』
「気を失って倒れているので急ぎ風紀委員をお願いします」
『…分かりました、なんとかすぐに向かわせます。それで、狼谷はまだ来ていませんか?』
「さっき会って、今は夏目副委員長の方に向かってます」
『そうですか…分かりました、ありがとうございます。柴さんは…』
「俺は、…俺も夏目副委員長の方に向かおうと思います」
『分かりました。お願いします。すぐに委員は加賀屋の方に手配するので、神庭さんと南部さんを頼みます』
「はい」
電話を切り、渡り廊下を走った。
あの人はきっと大丈夫だ。
気を失った後放置するってことは、カメラに映るかもしれないことを嫌がったか、元々加賀屋先輩の方を時間稼ぎに使うつもりだったか。
加賀屋先輩を襲った人物は他のカメラにでも映っているだろう。
階段を駆け上がり、折り返しのところで派手な物音が聞こえた。
手すりを握り、塩島委員長に連絡しようと急いで携帯を操作していると、通信が入った。
『終わった』
加賀屋先輩から指示を受けた3階は唯一、3棟共繋がった渡り廊下が南北に2本あった。
もし加賀屋先輩の所にどちらか2人が居るとしたらZクラスが集まっていてもおかしく無い。
そう考えて向かおうとしていたが、加賀屋先輩が俺を3階のままに留めておこうとしたのは恐らく。
隣の棟を見る。
どっちにでも動けるようにするため、だろう。
最も、惶の所はハズレで加賀屋先輩の所に向かってるから俺が行っても邪魔になりそうだった。
とは言え、このまま連絡が入るまで何もしないのもな…。
じっとしていられずウロウロと歩く。
渡り廊下を行ったり来たりしていると、足音が階段から聞こえた。
やべ。
隠れる場所、と周囲を見渡したがそんな所はない。
タンッタンッと駆け上がってくる足音が近くなってくる。
っ、せ、せめてすぐに見えないように!
ダッシュで廊下の隅に滑り込んだ。
ここなら階段から上がっても正面から見えない。
しゃがんで近付いてくる足音に耳を澄ます。
…なんか武器になりそうな物体育館からパクってくるんだった。
後悔していると、3階に着いたらしく、階段を登る音が止んだ。
目をこらす。
靴が見え、体操着のハーフパンツが見え、顔が。
流れ作業のように4階に上がろうとしていた切れ目が俺の目と合い、動きが止まる。
「…何してんだ」
階段から上がってきたのは、額から汗を流す惶だった。
朝ぶりに見る惶は変わらない見た目で安心した。
変わった点といえば、体操着の袖を肩に丸めてまとめていたことと、襟にピンがあることだ。
あとは拳に赤黒い色。
何故。
けどお前で良かった…。
「早かったな」
惶に駆け寄る。
「ああ。…他に誰も見てねェか」
頷く。
時間が無いことからそのまま惶を送り出そうと階段の下まで着いて行った。
そろそろ加賀屋先輩が5階に着く頃だろう。
「何かあったら通信か風紀にすぐ連絡できるようにしてろよ」
「惶も気をつけて」
言葉を交わして惶が階段を登った時だった。
『緊急事態だよ!!』
緊迫感のある鋭い声が耳に刺さった。
この声は、ついさっき聞いた四葉さんだ。
聞き返すより早く続ける。
『5階に着いてカメラの部屋から出ようとしたらぶちょーが殴られて、たぶんいま気を失ってる』
加賀屋先輩が…!?
「どういうことだ。何があった。神庭か南部は居たのか」
見ると、惶が首を下に向けて襟を掴んでいた。
『ぶちょーが電源を付けたカメラからはどっちも映ってなかったから2人とも5階に居ないと思う。…状況は僕らもまだよく分かんなくて…ぶちょーから連絡が来て、声が途切れて付いたカメラ見たら扉から倒れた足だけが映ってて、』
グスッと鼻を啜るのが聞こえる。写真部も加賀屋先輩を心配してるのが伝わった。
「…分かった。夏目の所に向かう」
階段を降りて俺の前を駆けていく惶の顔は険しかった。
多分、俺も同じような顔をしていると思った。
着いていくか数歩踏み出し、立ち止まる。
袖を口に持っていく。
「夏目副委員長って今どこにいますか?」
『グスッ、グリーン先輩…?』
グリーン先輩。
下の名前が翠だから…?
一瞬思考が止まった耳に写真部が声を交わすのが聞こえる。
『一葉、グリーン先輩って今どこ?…わかった。……グリーン先輩は2階に居た映像以降映ってないって』
「…それっていつくらい前のことです?」
『うーたんが体育館からの連絡来た時くらい』
結構前だ。
着いていてもおかしくない。むしろ、走っているなら着いているはず。
『うーたん?』
「いや、なんでもないです。風紀に連絡しましたか?」
『見てすぐこの連絡したからまだ…』
「分かりました、じゃあ俺が風紀に加賀屋先輩のこと連絡するのでカメラの監視お願いします」
『うん…。』
不安そうな声に、携帯を操作していた手を止める。下ろしていた腕を上げる。
「…あの変態なら大丈夫ですよ。加賀屋先輩の周りには誰も居ないんですよね?」
『うん』
「じゃあ大丈夫です。すぐに風紀委員向かわせますね」
『わかった。…ありがと』
通信が切れる音を聞いてすぐ携帯を耳に当てる。
数コール鳴った後、繋がった。
「もしもし、塩島委員長」
『すみません。少しばたついていて…加賀屋さんと会えましたか?』
「…はい、5階で。それが、加賀屋先輩が襲われたみたいで、」
『は?!』
「気を失って倒れているので急ぎ風紀委員をお願いします」
『…分かりました、なんとかすぐに向かわせます。それで、狼谷はまだ来ていませんか?』
「さっき会って、今は夏目副委員長の方に向かってます」
『そうですか…分かりました、ありがとうございます。柴さんは…』
「俺は、…俺も夏目副委員長の方に向かおうと思います」
『分かりました。お願いします。すぐに委員は加賀屋の方に手配するので、神庭さんと南部さんを頼みます』
「はい」
電話を切り、渡り廊下を走った。
あの人はきっと大丈夫だ。
気を失った後放置するってことは、カメラに映るかもしれないことを嫌がったか、元々加賀屋先輩の方を時間稼ぎに使うつもりだったか。
加賀屋先輩を襲った人物は他のカメラにでも映っているだろう。
階段を駆け上がり、折り返しのところで派手な物音が聞こえた。
手すりを握り、塩島委員長に連絡しようと急いで携帯を操作していると、通信が入った。
『終わった』