土器土器体育祭
2
突然聞こえる声に思わず息を呑んだ。
完全に忘れてた。口元に持ってきていた方のジャージの袖にはマイクが付いてたんだった。
考えに耽っている間にいつの間にか曲が聞こえなくなっていたことにも気付いていなかった。
驚いた拍子に離した手を再び口元に持っていく。
「…"やっぱり"って、加賀屋先輩も?」
『ソウダナー…。全然携帯を見ようとしないから"そう"なのカナ?ってくらいだったけどネ。うーたんの考えと一致したから自信ある説になったよ』
「じゃあ、もし確実に校庭にいる事実をつくりたいとしたら…」
プログラムの順番を思い浮かべ、生徒会と文化部の親衛隊である鯨岡が見たい競技は…と俺が口にするより早く加賀屋先輩が答えた。
『昼からの部の、クラブ対抗リレー、委員会別リレー、紅白対決リレー』
「ってことは、本格的に動くのは昼以降」
『じゃないと思うヨ』
呟く声を拾った加賀屋先輩がすぐに否定した。
違う?
『確かに、昼からの部は確実に鯨岡くんは校庭にいることになると思う。ケド、計画を実行するのに時間やタイミングは無関係であるコト、ついさっき南部くんの所在が不明になったコトから推察すると、
──もう既に本格的に動いてるとみていいはずだネ』
…そうだった。
南部さんの居場所が分からなくなり、Zクラスが騒ぎを大きくしている今が1番俺達の動きが分散して毛玉を狙いやすい。この機会を逃して昼過ぎを待った場合、生徒が校舎に帰ってくる昼食の時間で南部さんが見つかる確率が高くなり、もし本命が南部さんでも陽動であっても、どちらにしても計画は台無しになる。
そこまで考えて、さっきの鯨岡の一瞬の表情のわけに気付いた。
ひょっとして、鯨岡が立てた計画が狂い始めている…?
「…主犯にとって1番都合が良いのは昼から、だよな」
『だろうネ』
「にしては動くのが早い」
『…だネ』
「もし主犯にとって計画外だとすると…。」
悪い予感を、加賀屋先輩が口に出した。
『…ヤケになったとき、何してくるかわかんない、ネ』
ヤメテ。
ただでさえハードモードなのに途中で難易度を弄るのやめてくれ。
俺は人生イージーがいい。
手を口元から離して両手を壁に付き、大きくため息を吐いた。
『マァそんなに塩島くんみたいならないで、南部くんはボクに任せてよネ!テテっとすぐに見つけるサ』
ほんとか〜????
訝しんでいると、廊下から足音が聞こえたため、手洗い場に移動する。蛇口を捻り、水を出していると、ドアが開いて携帯を見たままの知らない生徒が入ってきた。内心警戒していたが、俺を一瞥してすぐに便器に向かったため、普通に用を達しに来ただけのようで安心する。
『とりあえず、さっき話した内容を狼谷くんにも伝えて準備運動しててもらおうカナ。それと塩島くんにも』
イヤホンに耳を澄ませながら、無意味に洗った手をペーパータオルで拭いてゴミ箱に捨てた。そのままドアに向かい、スリッパを脱いで廊下に出る。
『まだメインのはずの神庭くんには異変が無いから、その間に南部くん見つけれればボクらは勝ちと思ってイイかも。ケド、もし怪しい動きの生徒がいても絶対うーたんだけで行っちゃダメだからネ!!』
フリ?
『フリじゃないからネ!!!』
良かった。
行かねえよ。
制裁とかこりごり。
『風紀か、袖のマイクか、ボクにラインするんだゾ!』
萌えキャラみたいな語尾やめろ。
一応必死で南部さんを探しているらしく、俺に念押しした後すぐに声が聞こえなくなり、アニソンが流れた。
軽快な音楽を耳に、廊下を進む。
「(…嫌な流れになってきた。)」
突然聞こえる声に思わず息を呑んだ。
完全に忘れてた。口元に持ってきていた方のジャージの袖にはマイクが付いてたんだった。
考えに耽っている間にいつの間にか曲が聞こえなくなっていたことにも気付いていなかった。
驚いた拍子に離した手を再び口元に持っていく。
「…"やっぱり"って、加賀屋先輩も?」
『ソウダナー…。全然携帯を見ようとしないから"そう"なのカナ?ってくらいだったけどネ。うーたんの考えと一致したから自信ある説になったよ』
「じゃあ、もし確実に校庭にいる事実をつくりたいとしたら…」
プログラムの順番を思い浮かべ、生徒会と文化部の親衛隊である鯨岡が見たい競技は…と俺が口にするより早く加賀屋先輩が答えた。
『昼からの部の、クラブ対抗リレー、委員会別リレー、紅白対決リレー』
「ってことは、本格的に動くのは昼以降」
『じゃないと思うヨ』
呟く声を拾った加賀屋先輩がすぐに否定した。
違う?
『確かに、昼からの部は確実に鯨岡くんは校庭にいることになると思う。ケド、計画を実行するのに時間やタイミングは無関係であるコト、ついさっき南部くんの所在が不明になったコトから推察すると、
──もう既に本格的に動いてるとみていいはずだネ』
…そうだった。
南部さんの居場所が分からなくなり、Zクラスが騒ぎを大きくしている今が1番俺達の動きが分散して毛玉を狙いやすい。この機会を逃して昼過ぎを待った場合、生徒が校舎に帰ってくる昼食の時間で南部さんが見つかる確率が高くなり、もし本命が南部さんでも陽動であっても、どちらにしても計画は台無しになる。
そこまで考えて、さっきの鯨岡の一瞬の表情のわけに気付いた。
ひょっとして、鯨岡が立てた計画が狂い始めている…?
「…主犯にとって1番都合が良いのは昼から、だよな」
『だろうネ』
「にしては動くのが早い」
『…だネ』
「もし主犯にとって計画外だとすると…。」
悪い予感を、加賀屋先輩が口に出した。
『…ヤケになったとき、何してくるかわかんない、ネ』
ヤメテ。
ただでさえハードモードなのに途中で難易度を弄るのやめてくれ。
俺は人生イージーがいい。
手を口元から離して両手を壁に付き、大きくため息を吐いた。
『マァそんなに塩島くんみたいならないで、南部くんはボクに任せてよネ!テテっとすぐに見つけるサ』
ほんとか〜????
訝しんでいると、廊下から足音が聞こえたため、手洗い場に移動する。蛇口を捻り、水を出していると、ドアが開いて携帯を見たままの知らない生徒が入ってきた。内心警戒していたが、俺を一瞥してすぐに便器に向かったため、普通に用を達しに来ただけのようで安心する。
『とりあえず、さっき話した内容を狼谷くんにも伝えて準備運動しててもらおうカナ。それと塩島くんにも』
イヤホンに耳を澄ませながら、無意味に洗った手をペーパータオルで拭いてゴミ箱に捨てた。そのままドアに向かい、スリッパを脱いで廊下に出る。
『まだメインのはずの神庭くんには異変が無いから、その間に南部くん見つけれればボクらは勝ちと思ってイイかも。ケド、もし怪しい動きの生徒がいても絶対うーたんだけで行っちゃダメだからネ!!』
フリ?
『フリじゃないからネ!!!』
良かった。
行かねえよ。
制裁とかこりごり。
『風紀か、袖のマイクか、ボクにラインするんだゾ!』
萌えキャラみたいな語尾やめろ。
一応必死で南部さんを探しているらしく、俺に念押しした後すぐに声が聞こえなくなり、アニソンが流れた。
軽快な音楽を耳に、廊下を進む。
「(…嫌な流れになってきた。)」