土器土器体育祭
2
風紀室から出てすぐに駆け足で体育館に向かう。2人が居なくなったと聞いてから結構時間が経っていたことに焦っていた。
既に制裁が始まっていたとしたら後味悪すぎだろ。
ショートカットしようと中庭に足を踏み入れた時、念のために付けていたイヤホンから布が擦れる様な音が聞こえた。疑問に思うより早く音が鳴る。
『ハイ。ということで引き続きはじめていきまース。うーたんはそこで一旦ストップ』
どこで見ているのか不思議でしょうがないが動かしていた足を止める。
『さてうーたんは聞いてると思うケド狼谷くんも聞こえてるカナ?』
『…なんだよ』
『なんだ〜ちゃんとイヤホン付けてるじゃーん!ヨシヨシ』
舌打ちが聞こえて思わず乾いた笑いを浮かべ、袖を口元に持っていく。
「それでなんなんだよ、はやく向かった方がいいと思うんですけど」
『それはネ〜当然なんだケド。
…うーたんは気付いてるよね。このまま素直にあの指示に従っていいのかって、サ』
口元に持って行った拳に力が入る。
『どういうことだ』
『そのままダヨ。キミも疑問に思わない?神庭くんから人手が減った途端神庭くんが消え、そのタイミングでカメラが落ち、その現場に向かわせようとしたら今度はZクラスの騒ぎが大きくなった』
『…スパイでも居るって言いてェのか』
『ピンポン!大正解!』
『……おい、柚木お前も知ってたのか』
何も言わなかった俺に矛先を向けて来たのに慌てる。
「いや、俺は知ってたっていうか、ちょっとあやしいなってぐらいだって」
『へェ』
信じてないな?!
『…で?テメェの口振りからは、そのスパイは指示を出した奴って事だよな。…まさか塩島って言いてェのか』
あー。
「いや、塩島委員長はどちらかというと振り回されてる側だと思う…。」
『そ、つまりハッキリ言うと怪しいのは夏目くんだネ〜』
『アイツが…?』
心底驚いたような声の惶。
『マァ今はどっちでも良いヨ。その2人が出した指示は、ボクと狼谷くんに2箇所の捜索。うーたんに校舎から離れた体育館。そして夏目くんが自主的に挙手した場所は校舎。疑惑の夏目くんが自主的に校舎に向かうってコトはつまり、』
つまり。
『神庭くんか南部くんが居るのは校舎が有力、だろうネ』
俺の足を止めさせた加賀屋先輩の狙いが分かった。
「俺も校舎に居た方がいいってことか?」
いや、と加賀屋先輩が否定する。
『うーたんは念の為そのまま体育館に向かって欲しいナ。それで、ここからが狼谷くんにも言えるんだけど、』
言葉を区切った際に呼吸が聞こえ、加賀屋先輩は移動中であることが分かった。
『現場に着いて、カメラを確認したらまずボクに報告して、一旦風紀に報告するのは待ってほしい』
理由はひとつだろう。
怪しい人物。
つまり、夏目副委員長に対策を取られないようにするためだ。
「はい」
『…分かった』
加賀屋先輩からの指示も聞いたことだし、と再び体育館に向かうために足を動かした。
『ありがと。それと言うまでもない狼谷くんと、うーたんよりほんの少ぉーしだけお猿さんの相手が出来るボクら2人をそれぞれ別の校舎に向かわせるってことは、ナニか企んでるのは間違い無い。狼谷くん、気をつけてネ』
体育館みたいにあからさまに離れたポイントではなく、行こうと思えばすぐに向かえる2つのポイントが2箇所だけ配置されていたのは俺も意図があると思っていた。
漠然とした不安を通信機の向こうの2人に抱いたが、『ハッ。誰に向かって言ってんだ』と、そんな俺の不安を吹き飛ばすような声が。
『俺はお飾りじゃねェ。Zクラスの恥はZクラスでケジメつけてやる』
自信に溢れたそれは、間違いなく惶の実力があることが伝わった。
か、かっけえー…!
ヒーローショーを観た子供のような感想を抱いた俺と反対に加賀屋先輩は、ハイハイ、と流していた。
少しは情緒持て。
『ア。そーだ、それと、夏目くんの動きからして南部くんに目を向けさせようとしていたのは丸分かりだったから、南部くんは囮と見ていいと思うヨ。だから、ボクらの最優先は神庭くん。うーたんももし神庭くんと思わしき生徒がいたらすぐに狼谷くんに連絡で!』
「おけ、分かった」
惶からも返事が聞こえ、一旦各自の行動に移ることになった。
『じゃ、頼むネ。
2人とも気を付けて』
風紀室から出てすぐに駆け足で体育館に向かう。2人が居なくなったと聞いてから結構時間が経っていたことに焦っていた。
既に制裁が始まっていたとしたら後味悪すぎだろ。
ショートカットしようと中庭に足を踏み入れた時、念のために付けていたイヤホンから布が擦れる様な音が聞こえた。疑問に思うより早く音が鳴る。
『ハイ。ということで引き続きはじめていきまース。うーたんはそこで一旦ストップ』
どこで見ているのか不思議でしょうがないが動かしていた足を止める。
『さてうーたんは聞いてると思うケド狼谷くんも聞こえてるカナ?』
『…なんだよ』
『なんだ〜ちゃんとイヤホン付けてるじゃーん!ヨシヨシ』
舌打ちが聞こえて思わず乾いた笑いを浮かべ、袖を口元に持っていく。
「それでなんなんだよ、はやく向かった方がいいと思うんですけど」
『それはネ〜当然なんだケド。
…うーたんは気付いてるよね。このまま素直にあの指示に従っていいのかって、サ』
口元に持って行った拳に力が入る。
『どういうことだ』
『そのままダヨ。キミも疑問に思わない?神庭くんから人手が減った途端神庭くんが消え、そのタイミングでカメラが落ち、その現場に向かわせようとしたら今度はZクラスの騒ぎが大きくなった』
『…スパイでも居るって言いてェのか』
『ピンポン!大正解!』
『……おい、柚木お前も知ってたのか』
何も言わなかった俺に矛先を向けて来たのに慌てる。
「いや、俺は知ってたっていうか、ちょっとあやしいなってぐらいだって」
『へェ』
信じてないな?!
『…で?テメェの口振りからは、そのスパイは指示を出した奴って事だよな。…まさか塩島って言いてェのか』
あー。
「いや、塩島委員長はどちらかというと振り回されてる側だと思う…。」
『そ、つまりハッキリ言うと怪しいのは夏目くんだネ〜』
『アイツが…?』
心底驚いたような声の惶。
『マァ今はどっちでも良いヨ。その2人が出した指示は、ボクと狼谷くんに2箇所の捜索。うーたんに校舎から離れた体育館。そして夏目くんが自主的に挙手した場所は校舎。疑惑の夏目くんが自主的に校舎に向かうってコトはつまり、』
つまり。
『神庭くんか南部くんが居るのは校舎が有力、だろうネ』
俺の足を止めさせた加賀屋先輩の狙いが分かった。
「俺も校舎に居た方がいいってことか?」
いや、と加賀屋先輩が否定する。
『うーたんは念の為そのまま体育館に向かって欲しいナ。それで、ここからが狼谷くんにも言えるんだけど、』
言葉を区切った際に呼吸が聞こえ、加賀屋先輩は移動中であることが分かった。
『現場に着いて、カメラを確認したらまずボクに報告して、一旦風紀に報告するのは待ってほしい』
理由はひとつだろう。
怪しい人物。
つまり、夏目副委員長に対策を取られないようにするためだ。
「はい」
『…分かった』
加賀屋先輩からの指示も聞いたことだし、と再び体育館に向かうために足を動かした。
『ありがと。それと言うまでもない狼谷くんと、うーたんよりほんの少ぉーしだけお猿さんの相手が出来るボクら2人をそれぞれ別の校舎に向かわせるってことは、ナニか企んでるのは間違い無い。狼谷くん、気をつけてネ』
体育館みたいにあからさまに離れたポイントではなく、行こうと思えばすぐに向かえる2つのポイントが2箇所だけ配置されていたのは俺も意図があると思っていた。
漠然とした不安を通信機の向こうの2人に抱いたが、『ハッ。誰に向かって言ってんだ』と、そんな俺の不安を吹き飛ばすような声が。
『俺はお飾りじゃねェ。Zクラスの恥はZクラスでケジメつけてやる』
自信に溢れたそれは、間違いなく惶の実力があることが伝わった。
か、かっけえー…!
ヒーローショーを観た子供のような感想を抱いた俺と反対に加賀屋先輩は、ハイハイ、と流していた。
少しは情緒持て。
『ア。そーだ、それと、夏目くんの動きからして南部くんに目を向けさせようとしていたのは丸分かりだったから、南部くんは囮と見ていいと思うヨ。だから、ボクらの最優先は神庭くん。うーたんももし神庭くんと思わしき生徒がいたらすぐに狼谷くんに連絡で!』
「おけ、分かった」
惶からも返事が聞こえ、一旦各自の行動に移ることになった。
『じゃ、頼むネ。
2人とも気を付けて』