1日の終わり「お風呂にする？ご飯にする？それとも、」



俺らのクラスだけ異様な熱気のまま解散し廊下に出ると、当然だが他のクラスは不思議そうな顔でAクラスを覗き見て通り過ぎていた。中には知っている奴もいるようで、羨ましそうに話しているのが聞こえた。

上野達と、また明日。と挨拶を交わして寮に戻る。

当然というか、玄関口には靴は無く、まだ惶は風紀として働いているようだった。
もしくは、Zクラスは校舎が遠いから普通に遅くなっているだけかもしれない。

まだ15時か。
時計を見て確認する。
テスト期間並みに早く帰って来れたことだし、今のうちに家事を済ませておくことにするか。

最近サボっていた掃除を済まし、料理は晩飯まで時間があることから炊飯器でチャーシューを作ることにした。インスタント麺もあるし、今日はラーメンだな。冷蔵庫にもやしやネギなどの具材があることも確認した俺は今日の献立を決めた。
洗濯は惶の体操着もあるだろし、と後回しにして先に風呂を済ませることにした。

掃除の際に溜めていた湯船に浸かり一息つく。風呂からあがるもまだ惶は帰っていなかった。交換してからまだ一度もトークが更新されないラインを一応確認するも、何もなかった。
どうやら風紀の仕事らしい。

惶を待つ間にアニメを見つつソシャゲをすることにした。
今はイベントもやってないからデイリーこなして周回でレベリングだな。

何話か過ぎた後、話の終盤に集中していると玄関から物音が。それに気をやってはじめて手元のゲームを触っていないこと気づいた。
共有部屋であるリビングのドアが開き、すっかりここに馴染んだもう1人の家主が帰ってきた。
ソファーの背に腕を乗せて後ろを振り向いて声を掛ける。

「おかえり」
「おう」

返事を返した惶の体操着には泥が付き汚れているのを確認した。

な、なんで？
なんか競技出てたっけ？
聞こうか迷っていたタイミングで炊飯器から音が鳴った。

その音に釣られてキッチンに向かう惶。
「それチャーシュー」
言った俺に目を向けて惶が不思議そうな顔をした。
「炊飯器でチャーシュー…。」
「そ、簡単にできるって見かけたことあったらやってみた。だから今日の晩飯はラーメンな」
炊飯器を開ける音がして、良い匂いが俺の鼻にも届いたので気になって見に行った。

惶の横から覗き込むと、レシピでの写真通りの出来で安心する。
おお、美味そう。
部屋の時計を見ると晩飯に丁度良い時間になっていたことに気付いた。アニメ見てたら時間忘れんな。惶が帰ってくるのが遅かったのもあるけど。

「それで、ラーメンすぐ出来ると思うけど先食う？風呂も沸いてるからどっちでもいいけど」
「……。」
俺を振り返って無言なままの表情は何が言いたいのか分からなかった。
なんだよ。
無言で顔を見合わせたが、すぐに惶が目を逸らした。

「…いや、先風呂行く」
「おっけ、服洗濯機に突っ込んでて。回しとく」
扉に向かう背中に声を掛けると振り返った惶。
「替えくらいある。どうせ明日汚れるからいい。置いとけ」
いや汚ねえだろ。

「良いって、元々俺のも回すつもりだったし、ついで」
食い下がった俺に一度前を向き、もう一度俺の方を向こうとしたままの態勢で止まる惶。
なんか今日の動き変だな。
疲れ過ぎ？
不審に思っていると、後ろ姿が頷いたのが見えた。

「悪りィ。じゃあ頼む」
「おー。いってら」

振り返ることなく扉から出て行った惶を不思議に思いつつ、晩飯の用意を始めた。
つっても、出来上がったチャーシュー切ってネギ切ったりするくらいだ。

惶が風呂上がったらラーメンともやしを茹でるから、すぐにやることが無くなった。惶が帰ってきたらタイミングで止めていたアニメの続きを見ながら洗い物を終え、シャワーの音が聞こえてきたため洗濯機をまわしに向かった。
水音をBGMに洗濯機を覗き込み、茶色の体操着を確認。
うん、汚い。

それでは、汚れの味方のアリエールさん。頼みます。
願いを込めて蓋を閉めた。時短コースを押して終わるまでリビングで再度アニメ鑑賞に戻った。



「にしても様子変だったな」
「…アイツ、…馬鹿なこと考えんな」