土器土器体育祭
カメラ5/6
「口ほどにも無かったねぇ」
ボクに傷一つ負わせることもなくへばって地に伏せる2人を見て呟く。
ボクを知ってるであろう夏目くんにしては配置甘いんじゃない?
ボクが出てこない想定だった?
喧嘩がどこまでできるのか分からないけど、この弱さならうーたんでも勝てると思った。
棚の方に向かい、眼鏡を手に取って顔に寄せた。
クリアになる視界で上を見る。
カメラを壊さなかった意味。
なんだろう。
ま、いっか。
どちらにしても2人は居なかったし、考えてもしょうがないと扉に向かいながら通信機に口を当てる。
「幸歩(シア)ちゃんデース。2人は皆の所に居なかったみたいだネ」
『ぶちょー最高だったよ!』
『しあ……?千切っては投げしたんで?』
うーたんの声が聞こえ、内容にふふ、と笑う。
そういえば四葉くんがそんなこと言ってた。
余裕があったから通信自体は耳に入っていた。
「残念だけど千切るほどは居なかったネ」
『で、俺はそっちに向かえば良いのか』
聞こえる声は狼谷くんか。
教室を出て次の場所である5階に向かって足を動かす。
「うん。…そうダナー、ボクの居る第1校舎……とりあえず5階目指して。うーたんは塩島くんから何か言われた?」
『加賀屋先輩のところにって』
………。
「今どこ?」
『3階』
3階なら2棟目との渡り廊下がある。
「りょーかい。…うーたんはそこで待機してて」
えっ、と声が聞こえ、その後ボクが言いたいことが伝わったのか、間を空けてから『分かった』と言った。
そう。
固まるのは良くない。
ただでさえ少ない人数なんだしネ。
「それじゃ、クラブズも引き続き頼むヨ」
『まかせて!』
通信を切り、スピードを上げる。
カメラの場所まであと少し。
監視カメラが落ちたのは、残すところ2つ。
ボクが向かっている所と、夏目くんの所。
どっちかにきっと。
もしボクの所なら…。
マ、狼谷くんが向かってるし大丈夫だネ。
それより、風紀室から解散してから15分程度経っている。
そろそろ制裁が実行されていてもおかしくない。
5階に着き、歩みを止めずにそのまま廊下を走る。
足音が廊下に響いていた。
静かに行動なんてしてる場合じゃない。
もし制裁が始まってるなら、ボクの足音で手を止めてくれたら上々だしネ。
カメラの場所は移動教室。
教室の前で足を止め、片手を構えながら扉を勢いよく開ける。
息を切らしながらそのまま飛び込んだ。
中は、乱れることなく綺麗に机が並び、黒板にも文字は無く、人影は見当たらなかった。
「…ハァッハァッ…ッハズレ…?」
呆然と呟いた声が静かな教室に虚しく響いた。
息を切らしたまま顔を顰めて部屋の中心に進む。
床に誰かが潜んでいる様子も、無い。
呼吸を落ち着かせる様に深く息を吸って吐き、カメラの場所まで近寄る。
位置は、3階と同じで教室奥の隅の天井。
棚の上に登ってカメラの背面を見る。
「………。」
手を伸ばして、カメラを起動した。
壊されて、無い、か。
いや、今はもういい。
疑問を解決する前にすることがあった。
棚から降り、まずはクラブズに夏目くんの動向について聞こうと通信機を手に取って扉に向かった。
「クラブズ。5階も、」
足を廊下に踏み出した時。
棒状の影が視界の端に目に映った。
しまった
「ッ!」
避ける指示を体に出すより早く、強い衝撃を側頭部に受け、相手の顔に目を向ける前に床に身を打ちつけた。
耳元にクラブズの荒げた声が入るが、言葉を拾うことができない。
受けた衝撃が段々強くなっていくのを感じながら、白む視界から遠ざかる足だけを目で追い、
意識を失った。
「口ほどにも無かったねぇ」
ボクに傷一つ負わせることもなくへばって地に伏せる2人を見て呟く。
ボクを知ってるであろう夏目くんにしては配置甘いんじゃない?
ボクが出てこない想定だった?
喧嘩がどこまでできるのか分からないけど、この弱さならうーたんでも勝てると思った。
棚の方に向かい、眼鏡を手に取って顔に寄せた。
クリアになる視界で上を見る。
カメラを壊さなかった意味。
なんだろう。
ま、いっか。
どちらにしても2人は居なかったし、考えてもしょうがないと扉に向かいながら通信機に口を当てる。
「幸歩(シア)ちゃんデース。2人は皆の所に居なかったみたいだネ」
『ぶちょー最高だったよ!』
『しあ……?千切っては投げしたんで?』
うーたんの声が聞こえ、内容にふふ、と笑う。
そういえば四葉くんがそんなこと言ってた。
余裕があったから通信自体は耳に入っていた。
「残念だけど千切るほどは居なかったネ」
『で、俺はそっちに向かえば良いのか』
聞こえる声は狼谷くんか。
教室を出て次の場所である5階に向かって足を動かす。
「うん。…そうダナー、ボクの居る第1校舎……とりあえず5階目指して。うーたんは塩島くんから何か言われた?」
『加賀屋先輩のところにって』
………。
「今どこ?」
『3階』
3階なら2棟目との渡り廊下がある。
「りょーかい。…うーたんはそこで待機してて」
えっ、と声が聞こえ、その後ボクが言いたいことが伝わったのか、間を空けてから『分かった』と言った。
そう。
固まるのは良くない。
ただでさえ少ない人数なんだしネ。
「それじゃ、クラブズも引き続き頼むヨ」
『まかせて!』
通信を切り、スピードを上げる。
カメラの場所まであと少し。
監視カメラが落ちたのは、残すところ2つ。
ボクが向かっている所と、夏目くんの所。
どっちかにきっと。
もしボクの所なら…。
マ、狼谷くんが向かってるし大丈夫だネ。
それより、風紀室から解散してから15分程度経っている。
そろそろ制裁が実行されていてもおかしくない。
5階に着き、歩みを止めずにそのまま廊下を走る。
足音が廊下に響いていた。
静かに行動なんてしてる場合じゃない。
もし制裁が始まってるなら、ボクの足音で手を止めてくれたら上々だしネ。
カメラの場所は移動教室。
教室の前で足を止め、片手を構えながら扉を勢いよく開ける。
息を切らしながらそのまま飛び込んだ。
中は、乱れることなく綺麗に机が並び、黒板にも文字は無く、人影は見当たらなかった。
「…ハァッハァッ…ッハズレ…?」
呆然と呟いた声が静かな教室に虚しく響いた。
息を切らしたまま顔を顰めて部屋の中心に進む。
床に誰かが潜んでいる様子も、無い。
呼吸を落ち着かせる様に深く息を吸って吐き、カメラの場所まで近寄る。
位置は、3階と同じで教室奥の隅の天井。
棚の上に登ってカメラの背面を見る。
「………。」
手を伸ばして、カメラを起動した。
壊されて、無い、か。
いや、今はもういい。
疑問を解決する前にすることがあった。
棚から降り、まずはクラブズに夏目くんの動向について聞こうと通信機を手に取って扉に向かった。
「クラブズ。5階も、」
足を廊下に踏み出した時。
棒状の影が視界の端に目に映った。
しまった
「ッ!」
避ける指示を体に出すより早く、強い衝撃を側頭部に受け、相手の顔に目を向ける前に床に身を打ちつけた。
耳元にクラブズの荒げた声が入るが、言葉を拾うことができない。
受けた衝撃が段々強くなっていくのを感じながら、白む視界から遠ざかる足だけを目で追い、
意識を失った。