土器土器体育祭
森→林木→木木木
「ところでいつイヤホンなんてしてたわけ?」
今かよ。
陽キャを追いかけ回して帰ってきた小森が隣に座り、俺を見たと思えばそう言った。
「ちょっと前にやる気出すために付けた。アニソンだけど聞く?」
「いい」
答えてすぐ校庭の方に小森は目を向けた。
即答に若干俺は傷付いた。
良い曲多いんだぞ…。
それからついでのように「遠坂は?」と聞かれた、周囲を見渡したがそれらしい姿は見つからなかったため「トイレにでも行ったんじゃね?」と答えた。
椅子から校庭を見ると、テントの最前にポンポンを振る委員長と陽キャ、チアボーイズがいる。どうやらチアボーイズは今日一日衣装のままのようだ。
まあ涼しそうだしな。
上野の出番は小森の様子からまだ先らしいので、作戦会議で出た名前の人物を順に探してみる。
毛玉はすぐに見つかった。いかんせん頭の体積が目立つ。それと、テントすぐ近くに風紀の腕章を付けた生徒が2人。
ついでに、と南部さんが近くにいるか見てみたが、テントには居ないようだった。セットみたいになってるけど、別にそんなことはないんだった。
Bクラスのテントの最前で跳ねていた。Bクラスはどうやら大半がやる気がないらしく、ほとんどが椅子に座って携帯を触っているようだった。その姿は去年の俺と被り、現状を鑑みると不思議な気持ちになった。
どっちが良かったか、と言われれば答えに困る。
だが、どっちが楽しいか、と聞かれれば即答できるのは確かだった。
それから次に探したのは、主犯である鯨岡だ。
生徒会親衛隊総括であることを念頭において校庭を見回した時、そういえば親衛隊といえば詳しい奴が隣に居たな、と思い出した。
どう聞こうか少し考え、小森に顔を向けた。
「そういえば、お前の所属してる親衛隊隊長ってどっかいる?」
「…居るけど」
不審そうに俺を一瞥してまた校庭に視線を移した。
「急に何?…何か言われたわけ」
「いや、こうやって生徒全員が見渡せる機会無いし顔見ておこうと思って」
前を見たままの小森に、やっぱり不自然だったか?と不安に思ったのも束の間。
服を引っ張られて校庭の方へ指差した。
「僕が所属してるところは多いけど、主に生徒会長親衛隊での活動が多いから…あの3年Sクラスのテントにいる黒髪で綺麗な顔の方が弓矢隊長」
綺麗な顔の人が多くてどの人か分からなかったが、とりあえず頷いておいた。目当ての人物では無かったため、どう聞こうかまた考えようとしたが、小森は紹介を続けてくれるらしく服を離さなかった。
「それから、茶道部部長の窄楽様の真田隊長も同じテント居る、あの黒髪を一つ括りにした綺麗な人」
強そうな名前とは反対に細くて美人だった。
一つ括りしてる人は少なく、すぐに分かり今度は理解して頷いた。それよりあの文化部の美人部長達の親衛隊に入ってたことに驚く。
とはいえ、小森の顔の好みの系統で考えると当然か。
「それと」差した指の場所を変えた。
「3年Aクラスの最前列に立ってる、茶髪の可愛い方が生徒会親衛隊と文化部親衛隊総括の "鯨岡" 隊長だよ。中間テストの一件ではあの方も心配して協力してくださったんだから今度会うことがあったらお礼しなよ」
「そ…うだったのか」
動揺を抑えきれず、言葉始めに詰まったが、小森は気にしてないようでホッとする。
テントの最前列で、同じ親衛隊と思わしき数人の小柄な生徒と笑みを浮かべながら会話をしている、穏やかそうなその顔には見覚えがあった。昨日の夜見つけた写真。夏目副委員長と話していた人物だ。頭に刻みつけるように注意深く見つめる。
中間テストでは協力してくれた、な。
そうだな。
「…機会があれば、挨拶するわ」
当然、と頷く小森に内心付け足す。
お前の思っている形とは違うだろうが。
目的の人物を思っていたよりすんなりと認識することができ、収穫は上々だった。
続けてあと2人も紹介されたことには流石に耳を疑ったが。
掛け持ちしてるのは知ってたけど、よくお前身体保つな。放課後分裂してんのか?森が林になってんの?
ちなみに、最後の1人の紹介の際に遠坂が帰って来て一緒に聞いていた。
感想は、「親衛隊長も美人なんだねぇ」だった。
それは確かに。
この学校では今更だが顔面偏差値の高さが異常。
小森の紹介は大体、あそこの綺麗な人、だった。
分かんねえよ。
上野の出番が来るらしく、服から手を離した小森が立ち上がった。一歩踏み出し、止まる。
「…さっき言った方々は親衛隊長の中でも温厚派だ。だから、もし僕が近くに居なくてあの方々の誰かがいたら助けを乞うてみたらいいんじゃない?僕の名前出したら分かってくれるだろう」
そのままチアボーイズに割り込んでいく小森の後ろ姿を呆然と見送った。
遠坂と顔を見合わせる。
「…あれ、俺を心配してくれてるってこと…?」
「だね〜」
間を開け、そのまま遠坂と笑い合った。
素直じゃねえんだから。
「で、お前はどこ行ってたんだ?」
「トイレだよ〜」
「ところでいつイヤホンなんてしてたわけ?」
今かよ。
陽キャを追いかけ回して帰ってきた小森が隣に座り、俺を見たと思えばそう言った。
「ちょっと前にやる気出すために付けた。アニソンだけど聞く?」
「いい」
答えてすぐ校庭の方に小森は目を向けた。
即答に若干俺は傷付いた。
良い曲多いんだぞ…。
それからついでのように「遠坂は?」と聞かれた、周囲を見渡したがそれらしい姿は見つからなかったため「トイレにでも行ったんじゃね?」と答えた。
椅子から校庭を見ると、テントの最前にポンポンを振る委員長と陽キャ、チアボーイズがいる。どうやらチアボーイズは今日一日衣装のままのようだ。
まあ涼しそうだしな。
上野の出番は小森の様子からまだ先らしいので、作戦会議で出た名前の人物を順に探してみる。
毛玉はすぐに見つかった。いかんせん頭の体積が目立つ。それと、テントすぐ近くに風紀の腕章を付けた生徒が2人。
ついでに、と南部さんが近くにいるか見てみたが、テントには居ないようだった。セットみたいになってるけど、別にそんなことはないんだった。
Bクラスのテントの最前で跳ねていた。Bクラスはどうやら大半がやる気がないらしく、ほとんどが椅子に座って携帯を触っているようだった。その姿は去年の俺と被り、現状を鑑みると不思議な気持ちになった。
どっちが良かったか、と言われれば答えに困る。
だが、どっちが楽しいか、と聞かれれば即答できるのは確かだった。
それから次に探したのは、主犯である鯨岡だ。
生徒会親衛隊総括であることを念頭において校庭を見回した時、そういえば親衛隊といえば詳しい奴が隣に居たな、と思い出した。
どう聞こうか少し考え、小森に顔を向けた。
「そういえば、お前の所属してる親衛隊隊長ってどっかいる?」
「…居るけど」
不審そうに俺を一瞥してまた校庭に視線を移した。
「急に何?…何か言われたわけ」
「いや、こうやって生徒全員が見渡せる機会無いし顔見ておこうと思って」
前を見たままの小森に、やっぱり不自然だったか?と不安に思ったのも束の間。
服を引っ張られて校庭の方へ指差した。
「僕が所属してるところは多いけど、主に生徒会長親衛隊での活動が多いから…あの3年Sクラスのテントにいる黒髪で綺麗な顔の方が弓矢隊長」
綺麗な顔の人が多くてどの人か分からなかったが、とりあえず頷いておいた。目当ての人物では無かったため、どう聞こうかまた考えようとしたが、小森は紹介を続けてくれるらしく服を離さなかった。
「それから、茶道部部長の窄楽様の真田隊長も同じテント居る、あの黒髪を一つ括りにした綺麗な人」
強そうな名前とは反対に細くて美人だった。
一つ括りしてる人は少なく、すぐに分かり今度は理解して頷いた。それよりあの文化部の美人部長達の親衛隊に入ってたことに驚く。
とはいえ、小森の顔の好みの系統で考えると当然か。
「それと」差した指の場所を変えた。
「3年Aクラスの最前列に立ってる、茶髪の可愛い方が生徒会親衛隊と文化部親衛隊総括の "鯨岡" 隊長だよ。中間テストの一件ではあの方も心配して協力してくださったんだから今度会うことがあったらお礼しなよ」
「そ…うだったのか」
動揺を抑えきれず、言葉始めに詰まったが、小森は気にしてないようでホッとする。
テントの最前列で、同じ親衛隊と思わしき数人の小柄な生徒と笑みを浮かべながら会話をしている、穏やかそうなその顔には見覚えがあった。昨日の夜見つけた写真。夏目副委員長と話していた人物だ。頭に刻みつけるように注意深く見つめる。
中間テストでは協力してくれた、な。
そうだな。
「…機会があれば、挨拶するわ」
当然、と頷く小森に内心付け足す。
お前の思っている形とは違うだろうが。
目的の人物を思っていたよりすんなりと認識することができ、収穫は上々だった。
続けてあと2人も紹介されたことには流石に耳を疑ったが。
掛け持ちしてるのは知ってたけど、よくお前身体保つな。放課後分裂してんのか?森が林になってんの?
ちなみに、最後の1人の紹介の際に遠坂が帰って来て一緒に聞いていた。
感想は、「親衛隊長も美人なんだねぇ」だった。
それは確かに。
この学校では今更だが顔面偏差値の高さが異常。
小森の紹介は大体、あそこの綺麗な人、だった。
分かんねえよ。
上野の出番が来るらしく、服から手を離した小森が立ち上がった。一歩踏み出し、止まる。
「…さっき言った方々は親衛隊長の中でも温厚派だ。だから、もし僕が近くに居なくてあの方々の誰かがいたら助けを乞うてみたらいいんじゃない?僕の名前出したら分かってくれるだろう」
そのままチアボーイズに割り込んでいく小森の後ろ姿を呆然と見送った。
遠坂と顔を見合わせる。
「…あれ、俺を心配してくれてるってこと…?」
「だね〜」
間を開け、そのまま遠坂と笑い合った。
素直じゃねえんだから。
「で、お前はどこ行ってたんだ?」
「トイレだよ〜」